こんにちは。α7CおよびOM-D E-M1 IIをメインカメラとして使いつつ、日々の記録はiPhone 12Proで補完している10max(@10max)です。
スマホによるコンピュテーショナルフォトのクオリティも年々向上しているものの、iPhone 12Proについては(当たり前ですが)デジイチと比べると明らかに画質が劣るため、デジタル一眼カメラとの補完関係は比較的明確であると同時に、言い換えれば「ここデジイチ持って来てればな・・・」と思う場面も少なくありません。
そのiPhone 12シリーズのリリースから3年経ち、カメラ性能も飛躍的な進化を遂げたと言われるiPhone 15シリーズ。さていかがなものか。
本記事ではまず撮影機材としてのiPhone 15/15Proの性能を、先代のiPhone 14Proおよび、筆者が現在使っているiPhone 12Proとの比較を交えながら読み解き、最後にデジタル一眼カメラのサブ機材としての位置づけや補完関係を考察しつつ、さらに自分の背中を押していきたいと思います。まあ結局ただ買いたいだけ
(後日追記)買いました。
iPhone 15 Proのカメラ作例・レビューはこちら。
iPhone15Pro, iPhone15, iPhone14Pro, iPhone12Proの撮影機能比較
撮影機能として大きく以下の2部に分けて整理・比較していきます。
- センサー・レンズ周りの物理的なカメラ性能
- ソフトウエア技術等による画像処理機能
センサー・レンズ性能比較 – 15Proと14Proはほぼ共通
まずは物理的なカメラそのものに関する性能を、以下のポイントで比較します。
- 焦点距離
- F値
- 画素数(MP=百万画素)
- センサー画素ピッチ
- 手振れ補正方式
なお、この表での画素数は、あくまでもセンサー自体の画素数であり、出力される画像の解像度となると少し話は違います。ちょっとややこしい話ですが、後で説明します。
iPhone15Pro | 15 | 14Pro | 12Pro | |
超広角 | 13mm
F2.2 12MP 1.4μm |
13mm
F2.4 12MP ?μm |
13mm
F2.2 12MP 1.4μm |
12mm
F2.4 12MP ?μm |
広角 | 24mm
F1.78 48MP 1.22μm G2センサーシフト |
26mm
F1.6 48MP ?μm センサーシフト |
24mm
F1.78 48MP 1.22μm G2センサーシフト |
26mm
F1.6 12MP 1.4μm 光学式 |
望遠 | 77mm
F2.8 12MP 1.0μm 光学式 |
ー | 77mm
F2.8 12MP 1.0μm 光学式 |
52mm
F2.0 12MP 1.0μm 光学式 |
ここから分かることは、まず15Proのカメラ(レンズ、センサー)はいずれも14Proから大きく変わっていないということ。完全なキャリーオーバーかどうかはまだ分かりません。
また、メインセンサーの画素ピッチが、iPhone14Pro以降では1.22μmと、12Proの1.4μmと比べると狭くなっています。しかし、実はiPhone15シリーズや14Proでは、センサーの画素数自体は48MPですが、クアッドピクセルセンサー技術により4つの画素を1つにまとめて光を多く取り込むと言うことをやっており、iPhone14Proでは実質的に12MP相当、画素ピッチは2.44μmと、むしろ拡大しています。ソニーで言うところの「ピクセルビニング」と同様の技術と思われます(画素ピッチがソニーのXperia V1と全く同じなので、もしかしたらセンサー含めてそのものかも)。
なお、この後触れる通りiPhone15シリーズでは単純に12MP相当で出力される訳ではなさそうです。ここが15Proの14Proからの大きな進化ポイントとなります。
最後に今使っているiPhone12Proからの差分として、実は12Proの望遠レンズは52mmなので、望遠というよりも実質標準レンズでしたが、13Proから焦点距離が77mmへと伸びています。これはカメラの性能としては、被写界深度(自然なボケ)などの点で非常に有り難いです。
画像処理・ソフトウエア機能比較 – 24MP高解像撮影と次世代ポートレートが目玉
上のレンズおよびセンサーが生成する画像を、ソフトウエア処理する部分の機能・性能、所謂コンピュテーショナルフォト関連の比較です。ここはSoCの処理性能が如実に効いてくる部分であり、iPhone 15Proに俄然有利な土俵になります。
iPhone15Pro | 15 | 14Pro | 12Pro | |
クロップによる標準画角 | 48mm | 52mm | 48mm | ー |
デフォルト24MP高解像撮影 | ◯
24mm, 28mm, 35mm |
◯ | ー | ー |
デジタルズーム | 15倍 | 10倍 | 15倍 | 10倍 |
次世代ポートレート | ◯ | ◯ | ー | ー |
ナイトポートレート | ◯ | ー | ◯ | ◯ |
Apple ProRAW | ◯ | ー | ◯ | ◯ |
48MP HEIF | ◯ | ー | ◯ | ー |
超広角マクロ | ◯ | ー | ◯ | ー |
LiDARスキャナ | ◯ | ー | ◯ | ◯ |
スマートHDR | 5 | 5 | 4 | 3 |
一番上の「クロップによる標準画角」というのは48MPセンサーが導入されたiPhone14シリーズから登場した機能で、フルサイズ一眼カメラのAPS-Cクロップみたいなものです。広角用センサーの4800万画素のうちの中央の1200万画素だけを使ったクロップによる2倍ズームにより、標準域である50mm辺りを画質劣化なく(解像度は落ちますが)カバー出来ます。
また、緑字の項目が、今回のiPhone15シリーズより新たに加わった機能です。目玉となるのは、24MPでの高解像度撮影と、次世代ポートレート機能です。この後詳しく見ていきます。
目玉①:24MP撮影が熱い – 解像度と画質の良いとこ取り
今回のiPhone15シリーズで新しく登場したカメラ関連の目玉の一つのが、デフォルト24MPでの高解像度撮影。これがA16 / A17チップの腕の見せどころとなっています。
まだ詳しい仕組みなどは明らかにされていませんが、Apple公式HP等の発表内容を読み解きながら内容を推察していきます。
従来の2倍の解像度と画質の料率を実現する24MP撮影
Proのラインナップのために作られた48MPメインカメラは、コンピュテーショナルフォトグラフィのパワーを活用して、新しい24MPの超高解像度をデフォルトとしてユーザーにさらなる柔軟性を提供し、保存と共有に適した実用的なファイルサイズで驚くほどの画質をもたらします。
新しいPhotonic Engineは、超高解像度の画像と最適な量の光を取り込んだ画像からベストなピクセルを組み合わせます。これまでの2倍の解像度である24MPで自動的に撮影できるので、日常的な写真でも一段と細部までとらえられます。
出典:Apple公式HP
上の説明から分かることは、従来iPhone14Proでは12MP相当で出力されていたものが、iPhone15シリーズではデフォルト24MP相当という2倍の高解像度での出力が可能、ということ。
その仕組みとして上の内容から推察されるのは、センサーの画素数48MPをフルに使った高解像度画像と、クアッドピクセルセンサーによる高画質画像とを組み合わせることで、美味しいとこ取りをしているのではないか、という事。
ここでいう「画質」とはダイナミックレンジや色再現性などのことで、デジタルカメラ界隈にて、高画素化と画質のトレードオフは長年の悩みであり、その課題へのブレークスルーが(裏面照射CMOSなどの技術向上はあったものの)中々現れない状況が続いていましたが、これは一つの大きなブレークスルーとなるのかも知れません。ただ、複数の画像を合成するHDR的な印象もあり、写真を仕事・趣味とするクラスターの間で(あるいはカメラメーカーとして)受け入れられるかどうかは、技術的な詳細が分かるまでは読めないところです。
いずれにしていも、どんな絵を見せてくれるのか、これは中々楽しみ・・・!
24mm、28mm、35mmの3種類の焦点距離切替え機能
さて読み解きを続けます。
メインカメラでは、ユーザーは24mm、28mm、35mmという3つのよく使われる焦点距離を切り替えることができ、その中の一つを新しいデフォルトとして設定することもできます。
出典:Apple公式HP
上記のいいとこ取りの24MP撮影機能を使うことで、メインカメラである24mmレンズを、画質劣化すること無く28mmあるいは35mm相当の画角で使用することが出来、またメインカメラのデフォルトの画角をそれらの中から選択することも可能なようです。
Appleは「焦点距離を切り替える」と表現していますがこれは恐らく分かりやすくするためであり、実際にはレンズの焦点距離は変わっていません。これはどちらかと言うと「センサーサイズフォーマットを変化させることにより画角を変化させる」のに近い効果が得られると考えられます。具体的な例でいうと、「同じ50mmレンズでも、20MPフルサイズセンサーの場合に比べて20MPマイクロフォーサーズセンサーでは画角が半分になる(望遠レンズになる)」というのに似ています。
もちろんそれを一つの48MPセンサーでやってのけているのだから技術的には全く異なるのですが、光学的な写真への影響としては、焦点距離が変わらないのだから被写界深度なども変わらないわけで、「解像度を変えずにトリミングしている」のに近い効果(いや、それ自体がぶっ飛んでるけど)だと考えられます。
個人的には24MPもあれば、24mmで撮っておいて後から多少トリミングすればよい気がしますが、単焦点レンズを複数持ち歩くような感覚は楽しそうな気もします。
48MPフル解像度でのHEIF出力
メインカメラは、48MPのProRAWに加え、解像度が4倍高い48MPのHEIF画像にも対応します。
出典:Apple公式HP
14Proまでは48MPの解像度をフルで活かすにはApple ProRAWで撮影するしかありませんでしたが、高圧縮のHEIFフォーマットでも48MPが享受出来るそう。なお、14ProでもiOS17にアップデートする事でこの機能が使えます。
48MPのRAWファイルは非常に重いので、HEIFで出力できるのは有り難い感じもしますが、RAW現像のような補正への耐性は犠牲になっているでしょうから、それなら24MPでいいような気がしますし、どのような使い道があるのかまだ良く分かりません。
目玉②:次世代ポートレート機能が熱い – ボケ追加機能自体の進化に期待しつつ
もう一つの目玉が、進化したポートレート機能。まずはApple公式より引用します。
初めて、ユーザーがポートレートモードに切り替えなくてもポートレートを撮影できるようになります。フレーム内に人、犬、猫がいる時、またはユーザーがタップしてフォーカスした時に、iPhoneが自動で深度情報を取り込むので、ユーザーはあとからiPhone、iPad、またはMacの写真アプリで、写真を驚くほど美しいポートレートに変えることができます。さらにクリエイティブなコントロールのために、ユーザーは写真の撮影後に焦点を調整することもできます。
簡単に言えば
- 通常モードで普通に撮った写真に後からボケを追加出来る
- ピントの位置を後から変更出来る
と言うことですね。例えば下はApple公式HPより引用した動画ですが、このようなピント位置の変更が、後から写真アプリで行えたりする訳です。
仕組みとしては、恐らく撮影時に複数のピント位置(被写界深度)の画像を生成しておくことで、後からの変更やボケの追加が出来るようになるという、これもA17チップの処理能力の為せる技なのかな、と思います。これにより事後での写真の見映え加工の幅が大きく広がります。
ただ、筆者個人的には、ポートレート機能自体を未だにあまり信頼していないので、手放しには喜べません。
例えば下の写真は筆者のiPhone 12Proのポートレート機能で撮影した写真ですが、明らかに不自然です。カップの後ろ側のフチと背景との境界や、カップの取っ手の辺りも違和感が出てしまっています。また、一応iOS16から前ボケの演出にも対応しましたが、実際に使ってみると未だ不安定です。
この辺り、もしも演算処理能力の進化などにより改善しているようであれば、使い道はもっと出てくるかも知れません。
Apple iPhone 12 Pro, (6mm, f/2, 1/120 sec, ISO32)
地味に「新しいアクションボタン」に期待
ちょっとカメラ機能とは違うのですが、撮影環境の改善に地味に寄与してくれそうだと期待しているのが「新しいアクションボタン」。ここにカメラの起動を割り振ることが出来るようになります。
今までは、ロック画面の右下のショートカットを長クリックしてカメラを起動していましたが、これが案外使いにくくて。突然のシャッターチャンスに慌てて押そうとすると少しズレてFace IDが立ち上がってしまって「いやそっちじゃねえし!」みたいになったり。
これが新しいアクションボタンなら、「スマホを横方向に向けつつ(基本横構図で撮るので)アクションボタンでカメラを起動」までを同時に1アクションで行い、「そのままアクションボタンでシャッターを押す」という非常にスムーズな流れを作れるのでは、と期待しています。スマホでこそ突然のシャッターチャンスを捉えたい事が結構ありますからね。
まとめ:デジタル一眼との使い分け・補完関係はどうか
今回のiPhone 15シリーズのカメラ機能の進化は、48MPセンサーとクアッドピクセル技術の合せ技である24MP撮影をはじめ、今後のデジカメの技術に一石を投じる(いやずっと投じ続けて来てるんだけど、特に大きい石)進化なのではないか、と感じています。
ただ、どこまで行っても物理的・光学的に越えられない壁はあります。演算処理により画素数と画質との相反関係をある程度克服したとしても、例えば光学的な被写界深度の浅さによる自然なボケ味などは、センサーサイズの壁を越えない限り実現できません。下記記事では、例え安価で暗いレンズであってもフルサイズカメラの画質には価値があることを改めて確認しました。
つまり、当面デジイチとスマホの補完関係は成り立ち、スマホの画質が向上したとしてもデジイチが無駄になることはないと考えています。
であれば、デジタル一眼カメラを持ち合わせていない、あるいは出しにくいケースで、画質に妥協せずスマホで撮影出来るようになるのは大変喜ぶべきこと。特に今回のiPhone 15シリーズの24MP撮影の様に、ソフトウエア上の処理だけではない本質的な画質向上(と表現して良いのかはとても難しいのですが、何となく伝わりますかね)は大歓迎。ソフトウエアだけで無理に加工された写真は後処理の余地が殆どないのです。
筆者の場合特に幸いなことに、給与の一部をドル建てで支給されているため、iPhone 12Proから実質据え置き価格で買い替えられます。えっとベトナムでのiPhone15シリーズ予約開始はいつだっk(以下自粛)
記事を書きながら、早くiPhone 15Proの実機を手にしたい欲に駆られてきましたよ。これこそが本記事の最大の目的
ということで、iPhone 15シリーズ検討中のどなたかのご参考になれば幸いです。
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