こんにちは。「クーペSUV」という単語に食傷気味の10maxです。
今月3日、欧州で新生DS4が発表されました。見た瞬間「これは美しい」と思ったわけですが、同時に「このデザインはちょっと普通じゃないぞ」と感じたのです。しばらくそのインパクトの要因を紐解く事が出来ませんでしたが、少しずつ分かってきた気がします。
DS4のデザインは、「ハッチバック」と「クーペSUV」の両方の要素を取り入れていると言われていますが、むしろ「両方の既成概念を打ち破っている」とも言えるのではないか、と言う気がしているのです。そしてそれこそがDS4の「ちょっと普通じゃない」比類なきインプレッションを生み出しているのではないか、と。その辺りについて、極めて個人的な感想ですが、書き留めておきたいと思います。
なお、本記事はデザインという曖昧なものについての個人的な主観が前面に出ています。もし不愉快な思いをさせてしまったら大変申し訳ないですが、こういう好みの人もいるんだ、くらいに軽く流してくださいm(_ _)m
元祖クーペSUV、BMW X6に度肝を抜かれた
まずはクーペSUVの話です。時は2008年ころに遡ります。BMWは好評のX5の上モノをクーペ風に低く傾斜させたX6という車を発表しました。このエクステリアには度肝を抜かれましたし、今でも見慣れません。
そこそこ売れているとは訊いていますが、かなり好き嫌いの分かれるデザインではないでしょうか。そして、筆者個人としては、未だに受け入れるのが難しい代物です。
完全に個人的な感想なのでもし不愉快に感じられたら申し訳ないのですが、何というか、下駄の上モノだけスニーカーにしたようなアンバランス感というか、太ってるのか痩せてるのか分からない中途半端感というか、とにかくしっくり腹に落ちなかったんです。
しかしこの時点では「さすがBMW、何かとんでもないものを登場させたな」と、そのチャレンジ精神に敬意を表したものです。何事も新しいものを世に出す際には既存の価値観の破壊と再構築という産みの苦しみを伴うものです。
しかしその後、他ブランドも競うように「クーペSUV」ブームに追随しましたが、それでもやはり個人的な違和感を拭うデザインのモデルは表れませんでした。好きな方には大変申し訳無いのですが、「売れ筋のSUVにスタイリッシュなクーペスタイルを組み合わせてみよう」というマーケティング上のコンセプトがデザインよりも先行し過ぎてないか?確かにそこそこ売れてるらしいけど、ちょっと流行に迎合しすぎてない?なんて思ってしまいました。重ね重ね申し訳ありません。個人的な感想です。
それでもアウディQ3スポーツバックあたりではだいぶ洗練されてきたと感じますが、それでも「こんなにふくよかなクーペにするなら普通に角張ったQ3の方が良いんじゃないか」と思ってしまうんです。
同じアウディのクロスオーバー系でも極端に後端を丸っこくしないA4オールロードクワトロなんかは伸びやかでシュッとしていて非常に格好いい上に実用性も犠牲にしていないんですけどね。
ついにシトロエンが新型C4で「クーペSUV」を・・・
そんなクーペSUV界に、ついにフランスからシトロエンが殴り込みをかけます。2020年6月に発表された新型C4です(DS4クロスバックもごくたまに「クーペ風SUV」と言われたらしいですがあれをクーペ風と呼ぶのはあまりに強引な気がするので割愛)。さすがに最初にX6を見た時よりは見慣れたせいもあるのか、ディテールも洗練されているのか、そこまで違和感は感じませんでした。それよりも、このエクステリアを見た時、ある種のデジャブが襲ったわけです。
あれ・・・X6とそっくりじゃね・・・?(と、X6の写真再掲↓)
もちろんディテールは違いますが、シルエットはほとんど同じです。しかしそれはもしかすると必然だったのかも知れないのです。
新型シトロエンC4の生みの親はX6の生みの親だった
クーペSUVに生まれ変わったC4がBMW X6と似通って見える・・・それもそのはずです。2018年にシトロエンのデザイン部門のトップに就いてこの新型C4のデザインを主導したピエール・ルクレール氏は、実は過去にBMWで初代X6のエクステリアデザインを担当していたのです。
グローバルに人材が流動する自動車デザイナー界隈ではありがちな事ですね・・・ピエール・ルクレール氏はX6だけでなくX5のデザインにも携わっていたので、現状ほぼSUVに特化しているシトロエンにとっては願ってもない人財だったのかも知れません。ちなみに前任のアレクサンドレ・マルバル氏はこの時にPSAからメルセデス・ベンツのデザインスタジオのトップに転身したそうです・・・。
この新型C4をもって「これがシトロエン流か!」と思わせておいて実はX6の流れを汲んでいたり、シトロエンのデザインを率いた人物が実はその後メルセデスのデザインのトップになっていたりすると、ドイツだのフランスだのってあまり関係なくなるような気もしますね^^;
なお、このピエール・ルクレール氏、シトロエンのデザイントップになる前には韓国キアにいたのですが、同氏がキアからPSAに転籍する直前の2018年5月にこんなコンセプトカーを発表しています。これもどことなくX6やC4に通じるものがある気がしますが、もしかして同氏が手掛けたものなのかも?
さて、こんな具合で、フランス界隈のクーペSUVも同じ轍を踏んでいくのかなあ、と思っていたところで、DS4が登場したわけです。
ハッチバックとクーペSUV界の両方の常識を打ち破ったDS4
お待たせしました。DS4です。2月3日に欧州で発表された新型DS4は、それはもう目の覚めるような美しさで登場しました。
既存のCセグメントハッチバックと比べてもよりロングでローなフォルムは、個人的にはここ数年の間に登場した同カテゴリーのモデルの中でもピカイチではないかと感じています。「2020ワールドカーデザインオブザイヤー」を受賞したマツダ3も美しいのですが、決して負けないでしょう(個人的にはDS4の方が好み)。
下は先代DS4です。
先代DS4は2015年にシトロエンブランドからDSブランドに独立したモデルですが、この時はまだシトロエンのどこかファニーで可愛らしいシルエットが残っています。しかし新型DS4は明らかに筋肉質になり、スマートな印象です。それどころか、見慣れた他のCセグメントハッチバックと比べても比類ないスタイルであると感じます。一体何がそう感じさせているのでしょう?
圧倒的なロー&ロング&ワイドプロポーション
筆者が注目したのはそのプロポーションです。パット見、めちゃくちゃ低いですよね。実際どの程度ロー&ロング&ワイドなのか数字で見てみました。
全長と全幅に対する高さの比率が小さいほどロー&ロング&ワイドという事になるので、試しに「全高」を「全長+全幅」で割った値を代表的なCセグメントハッチバックと比べてみました。下の表の一番下の行を御覧ください。値が小さいほどロー&ロング&ワイドという事になります。
新型DS4 | 先代DS4 | プジョー308 | ゴルフ7 | マツダ3 | |
全長mm | 4,400 | 4,275 | 4,275 | 4,265 | 4,460 |
全幅mm | 1,830 | 1,810 | 1,805 | 1,800 | 1795 |
全高mm | 1,470 | 1,535 | 1,470 | 1,480 | 1,440 |
全高/(全長+全幅)% | 23.6% | 25.2% | 24.2% | 24.4% | 23.0% |
これを見て頂くと分かる通り、308やゴルフなどの主要Cセグハッチバックよりもロー&ロング&ワイドであり、かつデザインが高評価されるマツダ3に匹敵する程の地を這うような形状であることが分かります。
まずはこの高さと長さ・幅との比率が示す非常に低重心なプロポーションが、既存のハッチバックと比べてもより美しくスポーティな印象をもたらしているように思います。
従来のクーペSUVの概念をもぶち壊すDS4
では単に「かっこいいCセグハッチバック」として見惚れてニヤニヤしていればいいかと言うとそれだけでは片付けられない何かがあるのです。そう、そこはかとなく力強いSUV感をも醸し出す事でしっかり最近のトレンドにも応えている事に気付かされます。
分かりやすいところで言えばサイドの黒いアンダーモールであったり、20インチの大径ホイールやフロントの切り立ったグリルもSUVらしい力強さを表現しているように思います。
実際新型DS4に関する記事の多くで「クーペSUV」という単語が使われており、またDS側のコメントとしても「SUVクーペと従来のコンパクトハッチバックの両方の顧客にアピールするデザインを目指した」と引用されています。
つまり、あからさまではないものの、この車も昨今注目の「クーペSUV」界隈にこっそり殴り込みをかけて来ていることが窺われます(こっそり殴り込むなんてことが出来るのかはさておき)。
しかも、そのプロポーションはハッチバック以上にロー&ロング&ワイドなのです。決して取って付けたようなクーペスタイルではなく、本当にクーペのようなスポーティなスタイルなのに、そこはかとなくSUVらしい力強さをも演出するDSのデザイン力は、従来のクーペSUVのデザインに新たな方向性を提案したと言えるのではないでしょうか。
もっとも、走破性など一部のSUVとしての性能は犠牲にしているでしょうからそれはユーザーに判断が委ねられるところでしょう。
まとめ:新生DS4は多くの既成概念をぶち壊してどこへ行く
DS4のエクステリアデザインとはつまり、さりげなく力強いSUV風味をしっかり醸し出しつつも、典型的なハッチバックよりもロー&ロング&ワイドなスポーティプロポーションを持つと言う、従来誰もやらなかった試みを体現してのけたと言えるのです。それこそが新生DS4のエクステリアデザインの比類なきインパクトを生み出しているのではないでしょうか。
かつてのシトロエンはカーデザイン界を牽引していたと言われ、そこから派生したDSもその真価が問われてきましたが、個人的にはここ数年のシトロエン・DSは一昔前よりも印象が薄いと感じてきました。しかし今回のDS4は、ハッチバックとSUVの双方に様々なことを問いかける一石を投じたような気がしています。
まあ要するに、DS4欲しい〜〜〜(笑)
買いませんけどねw
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