【圧倒的コスパ】ティグアンR、TDI 4MOTIONに引導を渡しハイパフォーマンスSUV市場に殴り込み

こんにちは。昨年パサートオールトラック乗りになったにわかフォルクスワーゲンウォッチャーの10maxです。

2021年のティグアンのビッグマイナーチェンジには車好き界隈がややザワつきました。そう、先代ティグアンで市場からの待望を受け、TSI(ガソリン)/FWDモデルから1年半遅れで日本市場に導入されたTDI 4MOTION(ディーゼルAWDモデル)が、何と再びラインナップ落ちしたのです。そして「その代わり」に導入されたのはなんと「ティグアンR」。

「ティグアンのR」を待ち望んでいた人もいるかも知れませんが、一方で「なんだこのすっとこどっこい!」などと江戸っ子ばりに突っ込みを入れたくなった人も少なくないでしょう。同じ4MOTIONとは言え、何しろ価格が跳ね上がりますからね。

ティグアンR

R専用の「ラピスブルーメタリック」を初めて身に纏うティグアン。ゴルフ8Rと同じ320ps/420Nmを発揮する。 出典:Response.jp

ティグアンRは犠牲を強いてでも新市場に殴り込む使命を与えられた

さて、ティグアンという1車種のラインナップに閉じて見た場合にはそうした疑問が湧くのですが、少し視点を変えて、フォルクスワーゲンブランド全体のラインナップの中で考えるとまた少し違う景色が見えてきます。

6月4日のレスポンスの記事内でフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)営業本部商品企画課プロダクトマネージャーの沢村武史さんは以下のように発言されています。

これは想像なのですが、多分“Rビジネス”を広げることを考えると(中略)次は『ポロ』ではなかった。たぶんポロのコンパクトな車形でさらに四駆を搭載するというのはRビジネスとしては少し違うという考えのようです。そうすると(中略)ラインナップを広げるならSUVしかなくなります。

出典:Response.jp

VGJ本社の方が「想像なのですが」と前置きしているところを見ると、こうした日本市場における商品戦略も本国主導なのかな、なんて辺りも興味津々ですが、それはさておき・・・

アウディRS Q3

アウディRS Q3。ティグアンRを上回る400psを発生する2.5L直列5気筒ガソリンターボを積む。

棲み分けをより明確にすべく「R」が「TDI 4MOTION」に渡した引導

この内容はある意味腹に落ちるものがあります。これは個人的な感覚なのですが、フォルクスワーゲンにおいて「R」という車の位置づけは、単にかっ飛ばせるホットな車、というだけでなく、ある種「大人のプレミアムモデル」という商品的意図を強く感じます(この話は追ってゴルフRヴァリアントの試乗記事で触れようと思っていますが)。そうした時に、次の「R」バッジを誰に与えようか、と考えた時に、ポロよりもティグアンの方が相応しい、とするのは、ユーザー層を考えても納得感があります(個人的には上質激速AWDコンパクト「ポロR」なんてGRヤリスみたいで凄く欲しいけど)。

さらにVGJ沢村さんはこうも発言されています。

ティグアンのユーザーは、50代で家族構成は4人、あるいは子供達が巣立つぐらいで、年収は高くて、1000万を超えているくらいというイメージです。ただしティグアンの中でも(中略)TDIの4MOTIONとTSIと比較すると、TSIのお客様の方がちょっと若くてより子供と暮らしている比率が高く、荷室とかリアシートを使う機会が多いという傾向が見られました。

出典:Response.jp

ここから紐解くと、従来よりTDI 4MOTIONはティグアンの中でも年齢・収入共に少し上の層の比率が高かった事が伺えます。年収1000万を超える層の中のさらに上位層であれば「R」にも手が届く可能性が高いわけで、それならば共にAWDの「TDI 4MOTION」と「R」を併売する事によるブランド内競合を避けて、より付加価値(と利益率)の高い「R」にフォーカスしようと考えるのは、商品ラインナップ戦略としては教科書通りであり、極めて社内幹部受けも良いでしょう。

もっとも筆者個人のユーザー視点では完全に賛同している訳ではありません。やはりSUVであればリーズナブルなモデルにもAWDを用意して欲しいと思う人は多いのではないでしょうか。

本社内でのスマートなマーケティングストーリーと、販売現場やユーザー視点とが乖離するとすればこんなケースなのかな、などとお節介なことをふと思いました。

なんて言ってても再び後追いでTDI 4MOTIONが追加される可能性は否定できませんけどね。

BMW X2 M35i

BMW X2 M35i。X1のクーペライクモデル。X1にはないMモデルが追加された。出典:Response.jp

売れっ子ティグアンに与えられた「ハイパフォーマンスSUV」市場殴り込みの使命

しかし、上記のような痛みを伴ってでも、ティグアンには果たさなければならない新たな使命が与えられたようです。再びVGJ沢村氏の言をお借りします。

輸入車ではハイパフォーマンスのSUVが多いので、そこに追従するという意味合いもあります。

出典:Response.jp

ここ最近思うのは、フォルクスワーゲンはグループ内のアウディが受け持つプレミアム層へも手を広げつつあるのではないか、ということです。パサートをベースに高級化を図ったアルテオンがその旗手ですね。そして、その次を担うのが、今フォルクスワーゲンの中でゴルフの販売台数を脅かしつつある人気車種ティグアン、という訳です。

もっとも厳密には、プレミアムSUVというよりはタイトルの通り「ハイパフォーマンスSUV」という事でしょうね。アルテオンのように別車種として仕立て上げられた訳ではないですから。

しかし、「スポーツカー顔負けのスペックを誇るハイパフォーマンスSUV」というジャンルにはこれまでプレミアムブランドしか存在しなかった訳ですから、そう言った意味ではプレミアム層への殴り込みと言う見方も出来るのでは無いかと筆者は思うわけです。

それはともかく。

GLB AMG

GLBに追加されたAMGモデル。7人乗りのハイパーSUVという独特なポジショニング。出典:Response.jp

ティグアンRの仮想ライバルとのスペック比較

では「ハイパフォーマンスSUV」ジャンルに殴り込むとして、具体的に比較検討され得る車種はどの辺りでしょうか。下記のような基準を目安として考えてみます。

  • ボディ全長:4500mm前後(Cセグメント辺り)
  • 最高出力:300ps前後
  • 価格帯:数百万円台後半

これを元にざっと思いついたのはこんなところです。

ティグアンRの仮想ライバル(適当)
  • アウディ RS Q3
  • BMW X2 M35
  • メルセデス GLB 35 (AMG)
  • ポルシェ マカン
  • アルファロメオ ステルヴィオ
  • ジャガー E-PACE

とりあえずはドイツプレミアム御三家に、ハイパフォーマンスSUVの元祖カイエンを生み出したポルシェ、そしてちょっとお国を変えてステルヴィオとE-PACE、といった塩梅。フランスにもプジョー3008のHYBRID4なんてのが出てきて微妙にジャンルが被りつつありますが、電動車を持ち出すと話がややこしくなるので一旦横に置いておきましょう。

ポルシェ マカン

ポシェ・マカン。言わずと知れた元祖ハイパフォーマンスSUV・カイエンの弟分。この車が当ブログに登場する日が来るとは。出典:WebCG 

スペック比較表

では早速横並びで比較してみましょう。なお、E-PACEについては250ps以上のグレードをピックアップしています。

ティグアンRRS Q3X2 M35iGLB AMGマカンステルヴィオE-PACE

 R-DYNAMIC

全長mm4520450543754650469546904410
全幅mm1860185518251845192519051900
全高mm1668160515351670162516801650
重量kg17501730167017901840

~

2000

1810

~

1820

1890
定員5557555
駆動方式AWDAWDAWDAWDAWDAWDAWD
動力2L直4G2.5L直5G2L直4G2L直4G 2L直4G

2.9LV6G

3LV6G

2L直4G

2.2L直4D

2.9LV6G

2L直4G
最高出力ps3204003063062L:245

2.9L:380

3L:440

G:280

D:210

V6:510

249
最大トルクNm4204804504002L:370

2.9L:520

3L:550

G:400

D:470

V6:600

365
0-100km/h加速4.9秒4.5秒4.9秒5.2秒2L:6.7秒

2.9L:6.6秒

3L:4.5秒

G:5.7秒

D:6.6秒

V6:3.8秒

7.5秒
価格帯円684万838万705万732万円737

~

1252 万

589

~

1232万

621

~

854万

・・・これだけ見てもちょっと良く分かりませんよね・・・。分かるのは、やはり価格帯から性能に至るまで、結構競合するポジションにありそうだな、という事くらい。

では少しポイントを絞り込んでみます。

アルファロメオ ステルヴィオ

アルファロメオ・ステルヴィオ。ベースモデル(ガソリン)でも280psを叩き出す。出典:Response.jp

ティグアンRの突出したコストパフォーマンス

最もわかりやすい性能として0-100km/h加速での価格対性能の関係を見てみたいと思います。下の表では、一番左のティグアンRの数値に対して、優れているもの(安価なもの)に青いマーカー、劣っているもの(高価なもの)に赤いマーカーを引いています。

ティグアンRRS Q3X2 M35iGLB AMGマカンステルヴィオE-PACE

 R-DYNAMIC

0-100km/h加速4.9秒4.5秒4.9秒5.2秒2L:6.7秒

2.9L:6.6秒

3L:4.5秒

G:5.7秒

D:6.6秒

V6:3.8秒

7.5秒
価格円684万838万705万732万円737

~

1252 万

589

~

1232万

621

~

854万

こうしてみると、まず0-100km/h性能でティグアンより優れているのはRS Q3、マカン最上位のターボ、ステルヴィオのお化けグレード・クアドリフォリオの3車種(グレード)のみという事が分かります。しかしこれらの3車種(グレード)の価格を見るといずれもティグアンRよりかなり高額で、RS Q3が838万円、あとの2車種は1200万超えという恐ろしい状況。

一方価格はと言うと、ティグアンRよりも低価格なのはステルヴィオとE-PACEの最下位グレードのみ(ただし250psモデルの中で。E-PACEは上表記載のもの以外に最高出力200psなどの下位グレードあり)という状況で、いずれも加速性能ではティグアンRの方が大きく勝ります。

という事で、単純に加速性能だけで見れば、ティグアンRのコストパフォーマンスが如何に高いかという事が分かります。

ジャガー E-PACE

ジャガー・E-PACE。同社初のSUV「F-PACE」の弟分。出典:Response.jp

先進装備はもちろん全部入り、質感もプレミアムゾーンのティグアンR

上では0-100km/h加速性能のみを取り上げましたが、ではそれ以外の装備や質感が貧弱なのかというと、全くそんな事はありません。

「R」の称号を持つ車にはティグアンに限らずフォルクスワーゲンの最上級の性能と装備を与えられます。フォルクスワーゲンの最上級の性能と装備というのは、事実上世界で最も先進的なレベルであると言っても過言ではないでしょう。下手なプレミアムブランドの下位グレードよりはフォルクスワーゲンの全部入りの方が幸せになれる可能性が高い訳です。詳細比較は控えますが、例えばポルシェ・マカンでは、ヘッドライトの照射範囲を自動調整するポルシェ・ダイナミック・ライトシステムを標準装備するのは1000万円超えのグレードのみです(ちょっと信じられませんが)。

また一時期ゴルフRやT-Rocの(ベースモデルの)内装などでハードプラ素材などによる質感低下という意見も見られましたが、少なくともRに関して言えばその心配は無用でしょう。使われている素材も中々プレミアムなようです。

ティグアンR

ティグアンR

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走りにもちゃんと官能性能はある

さて、ものはよく出来ていたとして、プレミアムブランドと比較されるためにはある程度感性に訴えるドライビングフィールが求められるでしょう。例えば最も分かりやすいもので言えばサウンドなどです。

官能性能というとフォルクスワーゲンというブランドには縁遠いイメージがあるかも知れませんが、昨年からゴルフRやアルテオンなど初めて色々なフォルクスワーゲン車に乗る経験に恵まれる中で、実はこの領域でも非常に作り込みが上手いと言うことを発見しました。

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あとは市場がどう見るか

「ティグアンRはプレミアムブランドひしめくハイパフォーマンスSUVへの殴り込みだ!」などと勝手な妄想を繰り広げてしまいました。

フォルクスワーゲンというのは元々大変コストパフォーマンスの良いクルマを作るブランドです。プレミアムブランドとは一線を画した比較的求めやすい価格帯にも関わらず、アウディからのフィードバックを含めた先進技術を詰め込み、その走行性能は世界でベンチマークとされるほどです。なので上で記したような加速性能対価格の良さや装備の先進性などは従来から変わらない美点と言ってしまえばそれまでです。

ただ今回特徴的だったのは、あえて界隈をザワつかせながらTDI 4MOTIONという売れ筋グレードを廃してまで「R」を導入するという選択をした事、そしてその参入市場はこれまでプレミアムブランドが独占してきたセグメントだという事。これらの事実に、ティグアンに課せられた新たな使命が透けて見えるのです。

しかし一方で不安要素もあります。如何に相対的なコストパフォーマンスが高いと言ってもそれはあくまでもプレミアムブランドと比較しての話。これまで400万円ちょっとスタートだったティグアンに、いかに高性能とはいえ600万円台後半を出すかどうか。個人的には、実車を見てハンドルを握ってしまえばいとも容易く心を揺さぶられかねかねない魅力は感じますが、そこへ漕ぎ着けるまでのハードルはやはり高いと言わざるを得ないでしょう。

いずれにしても、中身は間違いなく非常にハイレベルであることは疑う余地がありません。いざとなればプレミアムブランドをも脅かしかねないフォルクスワーゲンの底力を見せ付けられたような今回のニュースでした。実車にお目にかかるのが楽しみです。

ティグアンR

出典:caricos.com

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