まさかこれほど早くこの記事を手掛ける事になるとは思わなかった。
パサオことパサートオールトラックは家族の一員であり、家族でのアクティビティでは常にパサオが側に居た。それはこの2年間変わらなかったし、そしてあと何年も続くはずだった。
しかし、そこへ舞い降りた海外赴任の話。それはこれまで描いていた未来とは別の世界線だった。
一つの未来を選ぶためには、別の未来との決別を伴わずに先へ進むことは難しい。
悩みに悩んだ末、僕は海を渡り家族でベトナム生活を始めるという世界線を選ぶことにした。
本記事は、たった2年2か月という短い期間だったけれど、しかし非常に濃密で忘れがたい思い出を残してくれた愛車・2020年式B8型パサートオールトラックについての最後のオーナーズレビューだ。そしてこれをもってこの愛車への壮行のエールに代えたいと思う。
SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/2.8, 1/2000 sec, ISO100)
フォルクスワーゲンに興味が無かった
告白しよう。僕はそれまでフォルクスワーゲンというブランドに食指が動いた事がなかった。
何とも浅はかな理由なので書くのも憚られるが、単に町中で人と被るポピュラーなブランドを選ぶ気になれなかったのだ。
それまでの愛車は少しずつレアで斜に構えたところがあった。
最初の愛車(二輪)であるホンダGB250クラブマンは人気ではライバルSR400の後塵を拝していたが、250ccにも関わらず400ccを凌ぐパワーを秘めていた。
マツダRXー8は4人家族を包み込む世界で唯一無二のロータリースポーツだった。
そして前愛車のプジョー308SWを購入した10年前にはプジョーなどというブランドを知るのは一部の変態に限られていた。
一方でフォルクスワーゲンというブランドは町中で最もよく目にする輸入車ブランドの一つであった。
個々の車種を見ずに十把一絡げにブランドを評価することの愚かさを今でこそ理解しているつもりだが、当時はフォルクスワーゲンについてそれ程度の理解しか持ち合わせていなかったのだ。
しかし、出会いとは分からないものだ。
心を掴んだもの
パサートオールトラックという車は派手に衆目を集めて誰しもを振り返らせるようなタイプではない。
静かに、しかし揺るぎなく大地にたたずみ、分かる人のみが分かるオーラは、ある一部の人の心を掴んで離さない。そんな車だ。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/160 sec, ISO100)
プレーンな外観に秘めた圧倒的な機能美に惚れた
ところで筆者はステーションワゴンが好きだ。
優れたユーティリティと低重心から来る走行性能・・・などと言ってしまえば陳腐だが、もう少しシンプルに言えば、「旅の道具として極められた機能性」に得も言えぬロマンを感じるのだ。
そのような価値観の持ち主の目に、初めて実車で見たドイツ生まれのステーションワゴンはあまりにも美しかった。
正直なところ、パサートオールトラックのベースであるパサートヴァリアントの試乗のためにVWディーラーを最初に訪れた際には、半信半疑だった。予算もオーバーしていたし、Web上で見る限りは地味な印象に終始し、惚れるというには程遠かった。
しかし初めて実車を見た時に感じたのは、圧倒的なまでの機能性と道具としての拘りだった。その外観は意地を張っているのかと思われるほどに地味でプレーンだが、それはむしろバカンスの荷物を積み込んでアウトバーンを駆け抜ける道具としての拘りを無骨なまでに強調しているように思われた。
何の事はない、これこそ僕が求めていた「旅の道具として極められた機能性」そのものではないか。
ステーションワゴンのお手本の様なその外見からは、まるで「機能性以外のものは全て削ぎ落としても構わない」という潔ささえ感じたものだ。
これまで見向きもしなかったフォルクスワーゲンとは、こんな車を作るブランドだったのか。
OLYMPUS E-M1MarkII, (12mm, f/5.6, 1/2500 sec, ISO200)
触れるほどに幸せになるスルメのようなインテリア
インテリアも初見の印象は薄かった。初対面でガツンと心を鷲掴みにするタイプとは程遠い。
しかし、ドライバーズシートに収まる回数を重ねるほどに心を満たすセンスと作り込み品質の高さを感じさせる。
余計な装飾を纏っていないが故に、五感は自ずと細部の造形や素材の質感、あるいはシートに当たる腰から背中、そしてステアリングを握る掌までの感触といった感覚的な部分に集中する。そこでは薄っぺらい表面ではなく本質を見透かされることになる。自信がなければそのような土俵に上がるのは自殺行為だ。
しかしパサートオールトラックの一見地味なインテリアは、一切の破綻を来さずにそのような試練をパスしてみせる。
魂が深い細部に宿るが故に、乗れば乗るほどにじわじわと幸福感を満たしていく。
ふさわしい表現が思いつかず忸怩たる思いだが、パサートオールトラックのインテリアはまるでスルメのようだ。分かって頂けるだろうか。
ただし一つだけ不満を言わせて貰いたい。
噛めば噛むほど深まるスルメの味わいを、たった2年余りで全て引き出せたのかどうか、それだけが気になってならない。
やはりこの車は、長く付き合うべき相棒なのだ。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (12mm, f/3.2, 1/200 sec, ISO200)
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (25mm, f/3.5, 1/320 sec, ISO200)
結局心を鷲掴みにしたのは広大な荷室だった
潔いエクステリアにしても質感の高いインテリアにしても、機能性が伴わなければただの地味な車で終わってしまう。
結局の所パサートオールトラックが僕の心を掴んで離さなかった最大の要因は、荷室だ。
リアハッチを開け、639Lという広大なラゲッジルームを目にした瞬間に僕の心は沸き立った。
愛車の荷室に詰め込むのは、夢だ。
ラゲッジの容量は即ち、家族でのキャンプや雪山などへの旅路をどれだけ描けるかを測る指標だ。
子供のように単純な思考回路だが、単純な魅力ほど最後まで心を掴み続けるのだ。
パサートオールトラックは完全に予算オーバーだったが、その分多くの夢を購入したのだと考えれば完全に帳尻が合う。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (12mm, f/7.1, 1/60 sec, ISO640)
SONY ILCE-7M2, (69mm, f/2.8, 1/200 sec, ISO100)
その車、ジキルとハイドにつき
人は二面性に弱い生き物だ。
パサートオールトラックという車は、付き合うほどに様々な顔を見せてくれた。日常では物静かに仕事をこなすクールな執事のようだが、しかしひとたび羊の皮を脱ぎ去ればその猛々しさに心が揺さぶられ、ギャップの虜になっていく。
日常ではクールにパッセンジャーズ・カーを装う
パサートという車は元来パッセンジャーズ・カーというイメージが濃い。後部座席は成人男性が足を組めるほどの余裕の空間を有し、ゆったりとしたシートは適度に張りのあるクッション性を伴って全身を心地よく包み込む。
実はこの車のサルーンとしての極めて優秀な特質に気づいたのは、ブログ仲間たちとのオフ会がきっかけだった。普段僕はドライバーズシートに座ってブンブン言わせている立場であるため、それまで後部座席でのドライブを経験したことが無かった。
広大な足元空間と、前席着席時よりも遠く静かに響くメカニカルノート、そして頭上の電動パノラマスライディングルーフ越しに広がる青空・・・まさに極上のサルーン空間だ。
SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/7.1, 1/60 sec, ISO125)
そして日常使いでは意外な器用さも見せる。小回り性能が高いのだ。
4.8mに迫る大柄なボディにも関わらず、5.4mというCセグメント並の最小回転半径を持ち合わせている。
更に360度アラウンドビューモニターのオプションを装備すれば、都会での日常使いとて敵なしだ。
アウトバーンを時速200kmで駆け抜けつつ、狭い東京の路地にまで器用に対応するきめ細かさもまた、パサートオールトラックという車のジキルとハイド的側面として忘れてはならない。
初めての咆哮を聴いた日 – 3000回転以上の愉悦
しかしクールな執事も3000回転を超えると猛々しい猛者に変貌を遂げる。
その咆哮を初めて聴いた夜の事は今でも鮮明に覚えている。
昨今では不要とも言われる「慣らし運転」という精神安定剤を自らに課し、走行距離1000kmの呪縛の時を耐え忍び、納車後3週間にしてようやく訪れた解放の瞬間を、筆者は羽田空港を左手に望む首都高1号線上で迎えた。
アクセルペダルを未踏の領域まで踏み込んだ瞬間に、パサートオールトラックはディーゼルエンジンに対する先入観を軽く蹴散らし、3000回転以下で被っていた羊の皮を猛然と脱ぎ捨てた。
それまで潜めていたソプラノのような快音を高らかに奏でると共に4000回転を過ぎるまで淀みなく回る本気モードに僕は武者震いした。そしてディーゼルとしては高めの3300回転で400Nmの最大トルクを発揮するこの2リッターTDIユニットが、スポーツディーゼルの領域に足を踏み入れていることを確信したのだ。
普段はクールな執事も、やはり内なる情熱を秘めた漢だったのだ。
猛々しいシフトショックを掌に感じろ
ジェントルさに潜む猛々しさという二面性はDSGと呼ぶツインクラッチトランスミッションにも宿る。
パサートオールトラックのDSGの日常モードである「D」モードの事を、僕は「ダルダルモード」の「D」だと解釈している。それほどにシフトショックとは無縁で、故にダイレクト感よりもスムーズさを身上とする。同乗者にとっては快適この上ないモードだが、当初僕はその扱い方が分からず、特にコンビニの出口などでパッと車道に出たい時などにはヤキモキしたものだ。これでも400Nmかと問うたものだ。
しかしそれはあくまでも表層を覆う紳士の顔に過ぎない。
パサートオールトラックの内なる情熱は「S」モードと「M」モードにこそ宿ることを知ってからは、この車を自分の手足のごとく自在に操れるようになった。これらのモードはかつてDSGの難点と言われたギクシャクを隠そうともせず、1速の低速域ではまるでMTのごとく車体を揺さぶる。しかし逆にうまく手なずければ上記のコンビニ出口然り、意のままのレスポンシブで豪快な加減速が行える。
そしてその真骨頂はやはり3000〜4000回転超えの領域にこそ宿る。中速域以降ではシフトアップの度にパドルあるいはシフトレバーに「ガツン」という猛々しいショックをもたらし、天国への階段を登るが如く更なる高みへと誘う。
シフトダウンでは「フォウンッ」という勇ましいブリッピングで瞬時に再加速へのスタンバイを完了する。
もちろんゴルフRやGTIといったホットなモデルには敵わないが、紳士的なパッセンジャーズ・カーとのギャップには十分にドイツのエンスー魂が宿っている。
「オールトラック」の名をを冠する者 – 非日常への渇望に耐えられるか
「All Track」即ち「全ての道」。
その名を冠する者の肩に乗る期待は大きい。
パサートシリーズで唯一4輪駆動機構「4MOTION」を具備し、通常モデルより30mm高い最低地上高を有するパサートオールトラックは、日常から非日常へ飛び出したいと欲する我儘な自由人の要望に応えてくれる。その魅力に取り憑かれた暁には、羊の皮はガレージに置きっぱなしになるだろう。
キャンプフィールドへの最短距離
僕の場合、この車の用途の5割以上はキャンプのためだと言える。前愛車プジョー308SW時代に思いがけずファミリーキャンプにのめり込み、それをさらに高次元で支えてくれる相棒としてパサートオールトラックを選んだ。
キャンプで必要なのは広大な荷室容量だけではない。
キャンプ場までの長時間の往復を快適で楽しいものにする走行性能や、渋滞時の疲れを軽減するオートクルーズコントロールなどのADASもあれば最強だ。そして何より同乗者に心地よい移動を約束する乗り心地、ユーティリティ、シートの座り心地も忘れてはならない。
キャンプと言うと悪路走破性が重視されがちだが、実は乗車時間の殆どがキャンプ場までの移動であるという点で、アウトバーンでバカンスに向かうための性能を極めた欧州製ステーションワゴンほど適した乗り物はない。
なお個人的な嗜好で恐縮だが、都会から大自然の非日常へ飛び込むのだから、頭上から降り注ぐ青と緑を思い切り吸い込む事が出来る電動パノラマスライディングルーフも密かに大事なポイントだ。それは同乗者である子供達へのさりげないプレゼントでもあったのだ。
SONY ILCE-7C, (58mm, f/2.8, 1/2500 sec, ISO100)
SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/5.6, 1/60 sec, ISO100)
SONY ILCE-7M2, FE50mm F1.8 (50mm, f/1.8, 1/160 sec, ISO100)
豪雪で身を預けられる安心感
最も過酷な状況というのは滅多に訪れるものではない。しかしいざその場面に遭遇した時に対応出来る実力を持ち合わせているのと居ないのとでは大きな差が出る。何故ならそれは最も過酷な状況なのだから。
そうしたシチュエーションの最たるものの一つが、雪山、それも大寒波に襲われた零下10℃を下回るような豪雪だ。
パサートオールトラックを所有したわずか2年余りの間に、筆者はこれまでの人生において最も過酷な豪雪を経験する事ができたのはむしろ行幸と言えよう。
2021年末の志賀高原は記録的な大寒波に見舞われた。地元の人をして「ここ10年でも記憶にない」と言わしめる大層な荒れ模様だった。降雪量もさる事ながらその極低気温は異常な路面状態を作り出し、思い出すだに恐ろしい事故に巻き込まれる寸前で助かるという稀有な体験もした。
そのような未曾有の状況で、愛車パサオはその素性の良さと世界最先端の技術の結晶により、見事に家族を守り通してくれた。
メディア向けの雪上試乗会などでは伝えられないパサートオールトラックの生々しい雪上レビューは下記記事をご覧頂きたい。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/1250 sec, ISO32)
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (34mm, f/3.8, 1/1600 sec, ISO200)
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (15mm, f/3.5, 1/5000 sec, ISO200)
ワインディングを「普通に駆け抜ける」素性の良さと技術の粋
「オールトラック」の名故に悪路性能が注目されがちだが、実はこの車の隠れた才能は、全長4.8m近いボディサイズをものともせずオンロード、それもワインディングを「極めて普通に楽しめる」事なのではないかと思っている。
190ps/400Nmの強心臓とDSGのパワートレインが大柄なボディを意のままに操るに余裕で足ることは言うまでもないが、ステーションワゴンならではの低重心に加え、MQBプラットフォームをベースとした強靭なボディ剛性による地を這う様なロール耐性といった素性の良さこそが目に見えない高性能の要となっている。
そして上位グレードが奢る電子制御ダンパー「DCC」による精緻な足捌きは上体の揺れを一発で収め、さらに4輪トルクベクタリング機構「XDS」はディーゼルエンジンのフロントヘビーを帳消しにしてCセグハッチバックのような素直な回頭性を与える。
「全ての道」の中で最も大切なのはオンロード性能なのだということを、パサートオールトラックは熟知している。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
なおワインディングでTDIの快音を満喫する様子は下記動画でご覧頂けます。
パサートオールトラックとはどんな車だったのか
御託を並べ過ぎた。結局のところパサートオールトラックとはどんな車なのか。そろそろまとめに入るとしよう。
威圧感はないけれど、分かる人には分かる良い車
一言でこの車を言い表すのは非常に難しいのだが、結局こういう事なのかも知れない。
パサートオールトラックはフォルクスワーゲンが誇る世界最先端の技術が惜しげもなく投入された車だ。にも関わらず、およそ威圧感と縁がない。「高級車」という嫌味も無く、むしろ地味な存在だ。
もちろん絶対的な価格で言えば大衆車ブランドの中では上位に位置するが、一方で同等の性能を持った車をプレミアムブランドに求めれば僕などにはとても手の届かない天上の価格帯に昇ってしまう。つまりコスパにも優れている。
ブランドのプレミアム性や華美さによるアピールには関心が無いが、車としての本質は追求したい、そんなアウトローな変人には極上の満足感を与えてくれるだろう。
家族での日常と非日常を全て託せる懐の深い相棒
僕はこの車に、家族でのアクティビティを支える最後の愛車としての役割を託そうと考えていた。
この車を購入した当時、既に長男は小6、次男は小4になっており、彼らとキャンプや雪山、ドライブ旅行へ行けるのは長くても子供達の高校卒業までの間だろう。僕にとっては丁度次の愛車1台分の期間だ。
そうした背景から、2年前の車選びでは家族での思い出づくりの有終の美(あくまでも子供達の少年期までの、と言う意味でだが)を飾るに相応しい最高の相棒を見極めなければならなかった。
夢を積み込む広大な荷室と、どんな非日常へも飛び出していける旅道具としての高い機能性。ドライバーとして家族を連れて遠出したくなるFun to Drive。それでいて日常生活も卒無くこなす実用性。欲を言えば人と被らない希少性も欲しい。我ながらここまで欲しがりであったかと呆れてしまう。
しかしパサートオールトラックになら、その重責を託せると思った。
車選びに時間が掛かったのは、そのような車の存在を僕がそれまで知らなかったという事に加え、大幅に予算オーバーだった点も多少関わっていた。
しかし後者については、細君はこう言って僕の背中を押してくれた。
「よく分からないけど、このフォルクスワーゲンが一番良いんでしょ?ちょっと高いけど、家族みんなで乗れる車は最後かも知れないんだし、少し節約すれば別にいいんじゃない?」
こうして家族の一員として迎えられたパサオは、想像以上に大きな仕事をしてくれたのだ。
SONY ILCE-7M2, TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036) (28mm, f/8, 1/500 sec, ISO100)
ありがとう!多くの人に愛されたパサオと僕達の旅立ちにエールを
パサオを手放すよりも1ヶ月ほど前、パサオとの最後のキャンプでは終始切なさが込み上げて来る有様だった。パサオとの思い出は勿論のこと、308SW時代を含めた8年間の家族でのキャンプの光景が脳裏を走馬灯のように駆け巡った。
そしてパサオを手放したのはベトナムへ渡航する直前の今年6月初旬のことだったが、不思議なことにいざその段になると、思っていたほど寂しい別れにはならななかった。
それはもしかすると、パサオが紡いでくれた家族の絆のおかげで、思春期の子供達とのベトナムでの新生活という先の見えないチャレンジに踏み出す勇気を得られたのだ、と思えたからかも知れない。そしてそれこそが、パサオが果たしてくれた「想像以上に大きな仕事」だと思っている。
そしてもう一つ忘れてはならないことがある。それは、パサオを通じて得られた新しい仲間たちの事だ。
前愛車のプジョー308SWからパサートオールトラックへの買い替え検討をきっかけに、多くのブロガーやクリエイター、車好きの仲間たちとブログやSNSを通じて交流を深めることが出来た。職場などの組織や利害に縛られない、同じ趣味を熱く語り合える彼らとの交流は、これからの人生において大きな財産となるに違いない。
今振り返ればパサオは、パサートオールトラック史上最も多くの人たちにレビューしてもらった個体だったのではないだろうか。パサオからのお礼も兼ねてここに仲間たちの記事や動画を再掲させて頂くのでぜひご覧下さい。
そろそろパサートオールトラックの最後のオーナーズレビューも締め括らなければならない。
パサートオールトラックが「旅の相棒」としての最高の資質を備えている事を少しでもお伝えできたのなら本望だ。
しかし個人的にはそれだけに留まらず、家族でのベトナムでの新生活への挑戦、そしてブロガー・クリエイターを始めとする車好きの仲間達との出会いなど、人生という旅における新しい未来をも切り拓いてくれた相棒だった。
子供達にアウトドアや雪山の楽しさを届けてくれたパサオ、そしてたった2年2ヶ月とは思えないほど濃密な思い出と新しい未来をくれたパサオ、本当にありがとう。
お互いの新しい旅路にエールを!
SONY ILCE-7C, (28mm, f/8, 1/4000 sec, ISO100)
コメント