先日発売されたAppleのiPhone 12シリーズにおける話題の一つに、「LiDAR(ライダー、と呼ぶらしい)」と呼ばれる技術の採用がありました。
この「LiDAR」というセンサーを巡って、iPhone12を契機に、車、そしてデジタルカメラと、図らずも本ブログのテーマのご近所さんでにわかにソニー界隈が面白い事になってきたのでちょっとまとめてみたいと思います。
「LiDAR」とは
「LiDAR」は「Light Detection and Ranging」の略で、光の反射によって離れた場所にある物体との距離等を検知する「ToF=Time of Flight」と呼ばれる技術の中でも最も先進的なもの。ざっくり言ってしまえば、従来の所謂レーダー(Radar:RAdio Detection and Ranging)の進化版です。
つまり文字通り、従来はRadiowave=電波(や超音波)で行っていたものをLight=光で行うのがLiDARと呼ばれる技術で、レーダーよりもより高精度な物体の検出(例えば距離だけでなく正確な立体形状の認識など)が可能になります(一方光を通しにくい状況では不利と言う弱点もありますが)。
※以上、素人がネット記事を読み齧って得ただけの雑な知識なので誤りがあったらすみませんm(_ _)m
このLiDARおよびToFセンサーデバイスを巡るソニー界隈の状況を、ファクトと一部の噂含めておさらいしていきます。
ファクト①:ソニーのToFセンサーはApple、サムスン、ファーウェイなどに供給される
今回iPhoneにこのLiDAR技術が使われることにより、カメラのAF性能の向上やARの活用が進むと言われています。
で、今回iPhoneに搭載されたLiDARセンサーのデバイスはソニー製であると報じられているんですね。
さらに記事には、これによりソニーはApple、サムスン、ファーウェイに対するToFセンサーの供給元になる、とあります。また当然お膝元のXperiaにも自社製ToFセンサーを搭載しています。
事実上ソニーのLiDARおよびToFセンサーは現時点ではスマホ市場におけるデファクトに近いところに居ると見て良いでしょう。
ファクト②:コンセプトカー「VISION-S」にも自社製LiDARセンサーを搭載
さて、スマホ界隈で「LiDAR」という言葉を聞くのは今回のiPhone12への搭載がほぼ初めてですが、実は自動車界隈では以前にもソニーのLiDARセンサーが話題に上っているのです。
そう、今年1月にソニーがCES2020で出展したEVコンセプトカー「VISION-S」にもLiDAR技術が使われているんです。
VISION-Sには、同社の車載向けCMOSイメージセンサーを中心に合計33個のセンサーが車の内外に搭載されている。内訳は、前方に3基のSolid State LiDAR(ライダー)、車両全体に13台のカメラ、超音波センサーやレーダー計17台で、周囲360度のセンシングを行っている。自動運転・ADAS(先進運転支援システム)としては(中略)高度な自動運転レベル2(レベル2+)相当の運転支援を高精度に実現しており、将来はレベル4以上の高度自動運転に対応することも目指すという。
Source:自動運転LAB
LiDARは自動運転レベル3の実現に必須
このLiDARという技術、自動車業界でも重要視されるのには当然な理由があります。それは、自動運転レベル3の実現にはLiDARセンサーが一つのカギになると言われている事です。
現状、高速道路など限られた状況でのドライバー操作必須による自動運転レベル2まで実用化されていますが(以前アウディA8がレベル3対応を謳ったが結局ボツに)、そこで使われているデバイスとしてはミリ波レーダーとカメラの組み合わせが一般的です。
このミリ波レーダーですが、上でも触れた通りLiDARに比べると精度が低く、数百mで数m程度の分解能に留まると言われています。これでは車両の前方にある物体が何であるかを正確に把握する事は出来ません。(そのためにカメラと画像認識を組み合わている訳ですが、それでも立体的な形状の把握は不可能です。)
一方LiDARではその精度は一気に高まり、かつ立体的に捉えられるため、前方の物体を正確に把握する事が可能になります。これが一般道を含めたレベル3自動運転には欠かせないのです。
ソニーのコンセプトカーVISION-Sには、そうした時代の先を見据えてソニーが提供できる技術のショーケース、という意味合いが込められています。その重要なデバイスの一つが自社製LiDARセンサーと言う訳です。
[PR]【頭金ゼロ!】お好きな新車に月々1万円から乗れる『MOTA定額マイカー』さらなる噂:デジタルミラーレスカメラ「α」シリーズにもLiDARセンサーを搭載か?
最後にこちらは最近飛び込んできた噂ですが、ソニーのデジカメαシリーズの情報サイトに以下のような情報が入ったそうです。
ソニーが2021年のiPad Proに使用されるAppleのA14Zチップの採用を検討していると述べていた。ソニーは、同社の今後のカメラに追加する、コンピューショナルフォトグラフィー機能に取り組んでおり、また、LiDIRセンサーの使用を開始する可能性が非常に高いと、彼は述べている。(中略)ソニーは撮像センサーとLiDIRセンサーの両方をAppleに販売しており、Appleと非常に良好な関係にあることを忘れてはいけない。
Source:デジカメinfo/sonyalpharumors.com
LiDARセンサーを使えば理論上は暗所AF性能の向上や被写界深度のコントロールなどで大きな進化が期待できます(まさにiPhoneでやろうとしてる事)。そしてLiDARセンサーの運用に求められる強力な処理能力を、Apple製のチップで賄おうとする動きもある、というのが上記の噂。
ソニーはこれまでAppleなどのスマートフォンメーカーに対してLiDARを始めとするToFセンサーを提供するベンダー、あるいはVISION-Sというコンセプトカーを提案する事で車メーカーへのセンサー供給ベンダーとして縁の下の力持ちとしてのポジションを採ってきましたが、この噂が本当だとすれば、今度は自社の競争力のあるデバイスを自社製品の強化のために使うという、少し毛色の異なる戦略にチャレンジする事になります。
しかし、それは十分に理に適っていると考えています。
スマホや車の最終製品ではソニーは市場を押さえている訳ではありませんが、ミラーレス一眼市場ではソニーがトップを走っており、デジタル一眼カメラにおける新技術もソニーαシリーズがリードしているというのが現状です。
つまりスマホや車と異なり、ソニー自らが市場をリードする製品で自社のセンサーがデファクト技術となれば、スマホにおけるLiDARセンサーと同様、デジカメ市場でもソニーのLiDARセンサーが高い市場シェアを獲れる、というストーリーが描けます。
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これはまさにCMOSセンサーの成功ストーリーそのもの
さて、ふと冷静になってみると、こうした戦略ストーリー、何となくどこかで聞いたことがあるような気がします。
そう、これはまさにソニーがこれまでCMOSセンサー事業で成功を収めているモデルそのものをなぞっていると言うことが出来るのではないでしょうか。ソニーのCMOSセンサーの市場シェアはデジカメ、スマホでは世界でトップであり、かつ自動車向けCMOSセンサー事業も成長しつつあると言われています。
今度はそれをLiDARセンサーでやってやろう、という意図が透けて見える訳です。勝手な空想ですが、でも十分にありそうな、かつ妥当な戦略ですね。
さいごに
これまでのミリ波レーダーを始めとするセンサーと画像認識AIは、主に平面のみを対象としてきました。しかし今後ソニー等ののToF/LiDARセンサーが新しい「眼」となり、それをGAFAを始めとするAIが「頭脳」として収集する事により、いよいよ人類は地球上の三次元物体の情報をも外部頭脳に蓄える時代がやってきます。
そうなると、運転において人間が果たす役割、カメラでの撮影において人間が行う作業が一段と減って来てしまう、と考えるのが一般的でしょう。
「それって楽しいの?」
って心配になっちゃうのが我々車好きであり、カメラ好きの性です(笑)
でも振り返れば車だってカメラだって20世紀~21世紀にかけてどんどん自動化、電子化が進みましたが、結局買うのは人間。手が掛からないものが良いユーザーにはそういう製品が、マニュアル操作による感性に訴えないと売れないユーザー層にはそういう製品が必ず存在してきました。
車はマニュアルじゃないと!って言ってた人がDSGやパドルシフトでウキウキ運転してたり、デジカメだってマニュアル操作を駆使しながらフィルム風味に現像したり、なんて楽しみ方が出来る世の中。決して悲観的になる必要はないでしょう。
むしろ未来にどんな楽しみ方が待っているのか、楽しみで仕方ありません^^
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