オリンパスが映像事業の譲渡の意向を固め、84年にわたる同事業の歴史に幕を閉じる方針を発表した。
元々コンパクトなカメラが好きだった筆者は2007年に登場した同社のE-410と宮崎あおいが出演するTVCMにいたく惹き付けられ、以来現在に至るまでオリンパスのデジタル一眼カメラをメインで使っている。
その様な背景から今回のニュースには少なからずショックを受けているファンの一人であるため、オリンパスのデジタル一眼カメラの魅力と歴史、そして未来予想について少し考えてみたいと思う。
オリンパスデジタル一眼カメラの魅力
オリンパスはデジタル一眼カメラは業界最大手であるキヤノンやニコンとは異なる特徴でキラリと光る存在感を放ってきた。それ故一部のユーザー層から熱烈な支持を受けて来たのである。
「小型軽量」という名の高性能
筆者は「小型軽量」というのは「優れた性能の一つ」だと考えている。
以前キヤノンのEOS5という銀塩一眼レフカメラを所有していたことがある。レンズはトキナーのF2.8通しの標準ズームだったように思う。しかし一年も経たないうちに全く持ち出さなくなり、売却してしまった。理由は言うまでもなくその巨大なサイズと重量だ。
そこで後継機として購入したのは、当時小型軽量を売りにしていたペンタックスのMZ-3という銀塩一眼レフだった(ちなみにその当時オリンパスはコンパクトデジカメに注力していた)。付けていたレンズはタムロンの何の変哲もないMFの標準ズームだったが、その小さなカメラを鞄に忍ばせて持ち歩くのが楽しくて仕方がなかった。無論残っている写真の枚数はEOS5によるものとは比較にならないほど多い。
この経験から、上のように考えるようになったのだ。
そして今やこの「小型軽量」という性能はオリンパスのお家芸と言っても良い。35mm銀塩一眼レフカメラシステムのOM、ハーフサイズのPEN時代からオリンパスと言えばコンパクトなカメラを作るメーカーである。
そのコンセプトはデジタル時代においてはフォーサーズ規格、さらにミラーレスのマイクロフォーサーズ規格という形で明確に継承され、PENシリーズやOM-Dシリーズという「小さくても高画質・高性能な一眼カメラ」という製品群に昇華された。
もちろんそれはボディだけでなく、レンズを含めたシステム全体で小型軽量化が可能というのがポイントだ。明るい高性能レンズがコンパクトに作れるだけでなく、旅先で重宝する超高倍率ズームを上着のポケットに入るような小ささで実現出来る。
どこにでも連れ出せる耐環境性能
オリンパスのカメラといえばネイチャーフォト、というイメージもすっかり定着している。
それはセンサーサイズ規格からくるマクロや望遠撮影の強みに加え、他社製品から頭一つ抜けた防塵防滴性能、対低温性能、SSWFと呼ばれるセンサーダストリダクション機能に由来する。OM-D E-M1などのカメラが水道の蛇口の下で水を被っているレビュー動画はファンの間では有名だ。
これにより、雪山や海といった極限環境だけでなく、筆者のような一般ユーザーが海外などの旅先でちょっとした雨や風も恐れず多少ラフに扱って思う存分にシャッターを切れるというのは非常に大きなメリットとなる。
総じて、最強の旅カメラ、そして日常すら旅にするカメラ
小型軽量で天候変化などに神経質にならずに持ち出せるとなれば、最高の旅のパートナーになることは想像を待たないだろう。
しかし活躍するのは何も旅行中だけではない。このシステムは通勤鞄にだって忍び込むことが出来るのだ。
想像して欲しい。仕事帰りにふと見上げた空が思いがけないマジックアワーを迎えているとしたら。そしてその時鞄の中に小さくて高性能な相棒がシャッターチャンスを待っていたとしたら。
独自の進化を遂げてきたオリンパスデジタル一眼カメラ
オリンパスのデジタル一眼カメラの今後を占う上で、これまでの変遷を辿ることは非常に参考になる。以下にご紹介する通り、ニコンやキヤノンとは異なる非常に独特な進化を遂げてきている。
「コンパクトな(はずの)フォーサーズ」の面目躍如に成功した「E-410」
他社がAPS-C規格を採用する中で、オリンパスだけが唯一(米コダックと共同で)フォーサーズ規格を提唱していた。その最初の機体であるE-1を発売したのは2003年のことである。その後、いくつかのE-SYSTEMならびにパナソニックのLUMIXシリーズのフォーサーズボディが発売されるが、小型軽量を売りにしていた割にはそこまででもない、という評価が続いた。
そのような中で2007年に登場したのが、E-410だ。同時に発売されたキットレンズのZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6と相まってそのコンパクトさはデジタル一眼レフカメラの常識を覆すものだった。ようやくフォーサーズ規格を存分に活かした製品が出たな、と思わせるのに十分以上のインパクトを伴った登場だった。
コンパクトさだけでなく、銀塩のOMシリーズを彷彿させるクラシックなボディデザイン、他社に先駆けて光学ファインダーではなく液晶モニターを通して被写体を見て撮影できるライブビュー機能などを備え、さらにイメージキャラクターに宮崎あおいさんを起用することでエントリー層の開拓にも成功した。
筆者もこの製品の発表を知り、気付いたらヤマダ電機のカメラ売り場に立っていたという不思議な体験をしている。今思えば宮崎あおいさんと何らかの心の疎通があったとしか思えない。
※なお、海外では同形状でライブビュー機能を備えないE-400という機種が2006年に発売されているが、日本導入はされていない。
同2007年、オリンパスの映像事業は最盛期を迎える(そして忍び寄るスマホの影)
実はE-410が発売された2007年に、同社の映像事業は3000億円を超えてピークを迎えている。
意外に思われるかも知れない。オリンパスのカメラと言えばこの後登場するPENやOM-Dなどのミラーレスというイメージが強いだろう。
しかし、ここにある偶然の符合がある。2007年はあのiPhoneが産声を上げた年なのだ。
となれば納得も出来るというものだろう。アメリカ西海岸から押し寄せるリンゴマークの小さな板の足音、そして続くスマホ普及という大きな波の気配と共に既に同社の映像事業は下り坂に差し掛かっていたのだ。
パナソニックと合流、マイクロフォーサーズ規格でミラーレス市場に先鞭
2008年にミラーレス専用規格であるマイクロフォーサーズをパナソニックと合同で発表し、間髪置かず発売された同規格第一号製品はパナソニックのLUMIX G1だった。それに遅れること一年、オリンパスも新生PEN、E-P1を発売した。
パナソニックが比較的オーソドックスな形状のボディに仕立ててきた一方、オリンパスのそれはかつてのPENをオマージュとしたクラシカルなデザインで注目された。もちろんイメージキャラクターは宮崎あおいさんだ。
このPENシリーズにより、市場ではミラーレスと言えばオリンパス、というイメージが確立した。追ってソニーがNEXシリーズでシェアを広げてくるがソニーはしばらくミラー付きカメラも併売している。ニコンやキヤノンもニコン1やキヤノンMなどを投入するがそれらは片手間の産物であり、主力が一眼レフ機である状況は2018年頃まで続く。
筆者は三代目となるPEN E-P3でマイクロフォーサーズデビューを果たした。最も驚いたのはコンパクトさよりも、AFの速さだった。「FAST AF」と呼ばれるコントラストAFは、シャッターボタンを押した瞬間に合焦しているという感覚で、特にタッチパネルAFは動き回る子供を撮影するのに重宝した。
こうした事からも他社が一眼レフ機とミラーレス機とにリソースを二分している間にオリンパスがミラーレス分野に集中し着々と技術を蓄積していることを感じ取ることが出来た。
OLYMPUS E-410, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (42mm, f/10, 1.3 sec, ISO400)
OM-D E-M1で再びハイアマに訴求
EVFによるファインダーの復活で話題になったOM-Dシリーズの初号機、E-M5が発売されたのは2012年だったが、何と言ってもオリンパスファンが待望していたのはその翌年2013年に久々のフラッグシップ機として登場したOM-D E-M1だった。「DUAL FAST AF」と呼ぶ像面位相差AFとコントラストAFのハイブリッドAFによりフォーサーズ時代のレンズ資産が不便なく使えるようになったのだ。
また性能に不満は残ったものの動体AFが使えるようになったのも朗報だった。
そして2016年にはOM-D E-M1 Mark IIが投入される。これはE-M1初号機の弱点をことごとく潰してきた正当進化機だ。
最も大きな進化を遂げたのは心臓部に当たるセンサーだった。初号機ではパナソニックのセンサーが搭載されていたが、E-M1 Mark IIではソニー製センサーが載り、高感度ノイズを始めとする画質が大幅にアップしたのだ。
加えて、動体AFの性能も段違いに引き上げられ、EVFも格段に自然な見え方になり、まさにハイアマからプロでも不満なく使えるモデルになっていた。それどころか手ブレ補正に至っては他社の追随を全く許さないほどの性能を誇り、撮影の幅を大きく広げることに貢献した機種でもある。
ニコンやキヤノンの一眼レフカメラを使っていた層もこの辺りでようやくオリンパスを同じ土俵で比べるようになり、「オリンパスだから」「マイクロフォーサーズだから」という理由で妥協する必要がないというイメージが定着し始めたのがこの頃だったように思う。
このE-M1 Mark IIは現在の筆者のメインカメラだ。その後ソニーα IIを買い足したが、カメラとしてよく練られた使い勝手と信頼性の高い画質によりメイン機の座は揺るがなかった。
E-M1 Mark II以降はブレークスルーを見ず・・・
しかしその後、パッとしない状況が続く。2019年には縦グリップを備えた完全なプロ志向機であるE-M1X、2020年にはE-M1 Mark IIIが発売されるが、残念ながらセンサーはE-M1 Mark IIと同じ物が搭載された。
画像処理エンジンや手ブレ補正などの機能面のアップデートは図られたが、肝心のセンサーが2016年以降据え置きという状況にファンは痺れを切らしていたとろこに、今回の事業譲渡の報道である。
映像事業譲渡でOM-DやPENは今後どうなる?
このように非常に独自な路線で進化を遂げてきたオリンパスのデジタル一眼カメラは、他に代替が効かない非常に多くの美点を有しており、何としてもその美点を損なわずに進化を続けて欲しいと願って止まない訳である。
そこでOM-DやPENの今後を現時点で分かっている範囲の情報で少し考えてみた。
エクイティ・ファンドによる買収
今回オリンパスが事業譲渡の交渉先として選んだのは、日本産業パートナーズ(JIP)というエクイティ・ファンドだ。エクイティ・ファンドは基本的には経営に参画して企業価値を上げ、売却してキャピタルゲインを得る機関である。
ここが過去のカメラ事業の売却と今回のケースとで根本的に特質を異にする部分で、過去の案件では、ミノルタのα事業を引き継いだソニーも、ペンタックス事業を引き継いだリコーも自らカメラ事業を営む事業会社であった。※リコーの前にHOYAとの合併を経ているが、こちらもファンドではなく事業会社であった。
つまりこれらの案件では基本的に、買い取った事業の有形・無形の資産を活用して既存事業とのシナジーを生むという活動が基本となる。
またもう一つの大きな特徴として、意思決定プロセスなどは買い取った側の母体企業のそれになるわけで、リコーやソニーなどの大企業が買取り母体である場合はそれらの大企業の意思決定プロセスや企業論理が適用される。つまり、αやペンタックス事業の場合、大企業は大企業のまま、というわけだ。
一方JIPのような投資ファンドによる事業買収の場合、企業価値を上げて売り抜ける事を最終目標としており、そこには負のイメージもあるかも知れないが、実は良い面も少なくない。
例えば既存事業とのシナジーや図体の大きな大企業の論理に振り回される必要が無くなり、柔軟でスピーディな経営が出来るという点。
或いはいずれ他の事業会社に再び売却される場合でも、無駄が排除されて買収シナジーを出しやすい(買い取り手が買い取り易い)形に整えられている可能性なども考えられる。
譲渡先は「カーブアウトのプロ」、日本産業パートナーズ
さて、今回のオリンパス営業事業の譲渡先である日本産業パートナーズといえば、過去にNEC傘下のISP事業者であるBIGLOBEを買収し、効率化を行うなどして企業価値を100億円上乗せした後にKDDIに売却したり、ソニーのコンシューマ向けPC事業であるVAIO事業を買い取りその後新しい成長戦略を軌道に乗せて見事に復活に導いた事で有名だ。オリンパス自身も過去に通信関連事業のITXをJIPを通じて売却している。
JIPはこのように企業が「非コア事業」と見做すなどして手放す事業を買い受ける、所謂カーブアウト案件を得意としている。
特徴的なのはその戦略で、一般的な「ハゲタカ・ファンド」が大幅な人員削減を含む大胆なリストラで財務諸表を健全化しクール(冷淡に)かつテクニカルに企業価値を上げた上で売却するのに対し、JIPのこれまでのやり方を見ている限り少し趣を異にしている。つまり、基本的な戦略としてはリストラによる見かけ上の財務再建が主眼ではなく、成長戦略に重きを置いているようだ。
そのためにJIPの過去の主だった案件では、まずその事業の成長を率いるのに相応しい経営者を外から連れてくるところから始まる。例えばBIGLOBEのケースでは、オリンパス傘下だったITXの立て直しで功績を残した中川社長に再び白羽の矢を立てている。また新生VAIOの初代社長には元日本ビクター社長でマーケティングに長けた吉田氏を起用している。いずれも財務畑のプロではなく事業のプロである。
従って今回も、どのような人物をトップに据えどのような成長戦略を描くのかがポイントになる。
以下、過去の事例からOM-DやPENの未来を少しだけ予想してみたいと思う。
「VAIO」の事例=主戦場を変えて成長
さて、ソニーのVAIO事業をJIPが買い取った事例は、今回のオリンパスの営業事業譲渡の件と類似点が多い。
まず、コンシューマ向けPC事業もデジカメ事業も共にスマートフォンの普及によって市場が縮小しつつあるという点。
次に、ある程度市場に浸透したブランド資産を持っているという点。VAIO程ではないかもしれないが、写真業界においてPENあるいはOM-Dのブランド力は上記の様に独自の強みの訴求に成功しているという点で強力である。
で、このVAIO復活のシナリオを振り返って一言で言えばB2B市場へのフォーカス、EMSやロボット事業への派生によって復活を遂げたという事になる。
コンシューマ市場では価格弾力性が高く、その値下げ合戦に勝つためにはボリュームを稼がなければ勝ち目はない。また、引き続きスマートフォンとの戦いを続けなければならない。もしくはAppleの様な高価でも買ってくれる強固なファン層の確立が必要になる。
VAIOはその道は選ばず、生産規模を大幅に縮小し法人市場にフォーカス、確実に法人向けの需要に応える事で高性能・高品質で売れる道筋を付けている。そしてその高い工業品質を活かしEMSや産業ロボット事業を利益の源泉とすることに成功した。
ではこれをPENやOM-Dに当てはめるとどうだろうか。実はこのVAIOの例になぞらえた未来予想は個人的にはあまりイメージが湧かない。
まず、カメラ業界において小規模生産で高性能・高価格路線を進むのはあまり現実的ではないと思われる。PEN、OM-Dのブランドの方向性とはむしろ逆であるように思われるためだ。
またB2Bへの転向についても、PCならばその需要はあるが、カメラについては「法人向け」の市場がどれほどあるだろう。映像機器ならばともかく静止画撮影機器となると殆ど無いのではないだろうか。
「BIGLOBE」の事例=企業価値を高めて同業他社に売却
NEC傘下のISP(インターネット接続)事業子会社であったBIGLOBEは2014年に日本産業パートナーズが買収し、その2年後の2016年にはKDDIが株式譲渡を受けて子会社化している。
固定ISP事業そのものはざっくり言えば斜陽産業だが、縮小していくパイの中でも市場シェアを押さえて固定資産を償却しフル活用すれば安定的に利益が得られる事業でもある。
この案件の特徴は、VAIOの様に主戦場を変えることによって再成長を図るのではなく、事業を効率化とMVNOなどへの参入により企業価値を高めたうえで同業他社であるKDDIに再び売却したという点である。
実はこのパターンが、比較的現実的であると共にオリンパスファンにとっては非常に夢を持てるストーリーではないだろうか。
JIPの元で、これまで培った小型軽量で高性能というPEN/OM-Dブランドの強みはそのままに事業の効率を高め、再び別のカメラメーカーに引き取られるというストーリーだ。
では、買い取るのはどこだろう?
PENとOM-Dの未来予想その①:パナソニックやソニー、富士フィルムなど他のカメラメーカーに合流
オリンパスの撤退により動向が気になる存在と言えばまずパナソニックだろう。オリンパスと共にマイクロフォーサーズ規格を盛り上げてきた立役者だ。筆者も、ボディはオリンパスだが、レンズはパナソニックのライカブランドのものをメインで使っている。
そのパナソニックによる買収については、難しい点がいくつかある。まず、パナソニックの戦略上の課題だが、同社は2018年以降、戦略としてB2Bへの注力を唱っている。そのような状況でコンシューマ向けのカメラ事業を買収するだろうか。
ただ、同社は2019年にライカLマウントに対応したフルサイズミラーレス市場に参入しているため、映像事業だけは投資を続けていく意向も見て取れる。しかし仮にそうであっても、LUMIX事業とPEN/OM-D事業の両方を資産として持つことは非常に冗長でありとても効率的とは言えない。
そして何よりユーザーとしては微妙な心境である。マイクロフォーサーズはオリンパスとパナソニックの二社が切磋琢磨していたからこそ魅力的であったからだ。まあそれでもパナソニックの様な優良企業が継承してくれるならうれしい事でもあるのだが・・・
またパナソニック以外のカメラメーカーについても可能性はある。だが既に一眼カメラ事業を持っている企業にとっては資産が余りにも冗長化し過ぎるきらいはある。ただ、もしかするとミラーレスに最も力を入れているソニーや富士フィルム辺りがオリンパスの技術に関心を持つ可能性はあるかも知しれない。フジの画作りとのPENの融合なんて案外面白いかも知れない。
PENとOM-Dの未来予想その②:レンズメーカーに売却
レンズ専業メーカーであるシグマとタムロンもマイクロフォーサーズ規格のレンズを提供している。それらのメーカーがOM-D/PEN事業の譲渡を受けてカメラボディ事業への参入を図るというストーリーも選択肢としては描けるだろ。
しかし、あまり現実的ではないだろう。提供はしているものの両社のマイクロフォーサーズ規格レンズの投入はお世辞にも積極的とは言えないため大きなシナジーは期待できない。企業体力的にも無理をしながらそのようなシナジーの描きづらい戦略を取るとはあまり思えない。
PENとOM-Dの未来予想その③:カメラ関連以外の企業への売却
これも少し考え辛いかも知れない。スマホの普及によるデジタルカメラ市場の縮小は傍から見ても可哀想になるほどであり、そこへ写真産業と縁がなく成長を描くための技術・ノウハウも無い企業があえてリスクを犯して参入するとは考えづらい。
またユーザーとしても心配だ。大事なOMやPENブランドを、あまり知らない人が余計な事をしないで、と思ってしまう。
PENとOM-Dの未来予想その④:再びオリンパスへ
これはもう願望と言われても仕方ないが、この選択肢はOM/PENのファンなら考えずには居られないだろう。
何しろ、オリンパスだから「OM」なのであり、オリンパスの「PEN」なのだから。
OM-Dのボディに「CANON」って書いてあったら、あなたは買うだろうか?
過去に、一旦ファンドに売却した事業を後で買い戻すなどという珍事が存在したのかどうかは分からない。恐ろしく資本効率の悪い判断なので通常は考えにくい。
しかし、やはりオリンパスのOM-D、オリンパスのPENであって欲しいというのは多くのファンが願うところだろう。
差し当って気になる事:OM-DとPENの新製品から「OLYMPUS」ロゴは消える?
上でくだくだと未来予想を展開してみたが、そんな未来のことは考えてみたところで誰にも分からない。数年後、どの会社がどのような事業状況にあるかによって想像も出来ない事が起こるだろう。
しかし、近い将来かなりの高確率で起こり得る事として、「オリンパスから独立した新会社が新しいOM-DとPENブランドの製品を発売する」という事が考えられる。冒頭でリンクを張った同社の報道発表にも以下の様にある。
新会社は JIP の支援を得ることにより、オリンパスがこれまで培ってきた革新的な技術とユニークな商品開発力を活用し、OM-D や、PEN、ZUIKOなどをはじめとしたブランドを継承する事業体として、お客様にとってより良い製品 / サービスを提供するとともに、事業に携わられている役職員の方々にとってもより働き甲斐のある会社とすることを通じて、事業の持続的な成長を実現します。(中略)映像事業の分社化及びJIPへの譲渡後も、新会社が構造改革後の研究開発・製造体制を維持し、引き続き高品質かつ信頼性の高い製品を提供し続けます。
その時、カメラのボディには「OLYMPUS」のロゴはあるのだろうか?
例えばペンタックスのケースでは、写真事業専業の「ペンタックス株式会社」そのものがHOYAと合併し、その後「PENTAX事業」がリコーに継承されたため、他に「PENTAX」ブランドを保有する会社は存在しなかった。それゆえ会社名と関係なく「PENTAX」ブランドは今でも存在し続けている。
一方ミノルタからソニーに移った「α」ブランドは「MINOLTA」ロゴとは決別する運命になった。
今回のオリンパスのケースでは、JIPの新会社が「OLYPMUS」ブランドの使用権を持つ事が出来る(あるいは使用料を払う)ことになるのかどうかが焦点となる。今のところオリンパスの報道発表を読む限り「OM-DやPEN、ZUIKOなどをはじめとしたブランドを継承する事業体」とあるだけなので「OLYMUS」ロゴがどうなるのか、今後の続報を注視したいと思う。
まとめ
スマホ普及によって長らく危機が叫ばれてきたカメラ産業だが、その大きな分岐点はなんと筆者が長年連れ添ってきたオリンパスから始まってしまった(てっきり最初に痺れを切らすのはニコンかペンタックス辺りかと・・・失礼(笑))。
しかし、ある意味早い段階で手を打ち、事業価値が付かなくなる前に再成長を担ってくれる買い取り手を見つけた英断であったと言う事も出来るかも知れない。
ファンとしては数年後にそう言われる事を願って、引き続きOM-Dで写真を撮りながら今後に期待するのみだ。
この報道を目にした当初は「投資ファンドに売却!?これは終わったか・・・」と不安を抱いたが、JIPの過去の事例や手腕を見ると、どのような成長戦略を描いてくれるのか楽しみでもある。
今後どうなって行くのか、楽しみにが一つ増えたと思う事にしよう。
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