キャンディの山奥の小学校で日本語教室を開講する | スリランカ旅行記【”We are Asian!!”と言ってくれた島国】

ダンブッラから古都キャンディへ着いたばかりであるが、この日は今回の旅で、ダンブッラの美少女天使タルーシャちゃんとの出会いと並ぶほど印象的な日であった。その感動を筆者の未熟な文書力で表現し尽くせるとは到底思えないが、可能な限りお伝えしたい。

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オヤジリアンジョークを飛ばす自称135歳のおっさんに小学校教師の助手としてスカウトされる

唐突に「こんにちは」と話しかけて来たのは、見た感じ60~70歳くらいの日本人のおっさんであった。それはセバナゲストハウスで昼飯を食していた時のことである。

彼曰く、今日はキャンディ郊外の山奥の小さな小学校で日本語教室の開講式が行われるのだという。本来は彼ともう一人のスリランカ人の助手と二人で訪れる予定だったのだが、日本人がもう一人くらい冷やかしにいた方が盛り上がるので是非来てくれ、というわけである。1時間程度顔を出して、たまに子供向けの日本の歌を一緒に歌ったりすればよいとか。

「その学校っていうのはどこにあるんですか?」

「キャンディから車で30分くらいかな。ヘリコプターなら3分くらいだが、どっちがいいかね?」

「いや、あの、車で・・・。ところで今日中に仏歯寺だけは見ておきたかったんですけど、夕方までに戻れますか?」

「じゃあ帰りに車で寄ろう。あと、もし玉突き(ビリヤード)が好きだったら、一緒にどう?」

「・・・ああ、ぜひ。じゃあもしお邪魔でなければご一緒させて下さい。ところで失礼ですが今おいくつくらいなんですか?」

「たぶんそろそろ135歳くらいになるんでないかと思ったが、よく覚えておらんなあ。じゃあそろそろ行きましょうか。角さん、助さん、準備はいいですか」

「はい」

「はい」(スリランカ人助手のジム)

日錫交流を担う「ニッポン・クラブ」と日本語教師

宿の主人とも旧来からの顔見知りのようで、悪徳な人物ではなさそうだし、元々観光名所などにはさして興味がない。むしろ山奥の小学校で日本語教育が幕を開けるという歴史的な一日に立ち会えるなんてこの上なく面白そうである。という事でこれ幸いとばかりについて行くことにした。

しかし不思議な魅力のあるおっさんである。発言の半分以上が冗談、しかも若干涼しめのオヤジリアンジョークで構成されている。ジムも日本で1年間ほど働いていた経験があって日本語が堪能なのだが、車中、彼と二人で先生のエセアメリカンジョークに苦笑し続けたものである。そして、発言の多くが嘘か真か分からないのだが、しかしとんと憎めないのだ。

先生はスリランカに移住して11年になる。スリランカの警察と日本大使館と共同で、さらに「日本財団」の後援を得て「ニッポン・クラブ」と名乗る団体を運営しているという。スリランカの日系企業や個人の支援や、日本とスリランカの文化交流、小中学校での日本語教育の支援などの活動を行っており、彼自身も自らスリランカの子供達に日本語を教える先生をやっているのだそうだ。

実はプロローグでも触れたが、歴史的な経緯によりスリランカ人は日本と日本人に対して敬愛の念を抱く人が多い。そのため、日本語を学んでいつか日本で働きたい、と考える若者が存外多いのである。なお、その「歴史的な経緯」については後日知ることになるのでその時の記事で詳しく触れたいと思う。

山の木造校舎でどんぐりコロコロを歌う「日本代表」

さて、先生のオヤジリアンジョークに対して苦笑するのも飽きてきた頃、件の小学校らしき場所に到着した。それはもう実に山奥であった。まさにジャングルの真ん中を切り拓いたようなグラウンドと、平屋の木造校舎。

筆者達が校庭に到着すると、子供達がどっと駆け寄ってくる。教室に入ると、みんな一斉に机を並べ、行儀良く着席する。まぶしいくらいたくさんの大きな瞳たちが我々3人を、とりわけ日本人である先生と筆者を見つめてくる。

やがて、生徒の一人が可愛らしい英語で挨拶をして、授業が始まる。ジョークばかり飛ばしていた怪しいオッサンが、別人のように情熱的な教師に一変していた。口振りは相変わらずおどけているけれど、臨機応変に、いかに子供達に興味を持ってもらうか、そのために懸命になっていた。

「ジャンケン」を教えたり、「ドングリころころ」を一緒に歌ったり、紙飛行機を作ったり。車の中でオヤジリアンジョークに苦笑していた時とは打って変わってこの先生の熱意に感動せずにはいられなかった。先生のペースに惹き込まれるように、筆者もせっせと黒板に字を書く。大声で歌を歌う。子供達とジャンケンをする。折り紙を折る。

一旅行者に過ぎない自分が何故こんなところにいるのだろうか、という違和感は、不思議なことにすぐに無くなっていた。これまでの旅の中で、スリランカの子供達と言葉や笑顔を交わすことに馴れていたせいもあるかもしれないが、それだけではなかった。教室の子供達が、先生に対する視線と全く変わらない目で自分を見ている。子供たちの目から見れば先生も自分も変わらない。同じ「遠い国からはるばるやって来た友達」だと思っているということが強烈に伝わってきたからである。

今この瞬間、この教室にいる日本人は先生と自分のたった二人だけだ。一生懸命子供達とコミュニケーションをとり、日本人を代表してスリランカとの架け橋にならなければならない。そして何よりも、この子供達と心を通わせることができたらどんなに幸せだろうか、という思いが、自分がこの場に居合わせることの唐突感に勝ったのだと思う。

 

たった1時間の、この山奥の学校で初めての日本語の授業が終わった。先生と助手、校長先生、運転手、そして筆者とでコーラを飲みながらお互いをねぎらう。そして自称135歳の先生はこう言ったものだ。

「大成功だ。こんなに嬉しいことはない」

もちろんこれはジョークではない。

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブ

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO0)
「ア、イ、ウ、エ、オ」

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO0)

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブ

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (11.3mm, f/3.2, 1/30 sec, ISO0)
グーの人が勝ちでーす、みたいな。

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (11.3mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO0)

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO0)

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブ

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (11.3mm, f/4.4, 1/640 sec, ISO0)
紙飛行機の作り方も教えた

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (28.4mm, f/4, 1/200 sec, ISO0)

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/4.5, 1/640 sec, ISO0)

スリランカ キャンディ 小学校 日本語 授業 交流 日本財団 ニッポン・クラブCASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/4, 1/500 sec, ISO0)

歴史のささやかな1ページに乾杯

キャンディの町へ帰り、ビリヤードをし、そして約束通り仏歯寺へ寄ってくれた。そしてセバナ・ゲストハウスの近くの「LYONS」というスリランカ家庭料理のレストランで、今日の日本語教室開講式の成功にささやかな祝杯を上げる。

実は先生もセバナ・ゲストハウスを根城にしていたので、最後は先生と二人でセバナに帰ることに。部屋の前で別れ際、先生が改めて最高の言葉を筆者にくれた。

「今日は本当に最高の日だった。ありがとう」

部屋に帰り、この言葉の意味を思い起こしてみる。そして、考えれば考えるほど、「自分は本当に運がよかったのだ」、と思う。先生は筆者に最高の言葉で礼を言ってくれたが、無論筆者はそれに値するほどの事はしていない。当初は興味本位でついていっただけである。

では先生は、なぜ6時間ほど前に会ったばかりのどこの馬の骨とも知れない若者にこのような感動的な言葉を投げかけたのか。それは、今日、あの山奥の小さな小学校で開いた1ページが彼にとって本当に大変で素晴らしい事だったという証ではないか。そして筆者は、豪勢なスリランカ料理に加えられる一振りの香辛料のように、先生が成し遂げた素晴らしい歴史の一片として先生や子供達の記憶に残ることが出来たのである。

筆者は先生と違って日本とスリランカのために何が出来るわけでもない。しかしもしも自分が誇れることがあるとすれば、「偶然この日この場所で昼飯を食って素晴らしい先生に出会うことができた」という幸運を持ち合わせていた事であり、その出会いを飽くなき好奇心で受け入れ、観光そっちのけでひょこひょこついて行こうと思えるちょっと変わった旅人であった事なのかもしれない。

一日の最後に部屋で飲むライオン・ビアーが、明日も最高の味であればいいと思う。

スリランカ キャンディ ビリヤード

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (9.2mm, f/3, 1/8 sec, ISO0)
玉突きをする助手のジム。筆者の方がうまかったかな。

スリランカ キャンディ 仏歯寺 旅行記 ホテル リヨンズ HOTEL LYONS

CASIO COMPUTER CO.,LTD EX-P600, (7.1mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO0)
先生と祝杯を上げた家庭料理レストラン「リヨンズ」

[2004.9.29]

キャンディの位置

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スリランカ旅行記【"We are Asian!!"と言ってくれた島国】 (2004年)
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