こんにちは。2年ほど前にα7Cを買って大変満足している10max(@10max)です。
突然哲学的な話で恐縮ですが、「満足」って一体何でしょうね。
人間の欲望には際限がありません。上を見ればまた上へ・・・「満足」などと言う境地は果たして存在するのでしょうか。最終的には出家して一切の煩悩を断ち切るしか無いのかも知れません。
だって、ニコンがこんなものを発表してしまうものだから・・・!
先日ソニーがα7C IIを発表し、続いてAppleがiPhone 15シリーズを発表し、もう筆者の物欲は満杯で何物も受け付けられない状態であるはずなのに、ここ数日Z fの先行レビュー記事ばかり眺めている訳ですよ。
ただ、眺めているうちに、このZ f、ちょっと・・・いや、かなり気になる事が出てきました。本記事では筆者の現愛機であるα7CとZ fとを比較しつつ、買い替えを悩んでいる理由を綴りたいと思います。
この辺り、ニコンの中の人たちは一体どう思っているのだろう?
ニコン Z f – 元々こんなカメラが欲しかった
もともとこういうカメラ、大好物なんです。
分厚いグリップのついたボテッと丸っこいボディよりも、シンプルでコンパクトかつ直線的でメカニカルなカメラが好き。ペンタックスのMZ-3を一時期所有していましたが、あれは良かった。
理想を言えばかつて義父に無期限貸与してもらったニコンFEのようなデザインでした。
なのでオリンパスからE-410が発表された折には居ても立ってもいられずヤマダ電機に走りましたよ。クラシックと言うのとはやや違いますが、一番理想に近かった。これが初めて手にしたデジタル一眼レフカメラです。
なのでその後フジフィルムから発売されたX-Tシリーズは何度もお触りに行きました。ただ、その当時使っていたマイクロフォーサーズからマウントを乗り換えるほどの動機は得られませんでした。APS-Cではセンサーサイズもあまり変わらない上に、ボディのコンパクトさや堅牢さ、パナライカも含めた安価で豊富なレンズラインナップなど、自分にとってはマイクロフォーサーズの魅力が勝っていました。
その後ソニーα7IIをOM-D E-M1 Mark IIのサブ機として迎えてフルサイズ機に足を踏み入れ、その絵に惚れ込んでやがてα7Cをメイン機とし、「コンパクトで高性能なフルサイズ」の価値を知った今や、いかにデザインが魅力的とは言えAPS-CのフジX-TシリーズやニコンZ fcなどの入り込む余地はありませんでした。
SONY ILCE-7M2, (61mm, f/5.6, 1/60 sec, ISO6400)
が、そこにZ fです。上の経緯からすると、Z8にも匹敵する高性能とFM2オマージュのヘリテージデザインを一体化させたZ fは、「待ち望んでいた1台」と言えるのです。
が、よくよく中身を見ていくうちに、Z fを手放しでは迎え入れる気持ちになれない、いくつかの気になる点が出てきました。
ニコン Z fとソニーα7C、α7C II – 主要スペック比較
まずは主な仕様を横並び比較します。Zfとα7Cに加え、参考までにもう一つの買替え候補であるα7C IIも比較対象に加えたいと思います。
この中で優れている項目には緑マーカー、劣っているものは赤マーカーを引いています。
Z f | α7C | α7C II | |
本体寸法mm(W/H/D) | 144×103×49 | 124.0 x 71.1 x 59.7 | 124.0 x 71.1 x 63.4 |
本体重量g
(バッテリー、カード含) |
710 | 509 | 514 |
有効画素数MP | 2450 | 2420 | 3410 |
カードスロット | ダブル
SD系/microSD系 |
シングル
SD系 |
シングル
SD系 |
ボディ手振れ補正 | 5軸8段 | 5軸5段 | 5軸7段 |
AF方式 | 位相差・コントラスト | 位相差・コントラスト | 位相差・コントラスト |
AF測距点数 | 273点 | 位相差:693点
コントラスト:425点 |
位相差:759 |
AF検出範囲 | -10~19EV
ISO 100、f/1.2 レンズ |
EV-4 – 20
ISO100、F2.0レンズ |
EV-4 – 20
ISO100、F2.0レンズ |
トラッキングAF | 〇 | 〇 | 〇 |
瞳・被写体認識AF | 瞳+9種類 | 瞳+2種類 | 瞳+7種類 |
ISO感度 | ISO100~64000
(拡張:50、204800) |
ISO100-51200
(拡張:50、204800) |
ISO100-51200
(拡張:50、204800) |
シャッター | メカ・電子 | メカ・電子 | メカ・電子 |
シャッター速度 | 1/8000~30、バルブ | メカ:1/4000-30、バルブ
電子:1/8000~30 |
メカ:1/4000-30、バルブ
電子:1/8000~30 |
EVF
– 画素数 – 視野率 – 倍率 |
369万ドット
100% 0.8倍 |
236万ドット
100% 0.59倍 |
236万ドット
100% 0.7倍 |
背面モニター | バリアングル
3.2型 210万ドット |
バリアングル
3型 92万ドット |
バリアングル
3型 104万ドット |
撮影可能枚数 | ファインダー:410枚
モニター:430枚 |
ファインダー:680枚
モニター:740枚 |
ファインダー:530枚
モニター:560枚 |
実勢価格 | 27万円前後~ | 22万円前後〜 | 27万円前後〜 |
まず、本体のサイズと重量に関してはα7Cシリーズの方が一回り軽量コンパクトであることが分かります。Zfは200グラム近く重くなりますが、素材に真鍮を使ったりしている事も影響しているのでしょう。
また、バッテリーの持ちもα7Cと比べるとZfは200枚以上少ないです。実使用環境ではここまで差が出るのかどうかは分かりませんが、α7Cは小型の割に(α7 IIIなどと共通のバッテリーを採用するなど)頑張っていると言えます。実際α7Cのバッテリーの持ちは良いです。
一方でカメラとしての性能では、Z fがが勝る部分が多く見られます。画素数的にはZ6IIベースかと思われましたが、実際にはZ8やZ9の性能を多く受け継いでおり、非常に充実した内容になっています。デザイン重視かと思っていたので、これには驚かされました。
また、筆者は動画については明るくないので比較を省略していますが、静止画に振ったDfとは異なり、動画性能もかなり気合の入ったものであることは他の記事でも多く触れられています。
価格的にも、蓋を開けてみれば27万円を切る初出価格で、性能とデザインを考えても前評判よりやや手の届きやすい水準で、大いに惹かれたのですが・・・
しかしよくよく検討を進めるうちに悩ましい点が見えてきたのです。
Z fに惹かれつつ煮え切らない理由 – 疑問の残るダイヤル操作系
一番引っ掛かっているのが、ニコンZ fの一番の売りであるはずのところの、メカニカルダイヤルのインターフェースなのです。ちなみにこれはZfcユーザーや、ニコンZシリーズユーザーからすると既知の話かも知れませんが、筆者はニコンから遠ざかっていたので今回初めて気付きました。
「A」が無いダイヤルと、「PSAM」レバーの併存という混沌
下の画像はニコンZ fの天板部です。メカニカルなダイヤルにより直感的かつ視覚的に設定を操作・確認出来る事が魅力だと思っていたのですが、よく見るとシャッター速度設定ダイヤルに「A」の項目がありません。そして他のZマウントレンズ同様、今回のZ f用キットレンズにも絞りリングがありません(従って物理リングで「A」は選べない)。
そしてあろうことか、天板左側には「P、S、A、M」レバーが設置されています。各ダイヤルに「A」が無いのだから当然と言えば当然です。
この操作系がどうもモヤモヤするのです。
何を言っているのかと言うと、筆者が想像していたのはフジフィルムのX-Tシリーズの操作系でした。下の写真です。
X-Tシリーズの操作系は、絞り、SS、ISOのうち「カメラ任せにしたいものだけ「A」にセットする」という極めてシンプルな操作体系になっています。「自分は絞りだけ任意に設定したい」場合にはISOとシャッタースピードはAにします。加えてISOも自分で決めたい場合には任意のISOになるようダイヤルを回します。それだけです。
Xマウントシステムの場合、全てのレンズに絞りリングが搭載されているため、初めからこの操作系を想定していた事が伺えます(もちろんコマンドダイヤルでの操作も可能)。
しかしニコンZ fの操作系は少々複雑で直感的ではありません。
例えば「絞り優先」にしたければ、左側の「PSAM」レバーを「A」にした上で、コマンドダイヤルで絞り値を設定するのですが、こうなると問題がいくつか出てきます。
- まず撮影モードを選んでから絞り値を選ぶ2アクションが必要
- シャッタースピードダイヤルの数値は無意味(実に紛らわしい)
- 電源ONにしないと絞り値が見えない
これでは、せっかくの直感的で視覚的なはずの機械式ダイヤルインターフェースが台無しです。
特に、ダイヤルの数値が撮影モードによって有効になったり無意味になったりするのではむしろ誤認を招きかねず、瞬時に設定を視認できるUIとは程遠いと言わざるを得ません。
それであれば、むしろソニーαシリーズのようなモードダイヤルとコマンドダイヤルだけのシンプルなUIで、絞り値やシャッタースピードはモニターもしくはファインダー内で確認すると決まっている方が間違いが少ないかも知れません。
その点フジのX-Tシリーズは「物理的なダイヤルの設定値が常に真」という最高に視認性の高いUIです。これがZ fに欲しかった・・・。
「ISOオート」がメニューに潜る謎
また、これも理由が全然分からないのですが、ISOダイヤルにA(AUTO)が無く、ISOオートにするは「C」を選んでコマンドダイヤルとモニターで「ISO AUTO」に設定しなければなりません。
これはZfcの時にも似たような問題で紛糾した経緯があり、Z fcのISOダイヤルには「C」すら無く、ISOオートを選ぶためにわざわざメニューに深入りしなければならなかったので、Z fでは多少改善されたと言えますが、なぜダイヤルに「A」を設置しなかったのか、謎過ぎます。
ニコンの本気度にやや疑問
また、せっかくZ f用のキットレンズZ f 40mm f/2を同時投入したのに、絞りリングを搭載せず相変わらず評判の悪いコントロールリングを付けてきた辺りにも、ニコンの姿勢に中途半端さを感じます。
ソニーがα7C用にキットズームのSEL2860を出してきた時にはソニーの本気を感じましたが、今回はちょっとそういうのを感じないんですよね。
そんな事を考えているうちにふと気づいたのですが、ニコンのZ fのページでは、メカニカルダイヤルによる「操作性の高さ」については一切アピールされていないっぽいのです。
例えばフジのX-T5の公式HPには以下のようにあります。
3ダイヤルオペレーション
カメラの軍艦部に、ISO感度/シャッタースピード/露出補正をコントロールする3つのダイヤルを搭載。多くのXFレンズに搭載する絞りリングと合わせ、電源を入れる前に露光に関する設定全てが確認/変更可能です。
確実な操作ができるのはもちろん、ファインダーを覗く前に設定をひと目で確認出来るため、いざ構えた際にフレーミングに集中いただけます。
出典:フジフィルム公式HP
一方ニコンZ fの公式発表ページでは、ヘリテージデザインや質感の高さによる操作感については書かれているものの、ダイヤルインタフェースの利点については触れられていません。
ニコンの歴史的カメラ「FM2」にインスパイアされたヘリテージデザイン
(中略)ダイヤル、シャッターボタン、電源レバーには操作時の上質な感触を実現する真鍮を採用。また、1970年代から1980年代に使用していたNikonロゴをあしらい、ボディー天面の表示には、彫刻した文字を使用。細部にまでこだわり抜いたデザインを施しています。グリップは、見た目とのバランスを考慮しながら、フルサイズ向けのレンズを装着した際の安定性にも配慮。シャッターの押し心地にもこだわっています。
出典:ニコン公式HP
また、開発者インタビューの中でも「レンズにF値の記載がなかったり・・・など、色んな違うポイントはあるんですけど、一望できるっていう思想だけは・・・実現しました」と言われている通り、やや歯切れの悪い言い方になっていました。思想だけでなく、本当に「一望」したいんですよね。
完全なる憶測ですが、もしかするとニコンの中でも、「このダイヤルインタフェースはヘリテージデザインが主目的であり、操作性を重視したものではない」と考えられているのかも知れません。
Z fのデザインに機能美はあるのか – 重量増・バッテリー減を補う魅力や如何に
そうなってくると、α7Cからの乗り換え時にデメリットとなる、サイズや重量の増加、バッテリーの持ち(最大撮影枚数)の減少について目を潰って良いのかが気になってきます。重量に至っては210gもの増加になりますが、これはα7Cのキットレンズ1本分よりも重いのです。
FM2オマージュのヘリテージデザインは魅力ではあるものの、上の操作系のモヤモヤを鑑みると、これらのデメリットを補うほどの魅力があるのかどうか。
筆者は、本ブログの主題の一つである車に対してもそうですが、「考え抜かれた機能美」に惚れ込む性癖があります。
ニコンZ fに関しては本当に一目惚れし、よほど購入を考えたのですが、上の検討を経てやや冷静になってしまったのは確かです。
一方で、このデザインに一目惚れしたというのも事実なので、Z fの良いところも見極めていきたいという複雑な思いもありつつ・・・その辺りは最終的には実機を触ったり、更に詳細が分からないと判断できない部分もあるので、ひとまず心を落ち着けてじっくり検討を楽しみたいと思います。
ベトナムにZ f、そしてα7C IIの実機が海を渡って来るのを心待ちにしながら・・・。
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