この度筆者は、一大決心のもとに土地を購入するに至った。
 やはり家庭を持つ男たるもの、子から孫へ、孫から曾孫へと受け継いでいく財産の一つも持っておかねばなるまい。そのようなことなど夢にも考えたことがなかった筆者であったが、ある日、とある雑誌の記事に目を惹かれ、帰宅後すぐに助手兼妻の賛同を得てインターネットを通じてその土地の購入手続きを行ったのであった。
 聞いて驚きたまえ。その土地はなんと1200坪でわずか2700円という破格での売り出しなのである。1200坪と言えば、サッカー場ほどの広さである。これほどの広さがあれば、将来どのようなスケールの大きい土地活用方法を展開しようとも耐えうるに違いない。
 ただ一つ残念なことは、少なくとも筆者が生きている間はその土地が日の目を見ることはないだろうことである。いや、筆者の子供、もしくは孫の代でも有効活用されることはないかもしれない。
 というのも、その土地の所在地は・・・。
 「月」なのである。
 月というのは、空に浮かんでいる、ウサギが餅をついたりしている、あの月である。日本からだと若干時間がかかるかも知れない。
 今回契約を結んだ月の土地の販売代理店というのは、”LUNAR EMBASSY”というアメリカの会社なのであるが、彼らによれば、「宇宙条約」やら「月協定」やら(こういったものは実在するらしい)なんやらを解釈するに、一企業が月の土地を販売することに問題はないということで、カリフォルニア州の認可を受けているというのである。この無謀なまでの大胆さが素晴らしい。小田急線界隈では慎重派で有名な筆者であるが、ついつい、まあ付き合ってやろうか、という気にさせる。
 なんだかウソのような本当のような話ではあるが、いずれやってくる宇宙世紀に向けて、有力な移民先候補である月に、たったの2700円で土地を所有できる(したつもりになれる)と思えば安いものである。1200坪もあれば、モビルスーツの開発製造だって行えるに違いない。
 この土地を筆者から受け継ぐであろう彼もしくは彼女は、一体どのような反応を示すであろうか。今から楽しみである。

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