「この道は いつか来た道」
北原白秋作詞・山田耕筰作曲の「この道」という童謡の一節だ。人生の中では、そう呼べる道がいくつかあるのだろう。
幼き日に母に手を引かれて歩いた土手道、ランドセルを背負って小石を蹴りながら歩いた田んぼ沿いの道、夢中でザリガニ捕りをして泥だらけで帰った小川沿いの道・・・それらの風景も今では多かれ少なかれ変わってしまい、記憶の中に淡く形を留めるに過ぎない。
ところで、僕の実家がある浜松市の三ヶ日町あたりに、奥浜名オレンジロードという道がある。浜名湖の北岸の山中を駆け巡る爽快なワインディグロードだ。
そのような道にこの歌詞を重ねるのは少々妙な話だが、オレンジロードは僕に様々な感情と思い出を想起させる「いつか来た道」だ。正確には、いつの日かこの道をそのように表現したくなる日がやってくるのかも知れない、と予感している。
今回初めて、愛車パサオことパサートオールトラックをこのワインディングに連れて来ることが出来た。コロナに阻まれ、パサオが我が家にやって来て以来2年越しで叶った里帰りだ。
そして、この車で走る最初で最後のオレンジロードになる。
実はこの6月から数年間家族を伴い海外駐在する事となり、赴任前の最後のチャンスと言うことで急遽2泊3日の帰省を計画した次第だ。
海外赴任自体はせいぜい3年程度の事ではあるが、子供達の年齢などを考えると様々な想いの去来する帰省となった。満開の山桜が咲き誇る美しい春の里山をパサートオールトラックで駆け抜けた記録と記憶に、しばしお付き合い頂ければ幸いだ。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
父子二代の「心の故郷」
里帰りと言っても僕の故郷は三ヶ日ではない。生まれは愛知県の岡崎市という田舎町だ。それこそ家のすぐそばにはザリガニの棲む小川が有り、夏には夜な夜な蛙の合唱大会が催され、朝早くから近くの山へカブトムシを採りに行ったりしたものである。
そして父が定年退職後、「みかん畑でもやりながらゆっくり暮らしたい」という希望を持って移り住んだのが日本有数のみかんの産地である三ヶ日だ。
では三ヶ日を「第二の故郷」と呼べるかというと、物事はそう単純ではない。何しろ僕自身は三ケ日に住んだことは無いのだから、「故郷」と言う感覚は正直なところあまり無い。両親は、僕が大学を卒業して数年が経った頃から週の何日かを三ヶ日で過ごすようになり、岡崎の実家を完全に引き払ったのは僕が結婚してからのことだ。
とは言え三ヶ日は両親の住む実家であり、当然ながら「両親の元に帰省する」という感覚は強い。
それよりもここで忘れてはならないのは、僕の子供たちの存在だ。
両親が三ヶ日に移り住んで間もなく、長男と次男が誕生した。つまり、僕にとって三ヶ日への帰省という歴史は、「子供たちを田舎に連れて帰る旅」の記憶とほぼ重なるのだ。
三ヶ日は僕にとっての帰省先であると共に、子供たちにとっても「父母といつか来た町」となるのだろう。
SONY ILCE-7C, (58mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO160)
SONY ILCE-7C, (55mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
故郷への道が育んだロングドライブ志向
高校を卒業して東京の大学に進学することになった。僕は岡崎の実家を出て東京で一人暮らしを始めた。正確には川崎市の生田という多摩丘陵の一角の町だったのだが、田舎者の僕にとってはそれでも立派な「東京」だった。
大学は都心だったにも関わらず何故そんな場所に住んだのかと言えば、当時相模原に父方の親類が住んでいたということに加え、父がまことしやかに嘯いた「東京の大学生だって大体皆その辺りに住んでいるんだ」という文句を信じてしまったためだ。蓋を開けてみれば同級生は皆大学の近くに住んでいたのだが、家賃を両親に負担してもらっていたのだから文句は言えない。
ともかくそれ以降、東京から岡崎、もしくは三ヶ日への帰省が恒例のイベントとなった。当初は新幹線で行き来していたが、二輪免許を取得してからはオートバイで帰るようになり、やがて四輪車にも興味を持ち出してからはレンタカーを使うようになった。
当時は何故かマツダの車が好きでアクセラだのデミオだのベリーサだのを借りており、その成れの果てとして、結婚したタイミングで初めてのマイカーを買う段になり、アクセラを買いにディーラーへ行ったにも関わらず気付けばRX-8の契約書に判子を捺していたという謎の経緯に繋がる。
いずれにしても、東名高速や国道1号、それらに並行する県道や時には中央道、国道20号など、東京から愛知・静岡への様々なルートが馴染みのものとなり、様々な車を駆ってのロングドライブのテストコースのようになった。その経験がいつしか、長く運転しても疲れにくい車を選ぶ嗜好を育んだのかも知れない。
SONY ILCE-7C, (68mm, f/2.8, 1/2500 sec, ISO100)
鰻と犬と絵のプレゼント
3時間半ほどの東名高速のドライブを経て、家族を乗せたパサートオールトラックは三ヶ日の実家に到着する。
みかんと並ぶもう一つのこの土地の名物は、鰻だ。予め両親にリクエストして注文しておいてもらった鰻を丼に盛り付け、ビールと共に堪能する。この瞬間は何度味わっても飽きることがない。ましてや2年ぶりの邂逅である。
SONY ILCE-7C, (49mm, f/3.5, 1/60 sec, ISO3200)
実家には今年中学2年になった長男と同い年の犬がいる。名は「まくまく」という。
もともと保護犬を両親が引き取ったもので、警戒心が強く怯えがちな性格だ。2年もの間を空けての再会に、彼が筆者家族を受け入れてくれるか不安だったが、すぐに思い出してくれたようだ。すっかり大きくなって母(子供達の祖母)の身長を超えつつある子供達のこともちゃんと認識してくれたのが嬉しい。
しかし彼ももはや老齢で、歩の進め方に足腰の弱りを感じざるを得ない。ベトナムから帰った時にもう一度まくまくに会うことは叶うのだろうか。
SONY ILCE-7C, (62mm, f/2.8, 1/100 sec, ISO4000)
絵を描くのが好きな長男はいつも帰省するたびに祖父母に絵をプレゼントする事にしている。今回も、大好きなSUBARUのWRX S4の絵を祖父母に進呈したいと言い出した。この絵はかなり気合を込めて描き上げていた様子だったので細君も筆者も「あげちゃっていいの?」と驚いたものだ。
しかし長男にとってはそれが一番嬉しいのだろうし、無限の未来が広がる少年にとってはこの一枚の絵は通過点に過ぎないのかも知れない。
SONY ILCE-7C, (50mm, f/4, 1/200 sec, ISO4000)
その証拠に、翌朝には長男は早速BRZに着手していた。少しずつ筆が進んでいく様子を時折覗き込むのが密かな楽しみとなっている。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/400 sec, ISO1600)
さて、2日目は朝から雨模様だった。長男はBRZの絵を描き、次男は宿題に取り組んでいる。僕も少しだけ仕事を片付けることにした。その足元ではまくまくが気持ちよさそうに姿で朝寝を楽しんでいる。すっかり家族の一員として認めてくれたようだ。
SONY ILCE-7C, (65mm, f/5, 1/250 sec, ISO1600)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO1600)
オレンジロードでワインディングマシン・パサートオールトラックの真価を見る
雨の中、奥浜名オレンジロードへ繰り出すことにした。まだスタッドレスタイヤを履いていたためグリップに少々不安は有ったが、翌日には東京へ戻らなければならないため、何はともあれ人知れず優れたワインディング性能を秘めたパサートオールトラックをオレンジロードに連れて行かなければならない。何しろ「最初で最後」なのだ。
三ヶ日IC近くで奥浜名オレンジロードに入る。まるで農道のようで見落としがちだが、入り口にはオレンジロードであることを示す看板が設置されている。なお、奥浜名オレンジロードは実際「広域農道」と区分される道路であるようだ。
奥浜名オレンジロードは全体を通して道幅も広く舗装もしっかりしており、コーナーのRもさほど小さくはないため快適なドライブが楽しめる、知る人ぞ知る名ワインディグだ。マイナーであるためか、すれ違う車が殆ど無いのも美点である。
SONY ILCE-7C, (59mm, f/2.8, 1/800 sec, ISO100)
入り口からしばらくはみかん畑の丘陵をゆったりと進み、やがて標高を稼ぐべく勾配のある山道に入っていく。それまで涼やかな顔で流していたパサートオールトラックは、ワインディングに入ると途端に活発な本性を表に出す。その様はまるでクールに仕事をこなす執事が、敵襲に際し隠し持った格闘技の能力を突如披露するかのようなドラマチックな展開を思わせる。アニメの観過ぎかも知れない。
ディーゼルユニットとしては高めの3,300回転まで400Nmの最大トルクを発揮し続ける2L TDIの伸びやかな回転フィールとサウンドたるや、スポーツディーゼルと呼んでも過言ではない。
さらに、ダイレクトで歯切れのよい変速を見せるDSGはとにかくパワーの抜け感を感じさせない。SまたはMモードで操れば、ギアが切り替わった瞬間にTDIの豊かなトルクを路面に余すところなく伝えてくれるフィーリングが実に小気味良い。タイムラグや滑りが無いので、大柄なボディにも関わらず自らの手足で駆っているような感覚なのだ。そして減速時にはキレキレのブリッピングを奏でてくれるのでつい無駄にシフトダウンをしたくなるのも罪深い。
回頭性も頗る高い。重量物のディーゼルエンジンをフロントに載せたAWDにも関わらず、さしてアンダーも見せずにヒラヒラとコーナーを駆け抜けていく。4輪トルクベクタリング機構のXDSやステーションワゴンボディの重心の低さが功を奏しているのだろう。ホイールベースの長いDセグメントワゴンだという事を忘れさせてくれる軽快さがある。
そうなのだ。実はこの車、ステーションワゴンのパサートヴァリアントの最低地上高を30mm延長することで悪路走破性を高めたモデルだが、そのイメージに反してワインディングを得意とする素性をこれでもかと言うほどに備えた二面性の塊なのだ。
その模様を収めた動画も後ほどご紹介しているのでぜひご覧頂きたい。
さて、奥浜名オレンジロードで最も標高の高い地点に近い場所に、浜名湖が一望できる展望スポットがある。以前からオレンジロードの中でもお気に入りだったポイントで、いつもここで愛車を撮影したものである。
SONY ILCE-7C, (51mm, f/5.6, 1/800 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (52mm, f/5.6, 1/320 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1250 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/8, 1/500 sec, ISO100)
2017年に前愛車のプジョー308SWで同じ場所にやって来た時の記事もご参照されたい。
春の奥浜名オレンジロードの美しさを知る
さらにオレンジロードのドライブを楽しんでいると、ふいに山桜の群生が目の前に現れた。
オレンジロードにこんなスポットがあったのか・・・
驚嘆とも溜め息ともつかない声を、筆者は思わず漏らした。
今まで筆者はほぼ年末年始と夏にしか三ケ日に帰省したことがなく、当然奥浜名オレンジロードについても夏と冬の景色しか知らなかった。
しかし、春の景色を知らずして奥浜名オレンジロードを語ってはならない事を知った。その事実を、満開の山桜の圧倒的な彩りと共に思い知らされた。今までその沿道に山桜の群生が存在するなどとは全く知らなかったのだ。付き合って数年の後に初めて恋人の知られざる魅力に気づくというのはこういう気持ちなのかも知れない。知らんけど。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/3.2, 1/160 sec, ISO100)
上の写真は最も多くの山桜が群生していたスポットだが、ここ以外にもオレンジロードの至るところで山桜が咲いており、常に目を楽しませてくれた。柔らかな緑に時折ぱっと彩りを添えるピンクのパステルカラー。春のオレンジロードは春の里山風情に溢れていて実に美しく、そして優しかった。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/640 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/8, 1/200 sec, ISO100)
春のオレンジロードの美しさを知ることが出来たのは大きな収穫だった。しかし正直なところを言えば、やはり気持ちの良い晴天のオレンジロードをパサオと共に駆け抜けたかった。その願いが叶うか否か、この時はただ天に祈るのみであった。
ゆるやかに流れ、繋がる時間
実家に戻り、思い思いに過ごす。田舎のゆったりとした時間が流れる。
昼食には味噌煮込みうどんを食す。筆者の本来の故郷である愛知の味が心身に染み渡る。
SONY ILCE-7C, (39mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO640)
まくまくが物欲しげな目で細君の手元を覗き込んでいる。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO1600)
子供達は近くの公園でブランコに興じた。二人にとって三ヶ日で一番のお気に入りの場所だ。中2と小6にもなってブランコなどするのだろうか、などと思っていたが、余計なお世話であったようだ。しかしこの光景も、再び見ることはあるのだろうか。
一方で子供達を残して温泉に出かけられるようになったのはありがたい。細君と二人で実家から車で40分ほどの山奥にある「あらたまの湯」へ向かい、疲れを癒やす。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/1250 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/250 sec, ISO100)
夜は浜松餃子パーティである。これも実家での恒例のメニューだ。
SONY ILCE-7C, (59mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO1600)
まくまくが再びつぶらな瞳で細君の傍らにやってきた。細君が最も食べ物を分け与えてくれそうな空気を醸し出しているのだろうか。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO3200)
両親が持ち出してきた筆者の子供の頃の作文をを子供達に見せている。長い時間を飛び超え、何かが繋がっていく不思議な感覚。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/40 sec, ISO500)筆者の中学校の頃の地図帳が出てきた。当時ウクライナという国がソビエト連邦の一部であったのを思い返し、かつての恋人に未練を押し付けているのが現在のロシアの指導者なのだろう、などという想像を巡らせる。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/60 sec, ISO160)30年前の世界を現在に引っ張り出してきたかの様な妙な感覚は、故郷あるいは実家と呼ばれる場所ではあながち珍しいことでは無いが、この夜はとりわけその感覚が強かったように思う。それが何故なのかは分からない。
最後に出会えた奇跡 – 満開の山桜と奥浜名オレンジロードの本気
東京に戻る日の朝、ついに晴天に恵まれた。果たして祈りは天に届いたようだ。
まだ空には雲が残っているが、薄灰色の紙の上に青のインクをこぼした様に、次第に晴れ間が広がっていく。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
公園のヤシの木にどういう訳か宿った桜の枝も祝福してくれているようだ、と言えばこじつけが過ぎるだろうか。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
ドライブ好きの長男を助手席に乗せ、再びパサートオールトラックがオレンジロードのアスファルトを蹴る。高まるエクゾーストノートに合わせて天に近づいていく感覚が気持ちいい。それに呼応するように、頭上の雲も次第に晴れ渡っていく。
そのサウンドを聞いているだけで、愛車のパサオも水を得た魚のように楽しんでいるのが分かる。ワインディングを駆けていると、愛車と戯れているような気分になれるのが嬉しい。そこには対話が有り、呼吸がある。犬を飼ったことは無いが、自宅から連れ出して思い切り芝生を駆け回る愛犬と遊んでいる時の気分はこうしたものなのだろうか。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/2500 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/2000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (52mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/3200 sec, ISO100)
コーナーを抜けるとその時はふいに訪れた。
この場所に山桜の群生がある事はもちろん前日の雨のドライブで分かっていたつもりだが、左コーナーを駆け抜けてこの光景が現れた瞬間、運転席と助手席から同時に歓声が上がった。
真っ青な空、柔らかい緑の里山。そこに突如、主役の登場を思わせるかの如く目を奪う鮮やかなピンクと白の饗宴。それはこれまでに見ていたはずの景色とは全く装いを異にした「オレンジロードの本気」だった。
その瞬間の美しさと歓声は後述の動画の方が何倍も鮮やかにお伝えすることが出来るので、ご覧いただけると幸甚です。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/500 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (55mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
気付けば空はすっかり晴れ渡っている。
国民宿舎奥浜名湖で折り返して今来た道を登り、再び三ヶ日ICの方に下りてくる。みかん畑の向こうに浜名湖の一部である猪鼻湖が見えてくる。勾配は緩やかになり、パサートオールトラックも息を整え静かな執事モードに戻りつつある。
ベトナム赴任前の最後の最後に、最高に美しい春の奥浜名オレンジロードを知ることが出来て本当に良かった。そして、助手席に子供を乗せたパサオと共にその景色を楽しむことが出来て本当に良かった。奇跡と呼べば大げさだが、そう呼んだって誰も文句は言わないだろう。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/8, 1/640 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/2000 sec, ISO100)
しばしの別れ
子供達が最後のブランコを漕いでいる。
「最後の」というのが、この帰省で、という意味になるのか、より広い意味でそうなるのかは分からない。しかし状況を客観的に考えて、今この瞬間にまぶたに焼き付けておく意義は大いにあるように思われる。
この光景は筆者の父母にとっても思い出に残るものとなるだろう。冒頭で述べた「父子二代の心の故郷」は、つまりは筆者の両親を含む親子三代にとっての「いつか来た道」になるのだろう。
いずれにしてもこの6月から、筆者は家族と共にベトナムという新天地で新たな生活に踏み出す事になる。そこにはまだ見ぬ未来がある。陳腐な言い回しだが、未来があるという事は良い事だ。
3年後に日本に戻ってきた時に、再び子供達と共に三ヶ日後で両親にベトナムでの暮らしについて報告出来ることを楽しみにしたいと思う。今はそれまでの、しばしの別れだ。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/7.1, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO320)
動画
山桜満開の春の奥浜名オレンジロードをパサートオールトラックで駆け抜けた車載動画はこちらです。中2の長男との下らない会話とTDIの快音をBGMに、美しい春の里山の景色をお楽しみ下さい。
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