こんにちは。Macbook Pro (15-inch, Mid-2010)を未だに母艦として愛用している10maxです。一応20年近くIT業界に身を置き、かつ趣味の写真やブログを扱うガジェットやサービスには割と関心が高いのでこういった記事もたまに書きます。
さて、昨年暮れに初のM1チップ搭載のMacbookが発売され、そのSoCが中々にエポックメイキングなアーキテクチャで有ることを知るにつけ期待を高めつつ、本命である16インチのM1(X)搭載Macbook Proの発表を待っているところです。
その様な中、先日「春の祭典」なるAppleイベントが行われ、7色のカラーバリエーションを持つM1搭載iMacやiPhone 12の新色、紛失防止デバイス「AirTag」、Apple TV 4Kなどいくつかの新製品が発表されましたが、その中でもとりわけ筆者の関心を惹いたニュースがありました。それはiPad ProがM1チップを搭載してきたことです。
筆者は、今回iPad ProがM1チップを搭載してきたことが、2021年後半以降に登場するであろうApple製品、とりわけMacbookシリーズの方向性を示唆するのではないか、場合によっては一部のMacbook製品についてはディスコンにもなり得るのでは・・・などと考えています。多分に妄想を含んだ内容ですが、ご関心のある方は少々お付き合い頂ければ幸いです。
ここ10年、MacOSはiOSになりたくて仕方がなかった
後の話の伏線を兼ねて少しだけ歴史を振り返ります。昨年M1チップが発表され、ついにMacがiOSデバイスの流れをくむSoCを搭載する事になったわけですが、10年以上のMacユーザーならよく御存知の通り、それまでもMacはiOS端末に寄せ続けて来ました。
初めてMacOSがiOSに歩み寄り始めたのが2012年リリースの「OS X Mountain Lion」。iMessegeやメモ、リマインダー、通知センターなど、iOSに搭載されていた機能やアプリをてんこ盛りで盛り込んできました。また、iOSでは既にサポートされていたiCloudとの連携機能も多数実装されました。
その後2014年リリースの「OS X Yosemite」ではiOSデバイスとの通話・SMSが可能になったり、写真編集ソフトのiPhotoがiOSと共通UIを持った「写真」アプリに置き換わりました。
さらに2016年リリースの「macOS Sierra」ではiOSとの名称の整合性のため「OS X」という名称を廃止し「macOS」としました。MacでSiriが使えるようになったのもSierraからです。
このように、この10年ほどは古いアーキテクチャのMac OSが、より新しく直感的なUIを持つiOSにどんどん寄っていく、今思えばある種の過渡期だったと言えます。
「A」シリーズではなく「M1」を載せてMacからのラブコールに答えたiPad
この様にソフトウェアレイヤーでiOSに寄り続けたMacは、昨年のM1チップ搭載でSoCレベルでもiOSに大きく寄り添った訳ですが、最後の最後で今度はiOSデバイスの方からMacに一歩歩みを寄せました。それが、今回の春の祭典で発表された、iPad ProへのM1チップ搭載です。ポイントは、「A14X Bionic」や「A14Z Bionic」ではなく「M1」を積んできた点です。
従来の既定路線で行けば、iPad Proの2021年モデルは「A14X Bionic」あるいは「A14Z Bionic」という名称のSoCを担いでくるだろうと言われていました。iPhone 12シリーズに乗っている「A14 Bionic」の高性能版としてAppleが繰り出してくると目算されていたものです。ところがどっこい蓋を開けてみればMacと全く同じ「M1」チップが載ってきたという訳です。
もちろん単純に「M1」を「A14 Bionic」の延長線上にあるSoCと捉えることも広い意味では可能ですが、基本的にはM1は高性能なマルチタスクや冷却システムの導入も視野に入れたデスクトップアプリを前提としたSoCと言われています。そして最も分かりやすいのは、Macの「M」を冠していると推察される「M1」を搭載するということから、iPadもMacファミリーの一員になっていくのだというAppleの戦略的な意図が透けて見えると言えば勘ぐりすぎでしょうか。
いずれにしても、iPadがMacと同じSoCであるM1を搭載することで、ものすごく大雑把に言えばiPadでもMacと同じ事が出来るようになる、と言うことになります。
今後MacとiPadはどうなっていくのか?
昨年末のM1登場以来Appleが示している方向性を端的にまとめるとこういう事になるかと思います。
- MacとiOS端末が同じARMアーキテクチャのSoCを搭載、アプリのユニバーサル化(共通化)が進む
- iPadがM1チップを積むことでMacと変わらない処理能力を備えるようになる
これらを踏まえ、今後iPadとMacのあり方は次のように変わっていくのではないかと妄想しています。
iPadはMacファミリーに昇格し2in1的な端末になる?
Macと同等の処理能力を持つことでハードウエアとしてのポテンシャルはMacと同じになり、さらにソフトウエアもMacとの共通化・ユニバーサル化が進む、となると、これはもはやキーボードを持たないMacと言っても過言では有りません。
また、従来はMacとiPadでは画面解像度や入力インターフェースの違いなどで差がありましたが、少なくとも解像度は今や遜色ありません。小ぶりな11インチiPad Proでさえ2388 x 1668ドットと、筆者宅のMid-2010モデルの15インチMacbook Proよりも遥かに高解像です。画面サイズだってかつては11インチや12インチのMacbookやMacbook Airがありましたからね。さらに今回iPadが「Liquid Retina XDR」という、Macですらまだ実装していない最先端のディスプレイを搭載してきたことから、表示という観点ではMacとiPadの垣根は完全になくなったと言えます。
入力インターフェース、つまりタッチパネルの有無についても、SurfaceなどのWindowsでは既に実現している世界なのでこちらもユニバーサル化の大きな障壁とはならないでしょう。
従って、今後iPadはタッチパネル搭載2in1モデルとしてMacのバリエーションの一つに加わり、結果としてMacのラインナップは以下のような考え方になると言っても過言ではないのでは、と妄想します。
- ディスプレイ一体デスクトップのiMac
- 単体デスクトップのMac Mini
- クラムシェル型ノートのMacbookシリーズ
- タッチパネルディスプレイ搭載2in1のiPad
もっとも、OSは当面iOSのままでしょうし、「iPad」という製品名称を変えるのか、というとそれば別の話だと思います。あくまでも、「実質的なユーザー体験として」こういう捉え方が出来るのでは、というお話です。
Macbookはより大画面、高性能、高拡張性で差別化?
そうなると気になるのはMacbookシリーズの存在意義です。iPadがMagic Keyboardなどと組み合わされてSurfaceのような2in1端末として活躍するとなると、Macbookがそのうちディスコンになっちゃうんじゃない?てな懸念もチラついてきます。
筆者としては、「そうなって欲しくない」という希望が半分、加えて「恐らくそうはならないだろう」という予想が半分です。
その根拠として一番大きいのは、単純にiPadの画面サイズの限界です。現在一番大きなiPadは12.7インチですが、これ以上大きくするとタブレット端末としての使い勝手が著しく低下してしまうため、16インチMacbookの代替にはなり得ません。
次に、処理能力の問題です。M1チップは冷却ファンレスでの運用でも十分な能力を発揮しますが、やはり冷却システムを伴うことで初めて本来のパフォーマンスを発揮する事ができます。現状M1搭載モデルの冷却ファン搭載状況は以下のとおりです。
冷却ファン有無 | モデル名 | 画面サイズ |
冷却ファン搭載 |
iMac | 24インチ |
Mac Mini | - | |
Macbook Pro | 13インチ | |
ファンレス |
Macbook Air | 13インチ |
iPad Pro | 11 / 12.7インチ |
つまり、Macbook Proは冷却システムを備えて高パフォーマンスを発揮するモデルとして下段のiPad Proと差別化されて継続されると思って良いのではないかと思います。
巷では、今年後半に登場するM1搭載Macbook Proは画面の16インチ/14インチと、小型モデルの方が大画面化すると言われているのでディスプレイサイズの面でもiPadと差異化してくるでしょうし、廃止されて論争を呼んだSDカードスロットやHDMIポートなどが復活するといった噂もあるため、拡張性の面でも棲み分けが出来そうです。
Macbook Airの存続は黄色信号・・・かも?
ここで気になるのが「Macbook Air」の存在。上の表の下段でiPad Airと並んでいますね。つまりそこそこのパフォーマンスに留まるファンレスモデルとして被っています。
また、画面サイズについても13インチのMBAと12.7インチのiPad Proはほぼ重複しています(上の表であえて画面サイズを書いたのはこれが言いたかったため)。
さらにMacbook Airは1.29gという軽量さが売りの一つですが、12.7インチiPad ProとMagic Keyboardの合計も約1.3kgと、MBAと同等。なんならいざとなればキーボードを外してもっと軽量化して持ち運ぶことも出来る。
こう考えていくと、そう遠くない将来Macbook Airの存在意義が問われ、もしかするとディスコンになる可能性も十分考えられるのではないかと考えています。
筆者個人としては、仮にこうなるならなむしろ歓迎すべき方向性ではないかと思っています。もしもAppleが本当にMacbook Airのディスコンを検討するのであれば、当然ながらiPad Pro + Magic Keyboardの組み合わせでの使い勝手をよりMacbook Airでのそれに近づける商品改良を合わせて行ってくるはずで、それならばより可搬性の高いMacを求める層には良いニュースとなるのではないでしょうか。
ただ一方で、昨年末にMacbook AirにもM1チップを搭載してきた事を考えると、すぐにディスコンにするという事は考えづらいとも思います。
まあ、そもそも筆者の本命は16インチMacbook Proなのでそもそもどっちでもいい・・・あ、何でもないです(笑)
まとめ:M1が確実に新しい景色を切り開きつつある
昨年末、画期的なユニファイドメモリアーキテクチャを持つM1が、長年Intelチップ等x86系のアーキテクチャが付き合ってきた限界=CPUとGPUがメモリとの間のバス帯域を取り合うノイマン型コンピュータのボトルネックを、量産型コンピュータとして初めて突破するというニュースに、コンピューティングデバイスを取り巻く景色が変わっていく大きな転換点を漠然と予感しました。
そして今回、iPad Proという一枚の薄い板にMacと同じ高性能SoCが搭載される事でその1ページ目が早速開かれた訳です。
次に待たれるのは本命、恐らくM1チップの高性能版(M1X?)を積んで今年中に登場すると噂されるMacbook Proです。M1チップのフルパフォーマンスと新しいMacbookの姿に期待したいと思います。
(2021年10月22日追記)M1 Pro搭載MacBook Pro(16インチ)を購入しました!購入に至るまでの経緯や考え方などに関する記事をアップしましたので良ければこちらも御覧下さい。
コメント