なぜ『鬼滅の刃』は『進撃の巨人』よりも一般女子受けするのか

こんばんは。アニメ関連の記事は「Re:CREATORS」について書いて以来3年ぶりの10maxです。

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さて、鬼滅の刃、完遂しました。

TVアニメ(Amazonプライム)→劇場版→原作

の順です。

実は筆者自身はとりわけ鬼滅の刃に入れ込んでいるという訳ではなく、かと言って冷め切っている訳でもなく、要はこれまでに良いと感じた他の名作たちと同じ程度には楽しめた、と言った塩梅です。この作品が空前絶後のブームを巻き起こしている事についても、まあ様々な要因が重なり合ってそういう現象が起きることもあるだろうな、と比較的冷静に眺めています。

ただ一点、気になっている事がありました。それは以下の点です。

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どうも鬼滅の刃は一般女子からの支持が凄まじいと感じる

これです。

例えば数年前の「進撃の巨人」における「進撃ブーム」では、女子からも一定の激しい支持がありましたが、それはどちらかというと元々アニメ好きな女子層、いわゆる腐女子層が多く、一般受けと言う意味では男性寄りという印象でした。

ところが鬼滅ブームでは腐女子層というよりも一般女子、それも10〜20代だけでなく30〜40歳前後のママ層においても非常に盛り上がっていると言われています。実際筆者が鬼滅の話題をSNSで発信すると、反応してくれるのは、日頃それほどアニメの事を熱く語っているわけでもない女性や、ママ層がメインです。だからこそ興行収入の歴代記録を塗り替えるほどの勢いを得られたのでしょう。

最も分かりやすい例として、一般女子全国代表のような筆者の細君(アニメや漫画に全く疎いという意味で)は、進撃の巨人については原作の第1巻で読む気を失っていましたが、鬼滅の刃は普通に読んでいます。

しかし、「進撃の巨人」も「鬼滅の刃」も、同じ「人食い系」です。にも関わらず、なぜ鬼滅の刃がこれほど一般女性の支持を得られたのか。同じ様に社会現象を巻き起こしたこれら2つの作品を、「何故鬼滅は一般女性受けし、進撃はそうでもないのか」の要因となっていそうな点について考察してみたいと思います。

以下二点だけ備考です。

ネタバレは少ないほうです。まだ両作品をご覧になっていない方でも比較的安心してお読み頂けます。が、両作品を味わってからの方が面白くお読み頂けると思います。
この記事の主旨からご想像いただける通り、「男性ならこう考えるだろう」「女性ならこう感じるだろう」というような話題をしばしば持ち出しますが、当然のことながらそれらは全ての男性・女性に当てはまるとは考えていませんし、ある種(世の中的によく言われがちな)ステレオタイプな考え方を引用しているに過ぎません。また、男女の差別や区別を助長するつもりも毛頭ありませんし、その他特段の思想を持っている訳でもありません。そうした話が気にならない方のみ、読み進んでいただければと思います。(要は、軽い気持ちで読んでね、という話です)

なぜ『鬼滅の刃』は『進撃の巨人』よりも一般女子受けするのかSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO250)

主人公のキャラクターへの共感

まずは主人公のキャラクターです。竈門炭治郎は13歳、エレン・イェーガーは15歳(いずれも作品初期)と歳の似通った少年ですが、女性が感情移入しやすいかどうかという点において、この二人は両極端と言っても良いほどキャラが異なります。

女性が旦那さんor兄弟にしたいくらいよく出来た炭治郎

炭治郎は実に素直で家族思い、兄弟の面倒も見るしお手伝いも良くするし・・・と、二人の男児の親である筆者からすると、どうやったらこんなに素晴らしい男の子に育つんだ・・・と思ってしまうほど出来の良い男子です。

こんな出来の良い男の子が、妹のために命を賭して闘う・・・もう、これ以上何をか望まんや。女子からすると、こんな男子こそ応援したくなるでしょう。

「頑張れ!女子の味方、炭治郎!!」

それを横目に筆者は、「そんな男子なんて現実にはいねえよ」と毒づく訳ですね。

幼稚で何を考えているのか分からないエレン

エレンはといえば、これはもう男性の目から見ても相当面倒くさい物件です。第1話からその暴れん坊ぶりは炸裂します。門番をしている駐屯兵に「そんなのは家畜だ!」と暴言を吐いたり、帰還した調査兵団を罵る見知らぬ人を棒で殴ったり、困ったもんです。

一方で、彼の魅力はその胸に抱く夢とロマン、それらに基づく固い信念です。

「いつか絶対に壁の外の世界を見てやる!自由を手に入れてやる!」

という衝動は男子ならば共感するところも多いでしょう。しかしそれは現実を鑑みれば理性を欠いた衝動ということも出来、特に女性から共感を得るのは難しいのではないでしょうか。(そういうやんちゃな男性の面倒を見たがる女子もいるのかも知れませんけどね^^;)

闘いの目的・動機の分かりやすさ

二人の主人公が何故困難を乗り越えつつ闘っているのかという点です。これも、女子にとって分かりやすい鬼滅、ピンとこない進撃、という構図があるように思われます。

妹を助けたい一心の炭治郎

炭治郎の闘いの目的は「妹の禰豆子を鬼から人間に戻すこと」この一点に尽きます。そしてその目的意識は最後まで変わることなく貫かれます。なんと分かりやすいことでしょう。

以上です。特に付け加えることはありません。

ひたすら壁の外の世界を知るという「夢」を追いかけるエレン

ではエレンはどうでしょう。彼の目的は、冒頭のあたりでは「母親や母親との暮らしをぶち壊された事への復讐」という感情が色濃く表れています。そしてやがて「この世から巨人を駆逐してやる」という過激思想を抱くようになります。そこまではまあ良しとしましょう。しかし、実は物語が進むにつれて彼の考えていることはどんどん分かりづらくなっていきます。「彼が何を考えてこうした行動を取っているのか」というミステリー自体が面白さの一部ですらあります。

男性というのはしばしば、細かいことを話すのを面倒くさがる生き物です。例えば夫婦の会話でも、晩の食卓を囲みながら妻がその日あった出来事を事細かく話すのに対し、夫は「うん」「ああ」といって聞き役に回るようなイメージがあります。そして女子は、そうした煮え切らない態度にイライラする事がしばしばある訳です。そして、エレンの煮え切らなさ(考えてはいるのだけど、はっきり伝えない)と言ったらありません。

そもそも男子向け漫画の主人公の目的意識って、大概女子には分かりづらいんじゃないでしょうか。「こんなつええ奴がいるなんて、オラわくわくすっぞ!」ばかり言っている武道家や、「僕が一番ガンダムをうまく使えるんだ!」とか言うよく分からない意地でロボットを操縦している少年など、枚挙に暇がありません。

グロいシーンがそのままグロい進撃の巨人と何故かグロくない鬼滅の刃

筆者の細君が進撃の巨人を第一巻で止めてしまったのに鬼滅の刃の方はスラスラ読み進められている一番大きな理由はこれかも知れません。いずれもリアルな殺傷シーンが頻繁に出てくるのですが、鬼滅は進撃ほどグロい感じがしない気がしているのです。紐解いてみます。

「人食い」シーンの多い進撃 ⇔ 実は少ない鬼滅

進撃の巨人の物語は、エレンの母親が巨人に食われるという非常に鮮烈なシーンから始まります。まさに食われているそのシーンが、しっかり描かれています。そして、それがあるからこそ、その後のエレンの「復讐」「駆逐」という強い感情へ繋がっていくので、これが無くては始まらない、非常に重要なシーンと言えます。そしてそれ以降も、調査兵団の仲間やその家族、一般市民など、幾多もの人が巨人に食われるシーンが続きます。Amazonプライムでアニメ版も観ましたが、そちらでも容赦なく描かれていました。

一方の鬼滅の刃ですが、人が鬼を殺すシーンは多いものの、鬼が人を喰うシーンというのは実は意外と少ないのです。これ、お気づきになりましたか?

人が無抵抗で巨人や鬼に食われるというのは、対等な戦闘の中で負傷したり死亡したりするよりも一層残虐性が強く、自分に置き換えてしまいがちなので結構辛いものです。そうしたシーンが、意図的なのかそうじゃないのかは分かりませんが、意外と少ないのが鬼滅の刃なのです。

殺されても救いのある鬼⇔救いのない巨人

では、逆に巨人や鬼の方が殺されるシーンはどうなのか。それだって相対的にはグロくなくても、それなりにグロいじゃないか、という反論もあるでしょう。しかし、それらのケースについても鬼滅の方がソフトな印象なのです。

鬼滅に出てくる鬼は、殺される時に救われるという一面があります。遥か昔、自分が鬼になる前、人間だった頃の記憶が走馬灯のように浮かび上がり、後悔の念を懐き、そして許しの境地に至りながら消え入っていきます。観ている人は、グロいどころか「ああ、この鬼は最後に人間に戻れてよかったな」という爽やかな感情すら懐きます。

一方の巨人はといえば、そもそも巨人になっている間は(9つの巨人を受け継ぐ者以外は)理性や感情すら持たない怪物で、死にゆく時には何の救いもありません(少なくとも話中には描かれていません)。

こうした感情の潤いの有りや無しやも、女子にとっては共感の有無に繋がるのではないかと想像したりします。

何かとお洒落な鬼滅の刃

他にも女子受けしそうな要素として、鬼滅の刃には様々なところで「お洒落感」が醸し出されているのではないかと想像しています。

「大正時代」の鬼滅 vs. 「中世ヨーロッパ風」の進撃

御存知の通り、鬼滅の刃の時代設定は大正時代とされています。大正といえば「大正ロマン」という言葉さえ存在する、どこか甘酸っぱい時代です。文明開化を経て、西洋的な思想や芸術、文化が花開き、和洋折衷の独特の風合いに昇華されたあの時代。服装にしても、街の景色にしても、音楽にしても、現代の我々は時に懐古的な憧れを持ってあの時代を思い浮かべたりします。そこからさらに「三丁目の夕日」などで描かれる「昭和モダン」へと繋がる古き良き時代です。いわば日本人のDNAに刻まれた心の故郷的な風景がそこにあるとも言えるでしょう。このような少し懐古的な日本の服装であれば憧れる日本人女性も居るのではないでしょうか。例えばアジカンのジャケ画で有名な中村佑介さんが描くような世界観とか。

一方、進撃の巨人の舞台はどことなく中世ヨーロッパを思わせる雰囲気。アニメやゲームでは定番ですね。これは確かに美しいのですが、そこまで日本人の心に訴えるものがあるかというと微妙です。例えば、日本人女性が中世ヨーロッパ風の服装をするかと言えば、少し遠い感じがします。

森見登美彦著『夜は短し歩けよ乙女』 / ©KADOKAWA

人物名が覚えやすくお洒落な鬼滅 ⇔ 誰が誰だが分からん進撃

鬼滅の刃は登場人物のキャラクターと名前が覚えやすいです。日本語だし、みんな見た目とキャラが立ってて区別が付きやすい。しかも何だかお洒落じゃないですか。

竈門炭治郎

冨岡義勇

煉獄杏寿郎

嘴平伊之助

我妻善逸

・・・

当て字のキラキラネームが流布する現代の日本において、非常に風流で日本人的な名前。素敵です。

一方進撃の巨人は、昔から名前が覚えづらくて見た目も誰が誰だか分からん、というので定評があります。

エレン・イェーガー

ミカサ・アッカーマン

リヴァイ・アッカーマン

ケリー・アッカーマン

グリシャ・イェーガー

アルミン・アルレルト

ベルトルト・フーバー

・・・

もう、覚えてもらいたくないんじゃないか、と勘ぐりたくなるほどです。いやもはやそれこそが進撃の巨人の良さである、と言っても過言ではないかも知れません(違)。

そして、覚えられ無いくらいなのだから、お洒落かどうかという次元ではありません。

時にイケメン・イケ女ですらある鬼 ⇔ ストレートにキモい巨人

鬼滅の刃に登場する鬼は、気色の悪いものもいますが、しかしある程度想像の範囲内というか、まあ鬼だし仕方ないよね、という範疇のキモさじゃないかと思います。それどころか、人間界に紛れている時の鬼舞辻無惨を始め、そこそこイケメン・イケ女である鬼すら存在します。鬼も含めてエンターテイメントしてる感があります。

一方、巨人の方はといえば、その登場は衝撃を伴っていました。一種異様と言うか、何とも表現しようのない気色悪さなのです。表情といい、バランスの悪さと良い、狂気を思わせるものがあります。絶対に夢に出てきてほしくないのに、きっと出てくるなら鬼滅の鬼ではなくこっちだろうという嫌な予感がします。

筆者の細君は、TVを付けていて一瞬でも恐怖を感じさせるような画面が写った瞬間に普段からは想像できないような俊敏さでチャンネルを変えるほどの怖がりですが、こうした気色悪さも細君のような一定数の女子が本を置いてしまう主な要因でしょう。

進撃の巨人 鬼滅の刃 違い

Source:進撃の巨人ブログ.com

さいごに:男女受けはともかく、作品の狙いは違いそう

まあ色々書き殴りましたが、実際には筆者の知人でも進撃の巨人にハマっている女性が複数います。結局の所個人個人の好みによるので、男性だから、女性だから、という議論にはあまり意味がないことは百も承知です。

ただ言えるのは、これらの両作品はターゲット層や表現の手法など、様々なところでこんなにも個性が違うということです。実はSNS上で「鬼滅の刃は進撃の巨人のパクリではないか」という議論も起こっていました。しかし筆者に言われせばそれは「フォーミュラカーと月面探査車はタイヤが4つ付いてるから同じようなもんだ」という様な雑な議論としか思えません。本記事で申し上げたかったのは、これら2つの作品は同じ様に「人食い系」でかつ社会現象にまでなった作品ではあるものの、その実は非常に異なる性質を持っているのではないかという事です。

などと真面目に語っていますがそれは多分今飲んでる焼酎のせいなので、明日になったら全然違うことを言っているかも知れませんw

これからも色々な角度から色々な作品を楽しみたいものです^^

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