【ゴルフRヴァリアント試乗】「R」にこそ色濃く受け継がれる創始者フェルディナンド・ポルシェ博士の理念

いよいよゴルフRについて筆を取ろうと思う。正直なところ、非常に重い筆だ。

この車は間違いなく非常に優れた車なのだろう、という事は分かる。純然たるスポーツカーやハイパーカーを一旦脇に置けば、恐ろしく速く、そして十分以上に乗り心地がよく、実用性も優れている。文字通り全方位において超優秀なのだ。

だからこそ、この車をどう評すべきか頭を整理するのに時間がかかったし、今でも充分に理解しているとは思えない。しかし、どれだけ考えたところで確固とした答えなど得られよう筈もないのだから、今思っていることを一度書き連ねてみたいと思う。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)

ゴルフRヴァリアントを3度味わう

ゴルフRヴァリアントにはこれまで3度乗せて頂く機会があった。Twitterでお世話になっているでぃーたさんの愛車だ。そのうちの1回が先日の野尻湖オフである。

日帰り往復600kmの信州道中膝栗毛 - 車好き&ブロガープチオフ会の記【後編】
5月30日追記:くるすぺさんがパサートオールトラックの素晴らしいインプレ記事を書いてくださったので文中にリンクを追加しました。 車好き&ブロガーの皆さんと車の話をするだけのために北信州は野尻湖へ日帰り往復600kmの酔狂な旅に出掛けた...

ゴルフという車には街中でしばしば出会うが、「R」バッジが付くゴルフR/ゴルフRヴァリアントにはそうそう簡単にはお目にかかれない。例えば試乗しようと思っても、地方はもちろん都内のディーラーですら試乗車が置かれている店舗は数少ない。

それほど希少な車に3度も乗る機会に恵まれたのだから、でぃーたさんには本当に感謝である。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/8, 1/250 sec, ISO100)

真の王者、多くを語らず

「それほど希少な車にも関わらず」と言うべきか、「輪をかけて」というべきか、ゴルフR/ゴルフRヴァリアントのエクステリアは驚くほど主張することを控えている。フロントグリルとリアハッチ、フロントフェンダーに辛うじて「R」のバッジが配置される以外には、通常のゴルフと何も変わらない。いやむしろ「R」以外の、「TSI」「4MOTION」と言った機能を主張するバッジや、あまつさえ「Golf」という車種名を表すものさえ廃され、徹底的にシンプルなルックスに仕立て上げられている。まるで「『R』という車にゴルフのボディを被せました」とでも言わんばかりだ。

また、ゴルフGTIはアクセントカラーとしてレッドの加飾をヘッドライトやブレーキキャリパーなど要所要所に装備しているが、ゴルフR/ゴルフRヴァリアントの基調カラーは大人しめのブルーであり、しかもGTIの様に外観上目立つ場所には配置されていない。

いや、ゴルフGTIとてその性能を考えれば十分に控えめなエクステリアなのだ。Rはあえて更にステルス性を高めているかのように奥ゆかしい。

ゴルフRヴァリアント

SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/8, 1/320 sec, ISO100)
ゴルフR(手前)のブレーキキャリパーはブラックに白抜きで「R」の文字が刻まれる。

つまり、「それほど希少な車にも関わらず」特別なエクステリアを纏わず、さらに「R」以外のバッジまで外すことで「輪をかけたように」ルックス上の存在感を消し去っているのだ。

日本人には、真の王者こそ、その強さの多くを語らないという美学がある。果たしてドイツの地においてもそうした価値観があるかは分からないが、少なくとも実にクールだ。

ゴルフRヴァリアント 試乗SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/2.8, 1/800 sec, ISO100)

ジキルとハイド

大人しくしている分には至って静かだ。注意深く耳をそばだてれば腹の底に響くような低いエキゾースト・ノートに気づくが、意識しなければ分からないだろう。

ゆっくりと発進させる。アクセルを軽く踏み込んでいくと穏やかな排気音と共にスムーズにスピードを乗せていく。体の下では引き締まってはいるがよく動く足が車の挙動を安定させ、同乗者にも快適な移動を約束する。4MOTIONと適度な重量が重厚感のある乗り味に繋がり、これなら長距離移動も疲れ知らずに違いない。

こうして転がしている限り至って運転しやすい優等生的なファミリーカーと言っても良い。そう、ゴルフというのは元々こういう車だ。誰が運転しても普通に安心できて、全ての乗員にとって気持ちが良い。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/5, 1/200 sec, ISO100)

さらにパッケージングやユーティリティ面でも、居住性や積載性を一切犠牲にしていない。後部座席は身長178cmの筆者でも快適な程の余裕があり、さらにゴルフRヴァリアントの荷室は605Lとクラストップレベルの容量だ。

このヴァリアントというステーションワゴン型のボディバリエーションだが、同じホットモデルでもGTIには用意されていない。Rはそうした点からも、より大人の、例えば家族とのバケーションなどにも応えてくれる実用性をも兼ね備えたエステートを求める層に訴求している様に思う。実用性を得るとともに、乗り味も重厚なものとなる。逆に言えばGTIはやはり軽快な操縦性を重視した、まさに「ホットハッチ」を求める層をターゲットにしているのだろう。

そうそう、実用性と言えば、ゴルフという車は、ホットモデルであるGTI、R共に通常モデルと同じ130mmの最低地上高を確保している。必要以上に地上高を低くすることを良しとせず、実用性と快適な乗り心地を重視した結果なのではないだろうか。非常にスマートだと感じる。

これだけあればファミリーカーだと主張して家族を説得する材料としては十分だろう(価格はともかく)。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (31mm, f/5, 1/60 sec, ISO500)

しかし、一旦強くアクセルを強く踏み込むと世界は一変する。まるで全く別の車であるかのようにメカニカルな咆哮を上げながら脳髄をはるか後方に置き去りにする。アクセルオフでは豪快なバブリング音まで聴かせる有様だ。この車、明らかに乗員を高揚させるおもてなしの仕方を知っている。そのサウンドはもはや官能的な領域に足を踏み入れている。

静かで優等生的なクルマだって?とんでもない、これは相当なクルマ好きの手になるものだ。まるで全く正反対の2つの人格を一つのボディに有しているかのごとく。

別の例え方をするならば、最初にベジータとナッパの前に姿を現した孫悟空の戦闘力が400程度だったにも関わらず、その後の戦闘で界王拳を発動した途端に8000まで上り詰めた時の事を思い出して頂きたい。その時のベジータとナッパの驚愕を、まさにゴルフR/ゴルフRヴァリアントに乗ることで体験することが出来る。もしもスカウターを装着していたなら爆発して危ないところであった。

しかも凄まじいことに、その乗り心地は決して固すぎるということはなく、むしろ快適と言っても過言ではない。多少コツコツを感じさせながらもアダプティブダンパーDCCが確実に揺れを収束させ、一言で表現するならばフラットライドの部類に入る。例え「レースモード」でも、だ。

この二面性、懐の深さこそが、ゴルフR/ゴルフRヴァリアントという車の最大の特徴と言えるのではないだろうか。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (51mm, f/2.8, 1/640 sec, ISO100)

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ゴルフRが守り抜いた最も大切なもの

高揚感をもたらす程のホットな一面と、実用的で優等生的なクールな一面、これらの両極端なキャラクターのうち、どちらがゴルフR/ゴルフRヴァリアントの特筆すべき性能なのだろうか。

それは後者ではないか、と筆者は思うのだ。

速いだけ、ホットなだけの車を造るのは恐らくさほど難しくはない。現に、「スポーツカー」という一つのジャンルが成立するほど世の中には速い車が存在する。あるいはスポーツカーでないにしても、それに類するホットハッチなどのスポーティカーは多いが、少なからず実用性や快適性を犠牲にしている事が多いし、デザイン面ではそのスポーティネスを主張している事が殆どだ。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/2.8, 1/500 sec, ISO100)

しかしゴルフR/ゴルフRヴァリアントはそのどれもが当てはまらない。

別人格と思えるほどの静粛で安楽な日常走行性能、レースモードにおいてさえ破綻しないフラットな乗り心地、大人4人がファミリーカーのごとく快適に過ごせる居住空間、広大なラゲッジスペース、そして見た目には(見る人が見なければ)決して標準のゴルフやゴルフヴァリアントとの区別が付かないステルスなルックス・・・こうしたクールな側面をこのホットな車に両立させ得た事こそが、このゴルフR/ゴルフRヴァリアントの恐ろしさであり、フォルクスワーゲンのクルマづくりの底力を体現した「真の性能」なのではないだろうか。

そして、こうした実用性や快適性への頑ななまでの拘りこそ、下記に引用したフォルクスワーゲン創始者フェルディナンド・ポルシェ博士の理念そのものであり、ゴルフR/ゴルフRヴァリアントというクルマがその理念を受け継ぎ守り抜いた証である気がしてならない。

「国民車」となる車は(中略)操縦性に優れ、修理が簡単なクルマでなければならない。そして乗り心地が良く、乗客室とトランク・スペースが充分にあり、無駄な装備が一切なく、全ての目的に合致するようなクルマでなければならない。

出典:WORLD CAR GUIDE DX「VOLKSWAGEN」より、フェルディナンド・ポルシェ博士の「国民車」のアイデアの一部

フォルクスワーゲン 歴史 車名 由来 語源 ワールドカーガイド 世界自動車図鑑 パサート PASSAT ゴルフ GOLF 貿易風

OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASPH. (25mm, f/1.4, 1/125 sec, ISO200)
フェルディナンド・ポルシェ博士 出典:WORLD CAR GUIDE DX「VOLKSWAGEN」

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変わらぬ何かを持つということ

非常に不思議なことなのだが、人が所有する様々なもののなかでクルマというのは非常に特別な存在だ。時に愛車はその所有者のアイデンティティとなり、時に所有者の価値観へも影響を与える。

だからこそ、ある自動車ブランドが発するアイデンティティやイメージ、価値感といったものは非常に大事で、それらが無ければオーナーの愛着は得られないし、軽率にコロコロ変わる様ではブランドへの信頼は根付かない。

そういった意味で、ゴルフR/ゴルフRヴァリアントという非常にホットな車が、実用性や快適性というフォルクスワーゲン創業以来の理念を色濃く体現しているという事実こそが、フォルクスワーゲンというブランドへの愛着と信頼の源泉なのかも知れない。

いかん、ゴルフR欲しくなってきた。

ゴルフRヴァリアントSONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (75mm, f/4.5, 1/80 sec, ISO160)

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