OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (42mm, f/3.9, 1/50 sec, ISO6400)
昨年末にα7IIと同時に購入したのは、キットズームではなく標準単焦点のFE 50mm F1.8 (SEL50F18F)でした。メイン機として使っているマイクロフォーサーズのパナライカ25mm F1.4レンズよりも浅い被写界深度を味わうには、F3.5始まりのキットズームでは意味がないと考えたためです。
α7II用のレンズはこれ一本しか持っておらず付けっ放しで使用しており、だいぶ特徴が分かってきた気がするのでレビューしてみたいと思います。
といっても何の変哲もない撒き餌の標準単焦点レンズ、これといって飛び抜けて目立った特徴が有るわけでもないので、基本的なスペックなどはそこそこにして、使っていて感じた長所や気になる点に絞ってご紹介したいと思います。
結論を少しだけ申し上げると、多少不器用なところはあるものの、大口径単焦点らしい独特な世界観を2万円台で味わえるこのレンズ、とても良い一本だと感じています。
類似・関連レンズとの仕様比較
ではまずどのような位置づけのレンズなのかを概観するために、同じフルサイズミラーレス規格のニコンZマウントとキヤノンRFマウントの標準単焦点レンズ(F1.8の方)やEマウントの準標準レンズであるFE35mmあたりと基本的なスペックを比較してみます。キヤノンはまだRFマウントの50mmレンズを発売していないため35mmレンズのみとの比較です。
SONY FE 50mm F1.8 | SONY FE 35mm F1.8 | Nikon NIKKOR Z 50mm F/1.8 S | CANON RF 35mm F1.8 マクロ IS STM |
|
焦点距離 |
50mm | 35mm | 50mm | 35mm |
最大径×長さ | 68.6 × 59.5 mm | 65.6 × 73 mm | 76.0 × 86.5mm | 74.4 × 62.8 mm |
重量 | 186g | 280g | 415g | 305g |
レンズ構成 | 5群6枚 | 9群11枚 | 9群12枚 | 9群11枚 |
最大撮影倍率 | 0.14倍 | 0.24倍 | 0.15倍 | 0.5倍 |
最短撮影距離 | 0.45m | 0.22m | 0.4m | 0.17m |
実勢価格(2020年9月現在) | 30,000円前後 | 70,000円前後 | 70,000円前後 | 65,000円前後 |
こうして見ると、FE 50mm F1.8の小型軽量具合が際立っていますね。
一日中首にぶら下げて街中やキャンプ場などを歩いていても苦になりません。これがこのレンズの最大の武器かも知れません。
もう一点、価格も図抜けてお手軽になっています。同じ「撒き餌レンズ」と言われるキヤノンのRF35mmに比べても半額以下。とりあえず一本買っておいても損は無いか、と思えてしまうくらいです。
その代わり、使われているレンズの枚数も簡易ですし、最大撮影倍率も控えめなものになっていますが、従来の50㎜標準レンズってこれくらいのスペックなので特筆するほど劣っているとも言えません。
FE 50mm F1.8はとにかく、小さく軽い
開封した瞬間の感想がこれです。上の仕様比較でも小型軽量さが際立っている点には触れましたが、α7IIに付けた時のコンパクトさは、マイクロフォーサーズ機に25mmの単焦点レンズを付けた時のそれにすら匹敵するものでした。
マイクロフォーサーズボディ+標準レンズとの比較
下の写真はマイクロフォーサーズ規格のオリンパスE-M1 Mark II+パナライカ25mm F1.4の組み合わせとの比較です。
Apple iPhone XS, (4.25mm, f/1.8, 1/50 sec, ISO400)Apple iPhone XS, (4.25mm, f/1.8, 1/50 sec, ISO320)
実はこの組み合わせだと実重量はα7II+FE50㎜ F1.8の方が若干軽かった程です。詳細はこちらの記事をご覧ください。
AF-Sは遅く、しばしば迷う
はっきり言って遅いです。また、少し暗かったりコントラストの低い被写体だと、行ったり来たりします。イメージとしては、「ジー、ジッ、ジ」と言う感じ。
マイクロフォーサーズの「ピッ」と合焦する感覚に慣れていたため購入最初は永遠に感じました。また、元来フルサイズ機はレンズの重量故か全般的にAF速度はマイクロフォーサーズに比べるとやや遅い(「シュッ」という感じ)ですが、それと比べても明らかに遅いです。
これは部分的にはα7IIのせい(AF検出最低照度は-1EV)なのですが、店頭で他のレンズを試すと割と快適(「シュッ」に近い)なので、このレンズの短所であるようです。
なので動き回る子供などを撮るようなケースには不向きです。ただし抜け道があり、そのような場合でも次で触れるAF-Cが意外と使えます。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (29mm, f/3.7, 1/60 sec, ISO4000)
AF-Cは意外と使える
そう、意外にもAF-Cは結構使えます。割と食いつきます。しかもあまり迷わない。
子供が普通に遊んでいるところはもちろん、公園のブランコを漕いでいるところを間近で撮るという極めて難しいシチュエーションにも割と歩留まり良くよく対応してくれました。
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/3200 sec, ISO100)
なので、子供なんかを撮る時は、止まっている時は特にAF-Sを使わずAF-Cにして、AFエリアをワイドにして被写体を自動検出するモードにして被写体をキャッチしてます。
ただし、そこでやや物足りないのが今度はα7IIの像面位相差AFのエリア面積。下のように画面の中心付近しかカバーしてないので、ちょっと被写体が脇に寄ると捉えられなくなります。α7IIIなどなら問題ないでしょう。
この手のレンズらしく、寄れない
得てして50mmの大口径単焦点レンズは寄れない事になっていますが、このレンズもご多分に漏れません。
最短撮影距離は45cm。昔から何故かこの手のレンズは皆「45cm」ですよね。なんでだろう。少しくらい技術の進歩があっても良さそうなのに。
ちなみにニコンのZ50mm F1.8の最短撮影距離は40cm。ちょっと負けてます。
まあ、Z50mm F1.8方は7万円台、一方FE50mm F1.8は2万円台ですからね。あまり文句言っちゃいけません^^;
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/1250 sec, ISO100)
なので、テーブルフォトなどは滅法弱いです。結構のけぞるようにして距離を取らないと合焦しません。もっとも、撮影さえ出来れば周囲をボカすことが容易なのでそれなりに絵にはなります。
ボケは素直。少し角ばるが美しい
さて、そのテーブルフォトでボケの感じを見てみます。
SONY ILCE-7M2, (50mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO1000)
ボケはとても自然な感じです。2万円台の撒き餌レンズとは言えさすが単焦点。
なお、上の写真はF2.8まで絞った状態ですが、絞ると少しだけ角がありますね。円形絞りなのですが、絞り羽根が7枚と少ないためでしょう。しかしそれは別に悪いことではないので、絞るとボケに少し角が出来ることを特徴として覚えておけばよいでしょう。
FE 50mm F1.8の表現力と作例
表現力
このタイプの単焦点レンズとして際立った特徴というのはありませんが、それでもやはり大口径単焦点レンズ、ズームには出せない味を世界観を見せてくれます。
F1.8という明るさは大三元ズームでも出せない浮遊感と立体感で主役を引き立たせてくれます。
また、50mmという焦点距離はとても自然で、寄って望遠風に撮っても、引いて広角風に表現しても、わざとらしい圧縮効果やパース(遠近感)が出にくく、どこか優しく懐かしい、むしろ新鮮な雰囲気を見せてくれます。
作例
では何枚か作例をご紹介します。Lightroomで現像しているので色味などは調整してあるものもありますが、FE50mm F1.8を使うとこんな雰囲気の表現が出来るんだ、という事をお伝え出来ればと思います。
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/100 sec, ISO100)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/2, 1/320 sec, ISO800)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO250)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/400 sec, ISO100)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/400 sec, ISO100)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO160)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/400 sec, ISO50)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/250 sec, ISO50)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/11, 1/100 sec, ISO50)
まとめ:大三元ズームでも出せない味を手軽に
50mmの大口径単焦点レンズが魅せてくれる表現は独特です。
明るいF値による、独特の浮遊感、立体感。それに、50mmという焦点距離が魅せてくれる、今となっては新鮮な懐かしさと優しさ。それは高価な大三元ズームでも味わえない世界観。
FE 50mm F1.8は、それをたったの2万円台で味わえる逆張りの銘玉、と言えるかもしれません。(ちょっと大げさですが、間違いなくコスパは高いです^^)
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (31mm, f/3.7, 1/60 sec, ISO4000)
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