フォルクスワーゲングループのEV推しの勢いが留まるところを知りません。
(その前にチャラい記事タイトルですみません・・・。)
さて、欧州を中心に2030年前後を見据えたEVシフト政策が打ち出される中、先日フォルクスワーゲンはモータースポーツからの撤退を宣言しました。電動化に経営資源を集中するため、とのことです。
また、ほぼ時を同じくして同じVWグループのアウディが、フォーミュラEから撤退しダカールラリーなどへ転向する事を発表しました。こちらもやはりEVに関して基礎研究的なフェーズからより規定が柔軟で実用的な実験の場への移行しようという意図があるようです(もちろん参戦費用も大幅に削減する事が出来ますが)。
そんなフォルクスワーゲンのEV戦略の旗印が「ID.シリーズ」。その中でもID.3は同社の看板車種であるゴルフと非常に似通ったディメンションを持っています。すると気になるのが、もしかすると2030年頃には伝統ある「ゴルフ」という車は無くなってしまうのか?という事。その肝となるのが各国の規制と同社のプラットフォームおよび車種ラインナップ戦略である訳ですが、それらを見ながら行方を占ってみたいと思います。
いち早くEV専用プラットフォーム・車種に舵を切ったVW
フォルクスワーゲンは2年前の2018年、EV専用の完全新規プラットフォームであるMEBを発表しました。日産リーフなんかの例もあるので、世界初、というのは語弊がありますが、その目標生産台数などを見るにつけ、ここまでの大胆な戦略の打ち出し方としてはかなり他メーカーを先行しているように思います。またグループ内のアウディとポルシェも、中大型車向けのMLBに対応するEV専用プラットフォームとしてPPEを共同開発しています。
それに伴い、車種展開においてもEV専用に新たなラインナップを用意しました。それが2019年末発売のID.3を皮切りとするID.シリーズです。これまでのモデル名と決別し、新たなブランドを打ち出した当たりにフォルクスワーゲンの本気度とMEBプラットフォームの革新性を覗うことが出来ます。
MEBは「走りの良さ」においてもMQBを凌駕する
さて、フォルクスワーゲンはことBEVという分野においてはMQBに完全に見切りを付けているように見受けられます。従来販売されていたe-Gofという車種は廃止され、BEVはID.シリーズに一本化されました。
当たり前と言えば当たり前なのですが、MEBというプラットフォームの内容を見る限りにおいては、EVとしての性能やメリットを引き出すという意味ではMQBでは全く対抗出来ない事が分かります。
例えば一番分かりやすいのは長大なホイールベース。下の写真はゴルフ8とID.3の比較ですが、ID.3の前後オーバーハングが非常に短いのがお分かり頂けると思います。
数字で見ても、全長ではゴルフの方が23mm長いのにホイールベースはID.3の方が129mmも長いのです。この広大な床下にバッテリーを敷き詰めつつ居住性を確保できる訳です。
ゴルフ8 | ID.3 | |
全長 | 4284mm | 4261mm (-23mm) |
ホイールベース | 2636mm | 2765mm (+129mm) |
バッテリー容量
(最大) |
35.8kWh
(e-Golf) |
77kWh |
航続距離 | 231km
(e-Golf) |
550km |
さらにMEBの重要な特徴の一つが、後輪駆動を基本としている点です。MEBではリアアクスルに組み込まれるモーターを主動力としています。もちろんEVなのでフロントにモーターを組み込む事でAWDも想定してるようですが、あくまでもフロントはオンデマンドで働く補助動力と位置付けているとのこと。
この設計が発進時のトラクションやハンドリングといった走行性能において大きなアドバンテージとなるのは言うまでもありません。低重心と相まってMQBを凌駕するポテンシャルを持つ、もとい、当然のごとく凌駕しない訳がありません。
つまり、MEBをベースとするID.シリーズは電動化のためだけのヤワなものではなく、ゴルフRやGTIと言ったスポーティモデルをも十分に受け入れる素地を持っていると考えるのが妥当です。
一転、VWと同じ道をたどり始めたPSA
さて、ここでお隣のPSAグループに目を移してみると、つい最近まではVWとは異なる戦略を採っているかのように見えました。つまり、PSAはこれまで、EV専用プラットフォームを開発せず、中型以上のEMP2および小型車向けのCMP/e-CMPというプラットフォームで内燃機関と電動車の両方を賄う方針を打ち出していました。今年7月に発表された208はその象徴で、共通のCMPプラットフォームをベースとし、同じ車種の中で内燃機関とBEVといった異なるパワートレインを選択できるという分かりやすい商品ラインナップを打ち出して来ました。
しかしそのたった1か月後の8月、電動車専用の「eVMP」と呼ばれるプラットフォームを開発中である、と突如発表しました。
MQBをベースとしたe-Golfから、EV専用のMEBベースのID.3へと舵を切ったVW。そしてマルチエネルギープラットフォームであるCMPベースのe-208を発売した直後にEV専用のeVMPプラットフォームを発表したPSA。これは偶然ではなく、必然的な流れなのかも知れません。
伝統の「ゴルフ」の名は途絶えるのか?
大きく分けて2つのの要素が影響しそうです。一つはフォルクスワーゲンの商品戦略、もう一つは各国の規制の行方です。
フォルクスワーゲンの商品戦略:ゴルフとID.3の併存の可能性
ある程度確実に言えそうなのは、BEVの分野ではゴルフの出番は無いのではないか、という事です。
まず、そのサイズやデザインから見てID.3がBEVにおけるゴルフのポジションを担うというのは間違いないでしょうから、BEVとしてID.3とゴルフが併存するという事はないでしょう。では次に、「ゴルフ」という車名が「ID.3」に取って代わる可能性は、というと・・・フォルクスワーゲンは電動化の旗印としてわざわざ「ID.」という言う新しいブランドを訴求している訳ですから、将来的に「今日から「ID.3」は「ゴルフ」という名前になります。よろしくね」と言う可能性はちょっと考えにくい気がします(笑)
すると唯一あり得るのは、PHVという形で生き残るという道では無いでしょうか。e-Golfは廃止されましたが、PHVについてはGolf eHybridという形で継続される模様です。
新車販売規制の行方:PHVは規制対象となるか
ではPHVというパワーソースは2030年以降も残るのでしょか。
これは非常に難しいですね。欧州では今のところ、ハイブリッドは規制の対象にしている国が多いですが、PHVについては明確に販売禁止の方針を打ち出していないようです。ただ、米カリフォルニア州はPHVも規制対象とするようなので、この動きが広がる可能性も無いとは言えませんし、比較的アメリカ市場を重視するVWとしても無視できない要素となるでしょう。
さいごに:不安と期待が入り交じるゴルフ、そしてVWの今後のラインナップ
10年も未来の話をしてしまいました。来年の話をすると鬼が笑うと言いますが、この記事などは軽く鬼に取り囲まれて爆笑の渦に飲まれるでしょうね。
しかし、車のモデルライフサイクルは8〜10年なんてざらなので、この数年でフォルクスワーゲンの2030年を見据えたラインナップの展望が少しずつ見えてくるでしょう。その時、1974年から受け継がれてきた伝統の「ゴルフ」という車がどうなっていくのか、不安と期待が入り交じる思いです。
それにしても、ゴルフやパサートといった既存車種名が残るのかどかも気になりますが、ID.シリーズの名前はどうなっていくんですかね。だって、Cセグメントのハッチバックが「3」でコンパクトSUVが「4」なんて、一体どうなってるんだろう・・・
もしかして、同じゴルフベースのT-Roc相当が「4」でティグアン相当が「5」になるとか?それなら、Dセグメントのパサートが「6」で、トゥアレグが「7」?あれ、アルテオンは?
出題者「はい、ティグアンは何番だったでしょうか!」
回答者「え〜と、6番くらいだっけ・・・」
出題者「ブ〜〜〜!!5番でした〜!」
う〜ん、分かりづらいなあ(笑)
ワーゲンさん、そこんとこよろしくお願いしますね!
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