こんにちは。赴任先のベトナムからちょくちょくアジアを旅している10max(@10max)です。
アジア各国の車事情の中で、ちょっと面白かったのがラオス。2023年の初めの旧正月休暇にビエンチャンに行ってみたら、びっくりするほどEV天国だったのです。
そしてその背景を色々調べてみると、EV一辺倒はいかがなものか、と以前から考えていた筆者も、ラオスが政府ぐるみでEVまっしぐらに進む事情には、むしろ大いに頷けるところがあるのです。
実際に行ってみたらEVだらけだったラオス
ビエンチャン入りした初日から、いきなり野生のフォルクスワーゲン ID.4 CROZZやID.6 CROZZをバンバン見かけて、何事かと思いました。日本でも未だに殆ど見かけないはずなのに、こいつらは何かの魔改造車両かと・・・
ところが、なんのなんの、VW ID.シリーズに限らず、BYDなどの中華EVに至っては街に溢れています。それもそのはず、BYDがラオスに進出したのは遥か昔の2009年と言うじゃあありませんか。日本ではつい1年くらい前までBYDなんて殆ど知られていなかったのに(日本では2023年1月販売開始)。
そしてID.4 CROZZについても、VW LaosのFacebook投稿を見る限り、少なくとも2021年10月にはラオスで販売されていたようです。日本でID.4が発売されたのは2022年11月22日なので、1年以上早かったことになります。
また最近のニュースでは、ベトナムでVINFASTブランドのEVでタクシー事業を営むビングループのGSM社が、ラオスのEVタクシー事業に参入しました。はやり経済合理性含めてラオスはEVとの相性が良いと見ているのでしょう。
ラオスがEVまっしぐらなのは実に合理的
さて、ではラオスでここまでEVが普及しているのは何故なのでしょうか。
筆者が最初に考えたのは、中国による陰謀論でした。
はい、全然違いました。
(まあ、残念ながら中国の政治・経済的支配力の影響は、少なからず受けているのでしょうけどね)
EV一辺倒は愚の骨頂、という話
ところで一般論として、自動車のパワーソース戦略におけるEVへの過度な傾倒にはリスクがあると考えています。
数年前に、「20〇〇年までにガソリン車新規販売禁止」という方針を各国・自治体が次々と打ち出し、深い議論無きEV一辺倒論に傾きかけて多くの車ファンがやきもきした時期があったのを覚えておられるかと思います。その頃、筆者も堪え難きを忍び切れず、荒ぶる筆を振るってこんな記事を書きました。
その後EUが一部の内燃機関を許容する方向に方針転換するなど、状況は少し軟化してきましたが、そのような中でEVまっしぐらで突き進む意外な国が、ラオスです。
しかし、その背景を理解した今、この方針には筆者も大きく頷けるのです。
ラオスのエネルギーミックスと経済事情はEVを指している
ラオスがEV普及を積極的に進める背景は非常に単純明快で、以下の2点。
- 水力発電大国である
- 化石燃料は輸入依存で高価
まず、ラオスは「東南アジアのバッテリー」の異名を持つほどの水力発電大国で、自国内で消費し切れず周辺国に電力を輸出しているほどです。
こんな感じ(↓)で、ラオスはメコン川の中流域に位置しており、かつ山岳地帯の割合が非常に大きいので、水量発電に実に適しているのです。
一方で、化石燃料はほとんど産出しないので、ほぼ全てを輸入に頼らざるを得ません。特にロシアのウクライナ侵略などによる燃料価格高騰も加わり、国内の水力発電エネルギーを活用する方が圧倒的に経済合理的なのです。
そのような背景で、ラオス政府は自国の余剰電力活用や化石燃料の輸入削減を目的として、自動車全体に占めるEVの割合を2030年までに30%とする方針を掲げています。
さらに、ラオス政府の思惑には含まれていないかも知れませんが、水力発電エネルギーを活用するというのであれば、燃料・電力の生成やバッテリー製造行程等まで含めた「Well to Wheel」の考え方に基づいても、ピュアBEVの方が有利と言えそうです。
この状況であれば、EVまっしぐら政策を否定する大きな理由は無いでしょう。どこかの政治家がパフォーマンスでEV推進を掲げるのとは別次元の実利(と環境への好影響)があります。
「パワーソース政策は単純一元論であるべからず」をラオスで学ぶ
ということで、思いがけず「車のパワーソース政策は単純一元論には収まらず、国や地域によって全く違うものになる」という実例を見せつけられた2023年のラオス旅行でした。
逆に、火力発電の影響で、空気を吸っているのか煙を吸っているのか分からない中国でEVが急速普及している状況には、恐怖しか感じません。
EVの話にしてもライドシェアの議論にしても何にしても、やはり旅で外の世界を見てみるというのは本当に大事だなと思う訳です。
コメント