こんにちは。パサオことB8パサートオールトラック乗りの10maxです。
元々用事がなければディーラーには行かないタイプなのですが、ワクチン接種も済んだことだし、どうしても気になって今回試乗させて頂いたのは、新型ゴルフ(ハッチバック)から約2ヶ月遅れの今年7月末に日本上陸した新型ゴルフヴァリアントのR-Lineグレードです。フルモデルチェンジを受けた新型ゴルフの内容と、ヴァリアントの「クーペライク」と言われるスタイリングを一度に確認できる、グリコのような試乗がしたかった。
新型ゴルフヴァリアントについては多くのメディアが好意的に評価しており、筆者自身も今回の試乗を通して、スタイリングもパッケージングも従来モデルより更に良くなり、懸念されていた新操作系も意外と悪くなく、全般的にとても好印象を持ちました。しかし一方で、eTSIと呼ばれるマイルドハイブリッドを核とするドライブトレーン回りのフィーリングに気になる点がありました。ここは好き嫌いが分かれるかも知れません。
では詳しいグリコ風インプレッションに行ってみます。
実車で惚れるエクステリアデザイン – 新型ゴルフヴァリアントは確かに「クーペライク」だった
新型ゴルフヴァリアントの「ルーフライン後半が下がったクーペライクなデザイン」と言うのが正直ピンときてなかったので、実車はどうなんだろう?と言うのがずっと気になっていたのです。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/1150 sec, ISO32)
新色「ドルフィングレーメタリック」が一気に目を惹く
ところで・・・「クーペライク」云々の前に、この色良くないですか?w
今回のゴルフ8シリーズで初導入された「ドルフィングレーメタリック」と言う新色らしいのですが、最近流行りの「セメント系」とはちょっと違う光沢のあるグレーで、かといってマツダのマシングレーメタリック辺りのマイカ系質感お化けグレーもちょっと違う、マットな感じなのに艶を感じる不思議なグレー。
今回も試乗してて結構周囲の視線を感じたんですが(コンビニの駐車場でタクシードライバーさんにガン見されましたw)、新型ゴルフヴァリアントだからというのに加えてこのカラーも目を引いたんじゃないかと想像したりしてます。
このカラーの魅力を写真で引き出すのは苦労しそうだな〜現像泣かせな色になりそうだw
セメント系グレーカラーの特集はブログ仲間のUUさんの記事をどうぞ!
リアセクションの表情は確かに一新されていた
ああ、そうそう、「クーペライク」の話でしたね。上で触れた通り、正直なところ節穴な筆者の目には、「そんなみんなで口を揃えて言うほど「クーペライク」になったかね?どうせメディア向け公式発表資料にそう書いてあるからコピペしただけっしょ」などと高を括っていたのですが、実物を見たら想像以上に印象が変わりました。なお、先代ゴルフヴァリアントにはTwitter友達のでぃーたさんのゴルフ7.5Rヴァリアントに3度ほど乗せて頂いております。
まず先代&新型のサイドビューを比べてみましょう。まずは先代ゴルフ7.5ヴァリアント。
そして下が今回試乗した新型ゴルフ8ヴァリアント。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/1900 sec, ISO32)
こうして並べて見ると、リアセクションのデザイン、結構違いますよね。下の図を御覧下さい。
まずテールゲートの傾斜ですが、新型では先代に比べてかなり寝ているのが一目瞭然ですね。そして、リアクォーターガラスも、先代は比較的四角形に近い形状だったのが、新型ではその寝そべったテールゲートや、緩やかに後方に向かって下がってくるルーフラインに沿うように三角形にかなり近い形状に変化しています。
これだけで、従来のボクシーな機能性を全面に押し出したスタイルから、MAZDA6やA4アバントなどのようなスポーツワゴンぽいシルエットへと大きく印象を変えることに成功しています。見よ、このお尻の突き出しっぷりを。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/1050 sec, ISO32)
で、前方から見たときにもこれが視覚効果としてかなり効いていて、先代ではルーフの後端からスパッと切り立った感じに見えていたのに大して、新型ではルーフ後半からテールランプに向かって緩やかな弧を描いて下降していく様なラインに見えるんですよね。この辺り、確かに「クーペライク」な風情を感じることが出来ます。
Apple iPhone 12 Pro, (6mm, f/2, 1/370 sec, ISO25)
サイドラインも色っぽさを出してきた
ルーフラインが注目される新型ゴルフヴァリアントですが、サイドのラインについても先代より抑揚が付いたように感じました。先代ゴルフヴァリアントでは下の写真をご覧頂くと分かる通り、リアドアハンドルからテールランプまでスパーっと直線的に繋がっています。
一方新型ゴルフヴァリアントでは、下の写真の様にリアドアハンドルからフューエルリッドを経てテールランプに至るまでのラインが、緩やかに膨らむようにカーブしています。
Apple iPhone 12 Pro, (6mm, f/2, 1/700 sec, ISO25)
これを見て思い出したのが、フォルクスワーゲンきってのセクシーアイドル、アルテオン。
Apple iPhone XS, (6mm, f/2.4, 1/800 sec, ISO16)
ここまでド派手にボン・キュッ・ボンとはやっていませんが、いずれにしても直線基調だった先代から、随所で艶のある曲線を取り入れてきたのかな、という印象です。ぜひ実車をご覧頂ければと思います。
ハッチバックの存在意義を危うくする新型ゴルフヴァリアント
で、そんな美しいエクステリアを纏った新型ゴルフヴァリアントですが、ディーラーの営業さんと話してると「実は新型になってから、ハッチバックを見に来たお客様がヴァリアントを見ると、結構ヴァリアントに心変わりされるんですよね」とのこと。
それもそのはず、今回のフルモデルチェンジでゴルフハッチバックと比べた際のヴァリアントの魅力がグッと上がったんですよね。ちょっと比較してみましょう。
ゴルフヴァリアント8 | ゴルフ8 | ゴルフヴァリアント7 | |
全長mm | 4,640 | 4,295 | 4,575 |
全幅mm | 1,790 | 1,790 | 1,800 |
全高mm | 1,485 | 1,475 | 1,485 |
ホイールベースmm | 2,670 | 2,620 | 2,635 |
荷室容量L | 611 | 380 | 605 |
その他HBとの差 |
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価格 | 305~389万円 | 291~375万円 | - |
ここで最も注目すべきはホイールベース。新型ゴルフヴァリアントは新型ゴルフハッチバックに対して50mm、先代ゴルフヴァリアントと比べても35mm長いホイールベースを採用しています。ホイールベースでハッチバックに対して差を付けるのはゴルフシリーズで初めてのこと。
それに加えて全長も延長されたことで、ルーフラインを下げたりテールゲートの傾斜を強めてスタイリッシュな外見を得たにも関わらず、先代ゴルフ7ヴァリアントよりも更に大きな荷室容量を実現しています。
さらに、このホイールベースの拡大はハッチバックよりも広い後部座席空間の獲得にも貢献しています。数値的には38mm後席が後方にオフセットされています。先代ゴルフでも特に後席が狭いとは感じませんでしたが、特に長距離移動などでは後席の乗員がより快適になるのは間違いないでしょう。
そしてホイールベースの拡大は乗り心地にも影響を与えているはずです。特に高速道路などでの長距離移動時にはより優れた安定感と重厚感、直進安定性を得られるに違いありません。
つまり、特に長距離を、家族など3人以上で移動する利用シーンが多い場合には、従来よりも積極的にヴァリアントの方を選ぶメリットが増えたことになります。
そして細かい点ですが、今回の新型ゴルフヴァリアントは初めてパワーテールゲートをオプションで装備することが可能となりました。これ、使う前は不要だろうと思っていたのですが、パサオで初めて装備して、キャンプやサイクリングなどで重い荷物を両手で持った状態でも荷物を一旦置かずにリアハッチを開けられる事の利便性を知ってしまい、今では非常に重宝しています。
それで価格差はたったの14万円と考えると、今までハッチバックを選んでいたであろう層の一定数はヴァリアントに流れそうですよね。
内装の質感は前評判ほど悪くない(いや、むしろ良い)
では乗り込んでみます。内装の質感が下がったという評価が散見されていたので実際どうなのか気になっていました。結論としては、少なくともR-LineやStyleグレードについては全然悪くないと思います。むしろ個人的には好きな雰囲気ですね。
試乗車はスポーティに振ったR-Lineなのでファブリックとマイクロフリースのコンビバケットシートになっています。他のグレードではヘッドレストが分離したマイクロフリース生地のスポーツコンフォートシート。
このマイクロフリース素材が中々快適で、滑ることもなく、かと言って貼り付くこともなく、ちょうどいい感じで身体をホールドしてくれます。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/160 sec, ISO32)
コックピットおよびインパネ。エアコンの吹出口が低いところで水平に繋がっていて低重心な感じになっているので、視界が開けたスッキリした感じを生み出しているのでしょうか(実際のエアダクトは真ん中と左右だけ)。結構好みな感じです。
Apple iPhone 12 Pro, (1.54mm, f/2.4, 1/120 sec, ISO32)
インパネのディスプレイと中央のエアコン吹出口はドライバー側に傾いているタイプ。最近のフォルクスワーゲン/アウディでお馴染みの形状ですね。
ステアリングホイール中央の新エンブレムはちょっと面白くて、角度や光の当たり方によってはVWが見えたり見えなかったりホログラム的に変化します。ちなみにこのステアリングホイールはR-Line専用の太めのものです。アルミペダルもR-Lineだけですね。
Styleグレードにたった5万円プラスでこのハンドルとペダル、さらに専用スポーツサスペンションやプログレッシブステアリング等が付いてくるなら、個人的には迷わずR-Lineかな・・・。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO50)
インパネのディスプレイの下から左右にカーボン調のカッコいい加飾が走っています。その上はハードプラですが、この加飾だけで充分質感が高く感じます。派手すぎないのも良い。この写真だとちょっと見えにくいですが、カーボン風加飾の上に青いアンビエントライトが走っています。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/100 sec, ISO40)
この加飾はもう一つの上級グレードのStyleではヘアライン加工になります。これはこれでいい感じ。こちらの写真だとアンビエントライトがよく見えますね。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/50 sec, ISO160)
なお、Styleグレードではシートや内装の基調色を、ブラックか明るめのグレーを選べるようです(上の写真は明るいグレー(ストームグレー))。
前席のドアの内張りには、カーボン風のトリムとスエード調(かな?)の生地が配置してあります。これも質感の高さに貢献しています。光の関係で見えづらいですが、このカーボン加飾の上にもアンビエントライトが走っています。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO32)
こちらは後部座席のドア。カーボン加飾はありませんが、スエード調の生地が貼ってあります。こちらはアンビエントライトがよく見えますね。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/60 sec, ISO200)
後部座席のシートはこんな感じで、前席と同じファブリックとマイクロフリースのコンビシートになっています。
前席のシートバックには、下部のポケットに加えて上部にも2分割の小物入れがあり、ここにスマホなどを入れられるようになっています。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO64)
ホイールベース拡大の恩恵によって、運転席を身長178cmの筆者に合わせた状態で後ろに座ってもこの膝前余裕。パサートのように足が組める程ではありませんが、長距離移動も快適でしょう。
ただし視界はR-Lineのバケットシートよりも、ヘッドレストが分離したスポーツコンフォートシートの方がいいでしょうね。
Apple iPhone 12 Pro, (1.54mm, f/2.4, 1/125 sec, ISO64)
タッチパネル操作系は意外とすぐに慣れそう
さて、内装の質感よりももっと気になっていた、静電容量式タッチパネル主体になった操作系を試してみます。30分程度の試乗なのでよく使いそうなエアコン中心に触ってみました。
Apple iPhone 12 Pro, (6mm, f/2, 1/120 sec, ISO80)
温度だけであれば、上の写真のディスプレイすぐ下の温度計マークのところで変えられます。
当初「スライドで調整」と言う言葉を見かけたので「運転中にタッチパネルをスライドとか無理ゲー」と不安視していましたが、実は調整方法は2通りあって、指をスライドさせる方法に加えて、ポンとタップする事で0.5℃ずつ調整することが出来るので、実はさほど難しく有りません。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/610 sec, ISO32)
この温度調整タップ/スライダーをディスプレイから独立させてくれたのは非常に大きいですね。これならオートエアコンを使っている限りにおいてはこれまでの物理ダイヤル/ボタンの操作感覚と殆ど変わらないでしょう。
一方、手動で風量などを変えたい場合には、画面下のハザードランプボタンの右上の「CLIMA」をタップすると、ディスプレイがエアコン調整画面になります。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO80)
下がエアコン調整画面。風量を変えたい場合も、先程の温度調整と同じ用に、ファンマークの間で指をスライドさせるか、微調整たい場合は左右端のファンマークをタップします。1画面深く入らなければならない面倒さはあるものの、これも割と扱いやすいですし、オートメインなら頻繁に行う操作ではないでしょう。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/750 sec, ISO32)
ということで、筆者的にはこれまで「エアコン操作系は物理に限る」という過激思想を持ち合わせていましたが、この新型ゴルフ/ゴルフヴァリアントの操作系であればすんなり受け入れられそうです。この辺りの操作性が非常によく煮詰められているのが毎度フォルクスワーゲンに感心させられるところです。
進化した「Digital Cockpit Pro」は柔軟性向上も、ちょっとだけ残念
デジタルメータークラスターは従来の「Active Info Display」から「Digital Cockpit Pro」に名称を変え、デザインが一新されました。が、一見したところ、デザイン以外では大きな変化は見つけられませんでした。
確かに速度計を下端に押しやることでマップの領域が大きくなりました。左右の箱の中の表示内容も多少カスタマイズの幅が広がり、そもそもこれらの箱を片方のみ、あるいは両方とも非表示にしてディスプレイ全体を広大なマップとして使うことも可能です。カスタマイズの柔軟性はかなり上がってますね。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO50)
なお、ナビの目的地設定はしなかったので、この画面でのナビゲーション表示がどの程度充実したのかは確認できませんでした。現愛車のActive Info Displayは単純なマップ表示なので実際はあまり見ていないのですが、ナビゲーション表示がどの程度進化したのかによっては活用機会が増えそうです。
ところで一点、盲点的に残念な点がありました。下のようにお馴染みの円形の速度計と回転計のモードにする事も可能なのですが、どうもこのモードではマップ表示が出来無さそうなんですよね。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/115 sec, ISO125)
つまり、下の様な表示にしたいのですが、そのモードは無さそうでした。変速が気持ちいいDSGだけあって、回転数を見ながら運転するのが割と好きなのですが、これはやや残念ですね。
そうそう、ADAS機能の一つであるTravel Assistのオートクルーズコントロールも少し使ってみました。ステアリングスイッチがタッチ式になりましたが、一言で言えばこれまでと比べて操作性がさほど悪くなったとは感じませんでした。
下写真の右上の「O/I」でACCをオンにすると、円形の速度計の場合には右奥のように緑色で設定速度が表示されます(この画面では60km/h)。さらに「+」と「−」を、軽くタップすると時速1kmずつ、深めに押すと疑似クリック感も強くなり、時速10kmずつ増減出来るようになっており、慣れれば使いやすいと感じました。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO40)
小型化されたシフトレバーの操作性はどうか?
さて、タッチパネル式の操作系と並んで個人的に気になっていたのは、シフトレバーの操作性です。
新型ゴルフ/ゴルフヴァリアントから採用された新しい小型シフトレバー・・・いや、公式カタログには「シフトレバー」と書かれていますが、個人的には実質的に「シフトレバー廃止」と言いたいくらい小型で、まるで鼻をつまむかのような小さなセレクターになってしまいました。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO50)
この変更を知った当初は「ついにフォルクスワーゲンよお前もか・・・シフトレバーが男のロマンだったのに・・・」と嘆き悲しんだものです。
※そんなどうでもいい想いを綴ったのが下記記事
しかし、実際に使ってみると操作ギミックが非常に練られていて、杞憂に終わりそうな事が分かりました。
M→D/Sモード復帰タイミングが意図に沿わない問題は、杞憂かも
機能上の大きな変更点の一つであり、かつ最も懸念していた事柄の一つが、従来は下の写真の様にシフトレバーを左側(助手席側)にコクっと倒すことでM(マニュアル)モードに移行できたのですが、新レバーではそのギミックはなくなり、Mモードへの移行はパドル操作経由のみとなった事です。
この場合問題になるのはむしろMモードから自動変速(D/S)モードへの復帰で、従来であれば、仮にシフトレバー以外で復帰させるとすれば、10〜30秒程度待って自動復帰させるか(この自動復帰のタイミングは走行状況によって異なる)、パドルを数秒長押しすることでしか復帰できないという実にもどかしい事態になります(なのでワインディングなどで継続的にMモードを使う場合はシフトレバーを使うことが多い)。これは筆者を始めとするマニュアルモード愛用者にとってはやや由々しき問題です。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (17mm, f/3.1, 1/60 sec, ISO320)
ところがこの懸念はそれほど大きくない事が分かりました。この鼻のようなシフトレバーを下に一度倒すことで、MモードからD(ドライブ)モードとS(スポーツ)に瞬時に戻すことが出来るのです。この操作は通常はDモードとSモード間でシフトプログラムを変えるために行うものです。
他メーカーでよくあるのは、Dモードからパドル操作で一時的にマニュアルモードに移行した場合、数秒程度ですぐにDモードに戻ってしまうため、ワインディングなどでしばらく3速をキープしたい、というようなシーンでは使い勝手が良くないのです。しかしフォルクスワーゲンの場合はパドルでMモードにしても逆にすぐにはD/Sモードに復帰せずある程度キープされます。今回はこの特性がまさに功を奏した形で、パドルでMモードに入った後、自動的に戻る心配なくポジションをキープし、戻したいタイミングでシフトレバーをクイッと下に倒せば自動変速モードに瞬時に戻れるというわけです。
この辺りのギミックがよく練られてるのも、さすがフォルクスワーゲンだな〜と感じます。ただし、もしかすると上で書いたようなMモードからの復帰制御も変わっているかも知れないのでもう少し試してみたいところです。分かり次第追記したいと思います。
ちなみに、従来より使い勝手が向上した点として、Pの位置にしなくてもエンジンを切れば自動的にパーキングギアに入れてくれるようになりました(操作に慣れなくて実際にPにせずにエンジンオフしたらPになった)。
アイドリングストップ解除が車両設定に潜ってしまった
一点だけ気になったのは、これまでシフトレバーの横にあったアイドリングストップのON/OFFスイッチがインフォテシステムの車両設定の中に潜り込んでしまった事ですね。筆者の様にバッテリーへの負荷を嫌ってアイストは常にオフにしている人は少なくないと思うので、これはコーディングする人増えそう(笑)
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/420 sec, ISO32)
新型ゴルフヴァリアントのドライブフィール – 性能は文句なしだが、感性に合うか否か
冒頭で触れた通り、今回一番気になったのはドライブフィールです。とは言え、一言で言うならば、総合的にはとても良く出来ています。
ステアリングフィールについては、以前から申し上げている通りフォルクスワーゲンの電動パワステは元々非常に優秀で全く文句がありません。ただし、低速時の取り回しの良さやスポーツ走行時のクイックな気持ち良さに繋がる「プログレッシブステアリング」という可変ギアレシオ機構はR-Lineのみの装備なので、気になる場合は乗り比べてみて下さい。
また乗り心地については、乗る前には少し硬いのでは、と思っていました。というのも、R-Lineだけは専用のスポーツサスペンションを採用している一方でGTIやRが搭載する電子制御ダンパーDCCは装備していないため、不自然な固さがありやしないかと気にしていたのです。しかしこれも杞憂に終わりました。剛性感としなやかさがちゃんと両立された、フォルクスワーゲンらしい仕上がりになっています。もっとも30分程度の都内一般道での試乗なので、限定的なインプレとなります。
ということで、総合的には非常に良く出来ているのですが、気になったのはパワートレインです。今回の試乗車はR-Lineなので1.5L4気筒ユニットでのインプレッションになります。
マイルドハイブリッドはスムーズで加速よし
今回の新型ゴルフ/ゴルフヴァリアントではパワートレインが「TSI」から「eTSI」へと大きく変わりました。主な変更点は以下のとおりです。
- エンジンをEA211から「EA211evo」へ刷新。EA211evoの特性として、
- 1.4Lタイプは1.5Lへ排気量アップ(1Lタイプは据え置き)
- 低負荷時の気筒休止機構「アクティブシリンダーマネジメント」搭載(1.5Lのみ)
- コースティング制御(アクセルオフ時にエンジン停止)
- 48Vマイルドハイブリッド搭載
- 回生ブレーキ搭載
マイルドハイブリッドなので、大雑把な仕組みとしては、トルクの立ち上がりでモーターがアシストし、減速時には回生機構でエネルギーを溜め込むというもの。なので、発進時をはじめ、加速はとても力強く、またシリーズハイブリッドほど大きな介入ではないので、不自然さもなく非常にスムーズです。
コースティングや気筒休止機構についても、回転計とにらめっこをしていなければ分からないほどに自然に動作します。
おそらく、非常に多くの人にとって、非常に優秀なパワートレインだと感じられるのではないかと思います。
ところが、一方で筆者はこの短い試乗の間にいくつかの違和感を払拭することが出来ませんでした。ただ、申し上げておきたいのは、筆者はこれまでにオートバイやMTのRX-8など比較的スポーティな乗り物を愛好してきており、シフトチェンジのフィーリングやそれに連動するエンジンサウンドの気持ちよさなどをかなり重視する乗り手であり、必ずしも「万人受け」の「万人」の側には含まれない(むしろGTIやR向け人材)と思われることです。その前提でお読み頂ければと思います。
エンジンサウンドが少し寂しくなった?
まず、エンジン音の存在感が鳴りを潜めた感覚を受けました。これまで1.4LのTSIエンジン車には何度か乗ったことがありますが、官能的などとは言えないまでも、乾いた気持ちのいいメカニカルなサウンドを程よく主張してきて、ある程度回しても楽しいと思えるものだったと記憶しています。
またこの新型ゴルフヴァリアントでは、サウンドの質がすこしくぐもった「ブオォォォン」という感じになり、好き嫌いは人によって異なるとしても、少なくともこれまでのTSIエンジンとは少し質が変わったと感じました。
そうした事が影響してか、スポーツモードやMモードで積極的に運転しても、あまり楽しいサウンドとは感じませんでした。
一方大人しめになった音量との相関関係なのか、ロードノイズが大きいと感じたんですよね。ゴルフ8のレビューでは静粛性のレベルは高いというものが多いのですが、もしかすると気筒休止機構やコースティングなどとも相まって、相対的に他の音が耳についた可能性もあります。なお試乗コースは筆者が日常的に使用している幹線道路なので路面状況のせいでは無いと思われます
DSGのダイレクト感・キレが薄まった?
まず踏み込んでいった時に、踏み込み量と加速感とサウンドの間に微妙なズレ感というか、違和感を感じたんですよね。足の裏からペダルを通してスロットルを開けるのに呼応して加速感に繋がる過程のどこかで、何かが介入しているような感覚。シリーズハイブリッドではないのでプリウスなどで感じるほどの違和感では全然無く、多分ほとんどの人は気付かないと思いますし、慣れの問題だけかも知れません。
そしてDSGで最も楽しいのはシフトダウンの瞬間です。適切な回転数・タイミングでシフトを下げると、間髪置かず「フォゥンッ!」と素早くブリッピングを吹かし、瞬時にシフトダウンを終えます。更にそこから再度踏んでいった時にダイレクトに動力に直結するような加速を楽しむのが実に気持ちが良く、近所での日常のドライブですら楽しいものにしてくれます(冷静に考えると「あんな低速で何やってんだ」って話ですが、いいんです)。
ところが新型ゴルフヴァリアントではどうもそれが上手く感じられないケースが多かったのです。まず、シフトダウンの際に、パドルを操作してから1秒程度遅れてブリッピングするという、これまでのDSGでは考えづらい緩慢な動作が頻繁に見られました(もちろん回転数が高すぎるという話ではなく)。3→2速ではほぼ毎回、4→3速でも数回に1度の割合でそうした遅れが見られました。ドライブモードはスポーツです。
しかも、そのブリッピングが、3→2速ではほぼ毎度「ブオォォウン」というかったるく鈍い吹け上がりなのです。回転数は3速2000~3000回転辺りからのシフトダウンで、それです。これでは「ちょっと昔のトルコンATかよ」という感じです。まあ、3→2速でのシフトダウンなんてかなりのタイトコーナーかETCゲートの出口くらいでしか使いませんけどね。
電動化への過渡期でフォルクスワーゲンらしいダイレクト感が希薄化?
要因は、電動化を始めとするパワートレインの大幅な刷新と考えて間違いないでしょう。48Vマイルドハイブリッドや回生機構によるモーターとの連携、それ以外にも、気筒休止やコースティングなど、様々な制御が絡み合ったパワートレインになりました。その影響で、これまでと比べると制御過多になっている印象です。
スムーズな加速などの性能はともかく、感性に訴える部分では、フォルクスワーゲンのパワートレインの魅力は、ダイレクトでスピーディなDSGによって小気味の良いエンジンを、まるで掌で操るかのように車を自在に加減速させる爽快さにあるのではないでしょうか。たとえ本来DSGが効率化・燃費向上を目指して開発されたものだとしても、そのダイレクトな運転感覚を求めてDSGに辿り着いたオーナーも少なくないはずです。
それが、マイルドハイブリッドを始めとする複雑な機構が絡むことでダイレクトな操作感が干渉され、希薄化してしまったのではないか、と想像しています。
まあ、こんなところが気になるのはごく一部のドライバーだけだと思うので、ぜひ試乗で確認してみて下さい。繰り返しますが多くの専門家が新型ゴルフ/ゴルフヴァリアントを非常に高く評価しているので、大抵の人は、乗ってみたら「10maxは一体何を言ってたんだ」となるんだと思います。あと、そもそもそんなマニアはGTIやRに行くべし、と言う話もありますね(ヴァリアントGTIは無いですが・・・)。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/120 sec, ISO100)
まとめ:優等生だったゴルフヴァリアントは新型で超優等生に!
終盤パワートレインに関してややマニアック過ぎる拘りインプレッションをお届けしてしまいましたが、冷静に全般を振り返ると、元々優秀すぎた先代を、よくもまあ更に妥協なく進化させてきたもんだな、と感心します。スーパーサイヤ人がスーパーサイヤ人ゴッドになったかのようですね。そんな今回のインプレをまとめておきます。
- エクステリアは本当にクーペライクで表情一新されていた
- ハッチバックに対するヴァリアントの魅力が従来より向上
- タッチパネル主体の新操作系は意外とすぐ慣れそう
- 小型化シフトレバーの操作性もちゃんと練られてる
- マイルドハイブリッドはスムーズな加速を獲得
- ただしエンジンサウンドとドライブフィールは試乗で確認すべし
最後に、今回の試乗をはじめちょっとした相談など、いつも快くご対応下さっているフォルクスワーゲン成城の皆様に深謝です。
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