スキー・雪山

恐怖、魔のスリップゾーン!「四駆×スタッドレス」でもチェーンは必須 | 北志賀よませ温泉スキー場付近にて

さて、「パサートオールトラックでスキーに行く!渋温泉・志賀高原年越しツアー2021-2022」レポートのパート2、初日の続きです。

前回はパサートオールトラックの初めての本格的な雪道インプレッションをお届けしました。視界の殆どない吹雪にマイナス10℃を下回る低温という極限状態で、愛車パサオ君は信頼感抜群の雪上性能を見せてくれました。

パサートオールトラックは雪道でも頼れる相棒@大寒波の志賀高原
こんにちは。2021-2022年の雪山シーズンに突入した10max(@10max)です。 シーズンインは、2021年の大晦日から2022年1月2日にかけての2泊3日の年越し渋温泉・志賀高原ツアー!我が家の恒例のエリアなのですが、年越しでの訪...

ということで、「頼れる四駆のワゴン、ここに極まれり!」とパサオ君への称賛を送ったところなのですが、その日の午後、車の性能とは関係のないところで背筋の凍るような体験をしました。雪国在住の方にも「そんな経験は雪国でも10年に1度あるかないか」と言われた事件の顛末、ご関心あれば是非お付き合いください。

パサートオールトラック 雪上 雪道OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (28mm, f/3.6, 1/640 sec, ISO200)

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突如路肩に吸い込まれる車たち

前の記事の通り、2021年大晦日のこの日は大寒波で志賀高原方面はとてもスキーどころではなかったため、一度渋温泉まで下りてきて、北志賀の麓近くにあるよませ温泉スキー場へ向かいました。ところがそちらでも、スキー場まで登る最後の急坂で何台ものFF車がスタックしていて入場出来ないと係員の方に言われ、止む無く引き返すことにしました。こんな麓に近いスキー場でもそんな事になるとは、流石地元の方をして「ここ10年で見たことがない」と言わしめる大雪です。

ということで残念ながら本日のスキーは諦めて渋温泉へ戻ろうとしたのですが、恐怖体験はその帰り道で襲いかかりました。

恐怖体験の現場は下の地図の「(有)湯本商店」と「チェーン着脱場」の間辺りです。よませ温泉スキー場から下りてくると、この国道403号線の「湯本商店」の少し上(右)辺りに出て、チェーン着脱場の方に向かって緩やかに下っていく感じになります。

筆者のパサオ君がこの403号線に出た時には既にかなり渋滞が発生していました。おそらく皆「よませ温泉スキー場の方でFF車が多数スタック」情報を聞いて一斉に下りてきてるんだろうな、と想像した訳ですが、それにしても進みません。

・・・と、ようやく徐々に進んで「湯本商店」を少し過ぎた辺りで、目の前で異様な出来事が起こります。ノロノロ渋滞の中、時速10kmくらいで進んでいると、突如、すぐ前に居た車が「スーッ」と左の方へ方向を変えたんですね。その動きがあまりに自然だったので、筆者と細君は「あそこに左に曲がる道があるのかな」なんて話してたほどです。

ところがところがその車、そのまま見事に左の雪の塊の中に鼻から突き刺さったのです。

「え?前の車何やってるの・・・?」

何しろ見たところアイスバーンでもなく深雪でもなく、さして急でもない緩い下りの、真っ直ぐ伸びた何の変哲もない道路で、突然前の車が「自ら進んで鼻から突っ込むように見えた」んですから。

しかしそこからが更に異様でした。それまでは前の車に隠れて見えなかったのですが、なんとその車の前には何台もの車が折り重なるようにスタックしていたのです。一見何の変哲もない道で突如車が吸い寄せられて行く様は、まるで船の墓場の異名を持つ「魔のバミューダトライアングル」のようです。

北志賀 よませ温泉スキー場 2021年12月31日 スリップ事故Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/5300 sec, ISO32)

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宙に浮いたかのように滑っていく恐怖

その光景に驚いたものの、その時点では、

「おいおい大変なことになってるな・・・・」

なんて他人事のように言ってた訳です。さすがにこちとら四駆にスタッドレスだし、そうはならんだろう、と。申し訳ないけど雪に慣れない素人が何か出来る訳じゃないし、巻き込まれないように右側をすり抜けていこう、と。

そう思い、前方に数メートル進んだ瞬間、信じられないことが起こりました。

普段豊かに路面状況を伝えてくれるフォルクスワーゲンご自慢のパワステから、突如一切の情報が失われました。

一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。

そして、路面とタイヤとの摩擦係数がゼロになったかの様に、そう、まるで宙を浮いているかの様に、車体が左の方へスーッと滑り始めたのです。その感覚は、物理法則が全く通用しない異世界に突如転生したかの如くです。

言うまでもなく、その間はハンドルを切ろうがブレーキを踏もうが何の影響も与えることが出来ず、一切のコントロールが遮断されました。

「頭が真っ白になるってのはこう言うことなのか」「ブラックホールに吸い込まれるってこういう感じなのかな」などと無駄な思考が走馬灯のように脳裏に浮かびます。

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ほんの20mの「魔のスリップゾーン」

永遠のように思われましたが、実際はほんの数秒間の出来事だったのでしょう。気づくと愛車パサートオールトラックは路肩の1.5mほど手前で停止していました。

すぐさま、チェーンを持ってきていた事を思い出し、装着しようと車外へ出ます。

でも・・・歩けない!!全然歩けない!!!

履いていたのは普通のスニーカーなので雪道に適した靴ではないと言えばそうなのですが、それにしても、ほぼ平坦な道でここまでツルツル滑って前に進めないというのは相当です。

ドアを開けて車外に出て、リアに回ってハッチゲートを開けてチェーンを取り出して・・・という間に5回ほど激しく転倒しました。チェーンを装着して再出発するまでに10回くらい転んだと思います。それは他の人も同じようで、皆スッテンスッテン転んでました。

しかも、それはこの多重事故の現場となったほんの20mほどの区間だけの事で、それ以外の場所ではそこまで滑らないんです。

要は、このほんの20mほどの区間だけ、何故か異常にμの低い「魔のスリップゾーン」が出来上がっていたという事なんです。

なので、そのゾーンに入っていない後ろの車の人たちには、何故前方でこれほどに車が路肩に吸い込まれたり、人々がすっ転んでいるのかが全然理解出来ない、という訳です。まさに自車が滑り始める前の筆者がそういう状態でした。

下の写真はすっ転びながら魔のスリップゾーンの路面を写したものですが、極端なアイスバーンなどには全く見えず、見ただけではその前後の滑らない区画との見分けも全く付きません。

北志賀 よませ温泉スキー場 2021年12月31日 スリップ事故Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/4800 sec, ISO32)

なので、現に後ろの車の人が下りてきて「ここ右側から通り抜けられないの?」なんて言ってくるのですが、「いや、この車、四駆にスタッドレスなんです。それでも、この近辺だけは異常に滑って無理なんです」とスッテンスッテンしながら説明するとようやく納得して戻っていく、という状況でした。

ここだけ異常に滑る原因はよく分かりませんが、上の2枚の写真をご覧頂くと左側に「スリップ注意」の標識が出ているのがお分かり頂けると思います。つまり、ここが「魔のスリップゾーン」になり得る何らかの原因はやはり存在すると考えられます。Twitterで長野在住のツイ友さんがこんな分析をして下さいました。

Facebookの方でもやはり長野に縁のある友人が湧水説を唱えていたので、この線はあるかも知れませんね。それなら、この極めて限られた区画だけ異常に滑りやすくなっている事にも説明が付きます。いずれにしても、この手の標識はよく見た方が良さそうです。

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神の様な男性がチェーン装着を手伝ってくれる

チェーンを装着しようと、スッテンスッテン転びながらあたふたしていると、前の方から一人の男性が近づいてきて、信じられない事を申し出て下さいました。

「チェーン付けるの手伝いますよ!」

なんと!!これは夢でしょうか・・・実はチェーンは買ったものの、一度も装着の練習はした事が無かったので、こんな雪の中で付けられるだろうかと頗る不安だったのです。チェーンはお守りじゃないんだから・・・^^;

この男性、不運な事に前方で路肩に突っ込んでしまった車の方で、救助を呼んで待っている状況で他に出来ることがないから、という事でした。無線機で他の人と話していたので、スキー場の関係者の方なのかも知れません。筆者としては申し訳ない気持ちでしたが、一方で周囲では渋滞が酷くなってきており、一台でもこの場から脱出させる事が、救助を待っている方々にとっても役に立つだろうと考え、お言葉に甘えることにしました。

前の記事で触れた通り二人がかりでもチェーン装着は難儀しましたが、15~20分程で装着を終える事が出来ました。チェーンを巻いてしまえばそこは水を得たパサオ、何のことはなく発進する事が出来ました。

数年前にもやはり寒波の志賀高原で、上り坂で進めなくなった前愛車プジョー308SWを、神のようなクロカン四駆のドライバーが牽引してくれましたが、大変な時ほど人の優しさに触れる喜びがあります。

さて、すっかり筆者とパサオも立ち直ったところで、先程の男性に

「他の車にチェーン付けるのをお手伝いしましょうか?」

と申し出たのですが、坂の上の方の人と無線でやり取りしていた彼曰く

「ありがたいんですが、そもそもチェーンを積んでる車がほとんど居ないみたいなんです」

とのこと。これは・・・ちょっと言葉を失いました。チェーンを装着しなければ、この魔のスリップゾーンを通り抜けることは容易ではありません。ということは、この渋滞が解消する目処が全く立たないじゃないか・・・と。後方の(チェーンを持たない)人達は一体この後どのくらいここに足止めされるんだろう・・・。

あとは除雪や砕氷の装備を持った地元の方々が到着して雪に隠れたバーンの砕氷などをしてスタッドレスでも通れるようにするのを待つ、という感じになるのでしょうか。大変だ・・・。

というか、チェーン積んでてマジで良かった・・・

パサートオールトラック チェーン装着Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/1600 sec, ISO32)

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それでもパサオは踏み止まった

こうして無事に悪夢の現場を抜け出した訳ですが、こうして反対側から見ても壮絶な光景ですね・・・悪路に強いと言われるデリカD:5もこの状況です。

北志賀 よませ温泉スキー場 2021年12月31日 スリップ事故Apple iPhone 12 Pro, (6mm, f/2, 1/1500 sec, ISO25)

逆に今思えば、こうして同じ様にスタッドレスを履いた多くの車がブラックホールに吸い込まれるように路肩に突っ込んでいる状況で踏み止まってくれたパサートオールトラックは、その重心バランスや4MOTIONを始めとする各種制御の緻密な連携など総合的な素性の良さ・性能の高さが有ったからこそ突っ込まずに済んだ可能性もあるのかな、と思ったりしています。

検証の方法はありませんが、とにかく最後に4つの足で踏ん張ってくれたのはパサオに他ならないので、頼れる相棒に感謝です。

パサートオールトラックは雪道でも頼れる相棒@大寒波の志賀高原
こんにちは。2021-2022年の雪山シーズンに突入した10max(@10max)です。 シーズンインは、2021年の大晦日から2022年1月2日にかけての2泊3日の年越し渋温泉・志賀高原ツアー!我が家の恒例のエリアなのですが、年越しでの訪...
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教訓:チェーンは常備、町でも積雪なら早めに装着を!

いやほんと、筆者の雪山運転経験の中でもトップの恐怖体験でした。

ですが、ではものすごく特別な事を学んだかというと微妙なところです。正直なところ、今回のように突如現れるスリップゾーンは予見する術がないと思います。せいぜい「スリップ注意」の標識を見逃さずに、見かけたら速度を落とすくらいでしょうか。

なので、改めて肝に銘じたのはごくごく当たり前のことです。

当たり前の教訓
  • 雪山には(「四駆×スタッドレス」でも)必ずチェーンを持っていく
  • 麓の町でも車通りで積雪なら早めにチェーン装着

1つ目は簡単ですね。上でも触れましたが、我が家はチェーンを積んでいたので辛くもあの魔のスリップゾーンから脱出することが出来ましたが、もし無かったら旅の行程や家族の疲労度合いも大きく変わっていたかも知れません。簡単なことですし、今回使ったチェーンは5千円もしないので、常備しておくに越したことはないでしょうね。

なお、特に輸入車の場合タイヤハウスのクリアランスが狭い事が多く、チェーンが細く輸入車対応を謳ったものが必要である場合があります。ディーラーにもご確認の上ご購入下さい。筆者は下記のチェーンを使用しています。

さて、ちょっと難しいのは2点目、「どのタイミングでチェーンを装着するか」です。完全に筆者の個人的な見解ですが、一つの目安は、「麓の町でも車通りで積雪していれば迷わずチェーンを装着すべし」ですね。今回で言えば、志賀高原の麓にあたる渋温泉街や湯田中辺りでも積雪があるような場合ですね。

渋温泉街などでは車通りでは積極的に雪掻きをしています。それでも積雪が残っているということは雪掻きが追いつかないほど降雪があるということなので、当然山の方ではそれ以上にシビアな状況になっている事が想定されます。実際、数年前にプジョー308SWが志賀高原に登るワインディングでスタックしたのも、そして今回も、いずれも渋温泉街でも大いに積雪がある状況でした。そして、その様な状況ならチェーンの痛みを気にする必要もないですから迷う必要はあまり無いですしね。

ちなみに今回、スタッドレスを履いたゴルフが渋温泉街の緩斜面を登れなくてスタックしていました。毎年のように渋温泉に来ていますがこんな光景は(数年前と今回以外)見たことがないですね。やはり渋温泉街のこのメインロードでそれなりの積雪があるというのは相当な状況と言えます。

渋温泉 スリップ FFOLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (38mm, f/3.9, 1/320 sec, ISO200)

ということで中々大変な・・・そして記憶に残るツアー初日になりましたが、スキーを諦めて早々に投宿し、温泉と地酒を堪能しながらゆったりと日本人らしい大晦日を過ごしました。そうそう、魔のスリップゾーンで10回ほど転倒して手首と腰をしたたかに打ったのでそれも温泉と地酒で癒さないと^^(ちなみに執筆時点の今でもまだちょっと痛みが・・・)

次の記事からいよいよ渋温泉・志賀高原ツアーの本番です。お楽しみに!

パサートオールトラックでスキーに行く!渋温泉・志賀高原年越しツアーレポ一覧

パサートオールトラックでスキーに行く!渋温泉・志賀高原年越しツアー2021~2022
「パサートオールトラックでスキーに行く!渋温泉・志賀高原年越しツアー2021~2022」の記事一覧です。

渋温泉 かめや旅館 大雪OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (42mm, f/3.9, 1/400 sec, ISO200)

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