「輸入車」「外車」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろう?
自分にとって「輸入車」とは何だろう?
遥か昔、「外車=お金持ち」というイメージが有ったという話は知識として知っていますが、それは昭和から平成初期の遺物。21世紀を迎えて輸入車がより身近になり、そうした「分かりやすいステレオタイプなイメージ」が薄らいだ今、むしろ「輸入車の価値」って何だろう?という事を改めて思うわけです。
直近までプジョー、フォルクスワーゲンと輸入車を2台乗り継いできた筆者が、ブログ仲間であるまこまちさんの下記記事をきっかけに、筆者にとっての「輸入車とは何だったのか?」について、思うところを綴ってみたいと思います。
いつもガレージにある「旅の入口」
ガレージに納まる愛車のドアを開け、ドライバーズシートに収まる。
五感に流れ込んでくるのはそれまでとは隔絶された世界。
「バタム」という音と同時に外界の喧騒が遮断され、心地よい手触りのステアリングホイールに手をかけつつ、自分がこれから火を入れようとしている頼もしい心臓部に思いを馳せる。
・・・「ガレージ」と言うほど気の利いたものは持ち合わせていませんでしたが、ここは語呂が良いので一旦そうさせて下さい。とにかく、生活の直ぐ近くにその相棒は佇んでいて、いつでも気が向けば「旅の世界」へと導いてくれるのがクルマです。
ただしそれが輸入車の場合、「旅」の意味が2つあるように思うのです。
輸入車では、走り出す前から「旅」は始まっているのです。
眼の前に飛び込んでくる、遥か異国の地の伝統を伝えるブランドロゴ。
液晶部に時折現れる外国語もしくは不自然な日本語。
日本車とは左右逆のレバー類や、ダイヤル式のライト操作部。
気温ではなく「快適指数」などという意味不明な指標が用いられるエアコン。
・・・それらはカルチャーギャップであり、異国との触れ合いです。元々旅が好きな筆者は、それだけで心躍ったものでした。
そう言えばかつては「海外旅行」自体がお金持ちにしか手の届かない贅沢でしたが、今では格安航空会社も増えるなど、比較的身近なものになりました。
輸入車も、小型車を含めてラインナップが増え、手が届きやすくなりました。
「海外情緒を楽しむ体験が身近なものになった」という意味では、旅行と同じことが輸入車にも言えるのかも知れません。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (12mm, f/2.8, 1/160 sec, ISO200)
クルマは「人生を豊かにするための道具である」という文化
自家用車に第一に求められるものは実用性、かも知れません。
しかし同時に、特に欧州においてはクルマは「バケーションのための道具」として発展してきた歴史と文化があります。
燃料を満タンに満たした愛車は、荷室にも大量の荷物を積み込みつつ家族を車内に導き、お気に入りのコックピットを眺めながらイグニッションをONにする・・・
それから始まる現実逃避に思いを馳せながら、ハイウェイに合流しスピードを乗せていき、好きな音楽に包まれながら200km、300km先の目的地を見据える・・・
この車となら、どこまででも行ける。そうだ、宿に付く前にワイン(または地酒)を買おう。温泉も楽しみだ。
そうした旅の道具としての性能を極めることを根幹に据えて来たのが、欧州を中心とする輸入車メーカーです。
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (60mm, f/4, 1/3200 sec, ISO200)
そんな文化の一端をよく表しているのが、「パノラマガラスルーフ」という装備。欧州車においては2000年代から既にこの装備が一般的に用意されていました。
日本において普及し始めたのは本当にここ数年のことで(トヨタのムーンルーフなど)、重心であるとかトラブルであるとか、様々なマイナス面を優先して考えがちな日本人には長い間敬遠されていたものです。
実際面白いことに、2010年代後半頃の話ですが、輸入車ディーラー(特にフランス車)へ行くと、この広大なガラスの天井は人気のオプションだと言われ、日本車ディーラーへ行くと(あの牢屋の小窓のように小さな「サンルーフ」でさえ)「あまり需要が無いのでカタログから落ちたんです」などと言われました。
つまり、欧州車の価値観は、実用性よりも、いかに旅を陽光で溢れたものにするか、と言うところに重点が置かれているように思われるのです。
筆者がRX-8の後釜としてプジョー308SWを選んだのは、試乗の際に後部座席の家族が、このガラスルーフから降り注ぐ光に歓声を上げたからです。愛車での旅は家族へのおもてなしでもあり、そのフランス車は、おもてなし役として最高の相棒でした。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (17mm, f/3.1, 1/3200 sec, ISO200)
少し話が逸れました。綺麗ごとは終わりにして、そろそろ本音と行きましょう。
パノラマガラスルーフ?そんなものは輸入車の美点の一つに過ぎません。
輸入車の最高の性能、それは「Fun to drive」、これです。
アクセルを踏み込んだ時のリニアな応答性とサウンド、ステアリングを切った時の適度な手応えと正確性、路面の段差やうねりを丸め込むしなやかさと情報量の多さ、そして、永遠に運転し続けられそうな気にさせる素晴らしいシート。
それは、筆者を旅に誘ってやまない必須性能であり、脳内を侵す魔力です。
この魔力の虜となり、筆者はこれらフランスやドイツからやって来た相棒と共に数え切れないほど多くの旅を重ね、それは確実に筆者、そして家族の人生を豊かにしてくれました(お金足りないから殆どキャンプだったけどそれもまた良き)。
そしてその魔力こそ、輸入車、特に欧州自動車ブランドが最も大切にしてきた価値であり、世界のベンチマークたらんと切磋琢磨を続けてきた性能です。
今でこそ日本車も、相当なレベルまで追いついてきましたが、それも輸入車をベンチマークとして追いかけてきたからに他なりません。
輸入車は、その根底に流れる「車は人生を豊かにする旅の道具」というフィロソフィーを、筆者、そして日本車メーカーにも教えてくれる先導役だったのではないでしょうか。
SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/2.8, 1/2000 sec, ISO100)
百花繚乱、百年に一度の好機、あなたは何を選ぶか
今、車は百花繚乱の時代。欧州車にこだわらずとも良い車が選べる時代になりました。
完全内燃機関からピュアBEVまでパワーソース選びは実に悩ましく、ボディタイプでは、ステーションワゴン絶滅の危機に瀕した日本でクラウンエステートが登場した事に驚きを隠せない。
これも、ある意味で「輸入車が始めた物語」だと感じています。
車の基本性能は、輸入車の主戦場で真っ向勝負するために研鑽した結果、日本車でも車種を選べば遜色ないレベルまで追いつき、また、電動化は政治的な背景からドイツメーカーを中心に波紋が広がったムーブメントの中に、日本車も着実に足を踏み入れています。
それに加えて、最近ではHYUNDAIの日本再進出、中華EVメーカーの躍進など、多様性は広がるばかり。
つまり、輸入車を選ぶ理由は一層焦点が定まりづらくなってきたとも言えます。
そんな百年に一度の大転換期に、あなたは車に何を求めるか?
輸入車と国産車にどのような違いを見出すか?
少なくとも僕たちは今、海の向こうに広がる世界を見渡しながら、より個々の価値観や自分の描くカーライフと向き合いつつ愛車を選ぶ時代に生きていると言えそうです。
それを好機と捉えるか。活かすも殺すも、自分次第。これもまた一つの旅・・・
以上、赴任地のベトナムで夜な夜な帰国後の愛車に妄想を馳せるおっさんの独り言にお付き合い下さり、ありがとうございました。
この「車選びの旅」はいつ終わるんでしょうか(爆)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/8, 1/4000 sec, ISO100)
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コメント
実は私は日本車を買ったことなく、プジョー3台(206,406クーペ,607)とアルファロメオ156とイタフラ車を日本では乗ってました。
外車買えるなんて金持ちかとか思う人もいますが私が206を買った頃はプジョーも安く200万円台前半で買えたものです。
ただ、なぜかというと一番は単純にデザインが好みだったからですね。ちょうど日本でプジョーがドイツ御三家に続くレベルで売れていた頃でミーハー的に買ったのは否定できないです。
個人的に今でもデザインの好みは406クーペですね。当時の年収と変わらない金額の車を買うという無茶をしたし、プアマンズフェラーリとも言われたりした車ですが内外装含めたデザイン、高速での安定性など今でも乗りたい車ですね。
プジョーはエンジンだけ見ると大した性能ではないのですが、足回りの作りがうまくて良かったですね(一時期ドイツ車っぽくなったり迷走しましたが。
エンジンならアルファロメオ156のV6ですね。もうああいうエンジンは作れない時代だと思いますがあの独特のエンジン音は良かったですね。
あと、アルファロメオはハンドルが比較的標準でもクイックなのも良かったですね。あそひが少ないのでハンドル切ったらすぐに動いてくれる操作性は運転していてこっちの気持ちにダイレクトに反応してくれるところが他社にはないものだと思います。
単純に車の運転そのものが好きだというのはありますが、イタフラ車の操作性というのも自分に合っていたのではと思います。
ドイツ御三家も確かに運転したり乗せてもらったりするとそりゃ売れるよねっていうのはわかりますが、ドイツ車はきちんとしすぎて自分が所有するには合わなかったという感じですね。
ベトナムでも車の運転はしたいものですが、ホーチミンの道路事情では・・・VINFASTの電気自動車とか運転してみたいんですけどね
ひでさん
コメントありがとうございます&返信遅くなり申し訳ありません。
そんな濃い遍歴の方に読まれてしまってはもう恥ずかしくて穴があったら入りたいレベルです^^;
206、僕が始めてプジョーを知ったきっかけも206だったと思います。
通勤路の途中に止まっていた青い206のライオンマークが気になって、そのお宅の横を通る度に歩速を緩めたものです。
406も美しいですよね。
その後、307や308、407になる頃に急激に顔が猫化して、それ以前のプジョーファン的には微妙だったかも知れませんが、個人的にはあのアクの強い顔も、優等生っぽくなくて好きでした。
クイックでダイレクトなステアリングと言えば、プジョー308の美点の1つは、当時も既に珍しかった電動油圧式ステアでしたね。
じっとりと重く、でも確実に自分で操舵しているダイレクトな感覚はスポーツカーのようでした。
その代わりあの時代はおっしゃる通り足回りがドイツ化してたと言われてますが、自分にとってはどちらにしても素晴らしい足回りでした。
その後i-Cockpitになり、あのダイレクト感がたまに抜けるフワッとした感覚がちょっと好みに合わず、プジョーから離れた経緯があります。電動ステアについてはやはりVWの方が一日の長がありました・・・今は分かりませんけどね。
イタ車は数度試乗をしただけですが、ほんと感性のツボをよく分かってますよね。求められてる事がほんとよくわかっているというか(笑)
今後電動の時代になって各ブランドがどういう特色を出していくのか見ものですが、VINFASTにもぜひ頑張ってもらいたいです^^
7シリーズになってピニンファリーナデザインからプジョー内部のデザインチームだけに変わったが大きかったと思います。
私が406クーペ買ったのは、生産終了して新車の日本在庫が後数台という時で後期型と呼ばれるものですが、ピニンファリーナオリジナルの顔から大口デザインに変わった最初のモデルだと思います。
プジョーの人から聞いた話では、406クーペで大口にした時の市場の反応を試した部分もあるそうです。
それで大きな問題もなかったからあの大口スタイルを押し出したようですね。
EVも色々問題抱えていてハイブリッドでトヨタに歯が立たないからEVEV言い始めたヨーロッパも雲行きが怪しくなってきましたね。
正直、いうほど環境に優しくないし、充電時間の問題もありますからね。
バイクレベルならいいと思いますが、数分の充電で100キロ走れるとか一回フル充電したら1000キロ走れるとかバッテリーも大きく進化しないと厳しいかなと。
ベトナムだと電動バイクはまだ無免許で乗れるので100キロくらい出る電動バイク買った方が良いですね。
割り切って安い電動自転車買うのも一つの手ですが(良くて30-40キロしか出ませんが)
ひでさん、こんにちは。
確かにピニンファリーナの直線的ですっきしたデザインから、一気にグラマラスになりましたね。
BEVに関しては遠乗り派としては当分買う気になれません・・・中国での国慶節か何かで充電器の奪い合いで大混乱したとニュースになっていました。PHEVくらいが一番バランスの取れているのかなという気はしますね。
ベトナムは電動バイクの選択肢が多くてよいですね。ただ、ビールが飲めないのでちょっと購入に踏み切れません^^;