こんにちは。年始早々α7Cの箱を開けながら「あけましておめでとう」と言ってしまった10max(@10max)です。
前回の記事で、α7 IIIとα7 IVとの間で激しく迷い、気づけば玉手箱を開けた浦島太郎の様におじいちゃんになってしまいそうな程に迷った末にα7Cを購入した理由を詳しくご紹介しました。
しかし、α7Cは万人にオススメできるカメラでは無く、確実に使う人を選びます。その軽量コンパクトさ故に妥協している点もいくつかあるためです。筆者の場合、自分の撮影シーンや求めるものを突き詰めた結果、それらは問題ないと判断し、辿り着いたのがα7Cなので、優先した部分、割り切れる部分を割と明確にしています。
本記事では他のレビュー記事などでα7Cの「短所」としてよく指摘される6つの点と、実際に1ヶ月ほど利用してみてそれらの「短所」が実際に問題なかったのか、それは何故なのか、を詳しくご紹介します。ご自身の利用シーンや求めるものと照らし合わせて頂ければと思います。
同じ様にα7Cを検討されている方のご参考になれば幸いです。
α7Cのグリップが小さい点について
確かにα7Cのグリップそのもののホールド性能はお世辞にもよろしくありません。筆者自身、発売当初実機を見た際にはその点が一番気になりました。なぜせめてα7 IIやα6600などと同等のグリップにしてくれなかったのか・・・と。
実際にグリップだけでホールドする事は滅多に無い
しかし、実際にカメラを持ち歩くシーンを考えてみると右手のグリップだけでカメラを保持し続ける時間というのは案外短い、という事に気付きます。下の写真は筆者の自撮りですが、実は多くの時間はストラップで首に掛けつつ、撮影時には主に左手でさっとレンズをホールドして持ち上げ、右手は添える程度という感じなんですよね。特にフルサイズ用のレンズであれば、よほど小さな単焦点や暗いズームで無い限りそういう持ち方でないと撮れません。
実際に何度かα7Cを持ってストリートスナップを撮影しに出かけましたが、グリップそのものの小ささが気になるシーンは殆どない、というか、右手だけでホールドするシーンが殆どないことに改めて気付きました。たまにあるとすれば、上方から逆光気味に日光が射している時にファインダーを覗くと眩しくて見にくいため、その様な際に左手で日除けをする時くらいですかね。
ただ、仮に右手だけで保つ場合でも、筆者の常用レンズであるタムロン28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)程度の大きさのレンズであればそれほどホールドが厳しいという感じはしません。
逆にGMなどの大きく重いレンズを付けて複数のカメラを使い分けるような場合など、右手だけで保持する機会が多いと思われるユーザーはα7Cはあまり得策ではないでしょうね。
α7Cのメカシャッターが1/4000秒までである点について
α7Cは電子シャッターなら1/8000秒が使えますが、機械式シャッターは1/4000秒までです。ここも結構悩んだポイントなのですが、では実際にどの程度の頻度で1/4000秒を超えるシャッタースピードを使っているんだろうと言うのを調べてみました。
1/4000秒あれば97%カバー出来る(筆者の場合)
Lightroom Classicでは、シャッタースピードなどの露出情報で写真をフィルタリングする事が出来ます。その機能を使って調べてみると、ここ3年間で1/4000秒以上で撮影された写真は16,764枚中546枚、割合にしてたった3%程度でした。
しかもその殆どがF1.8やF1.4などの単焦点レンズの開放近くで撮った写真。ということは、その様なレンズを持ち出すときだけNDフィルターを持っていけばいい訳ですし、今やほぼ99%くらいタムロン28-75mm F/2.8 Di III RXD (Model A036)しか付けてないズボラ人間なので、この点はまず問題ないと考えました。
逆に言うと明るい単焦点レンズを多用するユーザーはこのシャッタースピード問題はよく考えた方が良さそうですね。
α7Cのファインダー倍率が低い点について
α7Cでよく指摘されるのがファイダー倍率の低さ、つまりEVFを覗いた時の画面の小ささですね。α7Cの0.59倍というのは、他のα機はもちろん、マイクロフォーサーズ機と比べても数字上は小さいものです。
見難いとは感じず、むしろ構図の確認が楽
ところが、筆者個人としてはあまり気になりませんでした。きちんと視度調整をすればくっきり見えますし、むしろ視線を大きく動かさなくても四隅まで見渡せるので、構図の確認や余計なものの写り込みの確認がスピーディに出来て好ましいと感じています。
もちろん個人差や好みはありますし、オールドレンズなどでMFを多用する場合には気になる点でしょうから是非実機で確認されて下さい。
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (25mm, f/3.2, 1/60 sec, ISO1000)
α7Cにはジョイスティックが無い点について
これもα7Cの短所としてよく指摘される点ですが、α7 IIIやα7 IVにある通称「ジョイスティック」がα7Cでは省略されています。所謂AFポイントをグリグリと移動させるやつですね。これが無い事を嘆いているα7 IIIユーザーのレビューは結構多いんです。
もはやジョイスティックの出番は殆どないかも
しかしこのジョイスティック、筆者的に特に要らないな、と思う理由(使った事が無いので半分想像)が以下の通り主に2点あります。
- 十字キーの方が好き
- リアルタイムトラッキングがあればAF枠移動の頻度は減りそう
一点目は個人的な感想なので身も蓋もないのですが、ジョイスティックって大まかかつ高速にAFポイントを移動させるには便利なのですが、細かい移動はやりにくい感じがするんですよね。真横に一点だけズラしたいのに2個動いちゃったり、斜めに動いちゃったり、とか。この点十字キーは1回押せば1回動くので、確実です。また、筆者はほぼ「フレキシブルスポット」と呼ばれるAFエリアのモードを常用してるのですが、このモードでは、決定ボタン(ダイヤルの真ん中の丸いボタン)を押すたびにAFエリア選択⇔固定を切り替えられるので、ジョイスティックで動かすのとさほど面倒さは変わりません。
次に「リアルタイムトラッキングがあればAF枠移動の頻度は減りそう」というのはどう言う事かをご説明します。このリアルタイムトラッキングですが、めちゃくちゃ使い勝手が良くて、どのAFモード(AF-S、AF-C、AF-A)であっても、親指AFの位置にある「AF-ON」ボタンを押せば瞬時に呼び出せるんです。
Apple iPhone 12 Pro, (4.2mm, f/1.6, 1/100 sec, ISO40)
例えばAF枠を「フレキシブルスポット」で中央固定にしておいて、そのAF枠で被写体を捉えた状態でAF-ONボタンを押せば、その後はずっとその被写体を(かなり強力に瞳まで)追尾してくれます。なので、スナップやポートレート的な用途では殆どのケースにおいてこの使い方でカバー出来ると思うんですよね。ジョイスティックでAF枠を動かすより余程速いです。
実際にこの1ヶ月近く使ってみて、ストリートスナップでは静物・動体に関わらず殆どのシーンを親指AFによるリアルタイムトラッキングで撮ってました。下の写真も、ちょうど自転車が通りかかったので左のピンクの花を中央固定のAF枠に合わせて親指AFのリアルタイムトラッキングで捉え続けて撮ったものです。昔ながらのS-AFによるAFロックからのカメラを振る方式よりも精度はずっと高そうです。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/800 sec, ISO100)
下は動体。お急ぎなのか結構な勢いで爆走されてるママさんでしたが、中央のAF枠をシュッとママさんの頭に合わせて親指でリアルタイムトラッキングON!で簡単に追尾AFしてくれます。しかも従来のAF-Cの様にAF枠で捉え続ける必要はなく、一度捉えればAIで自動的にママさんの頭を追い続けてくれる。ここまで来ると、ジョイスティックの出番はかなり限られるのではないでしょうか。風景など高い精度が求められる場面では、上で書いた通り十字キーで全く問題ないですし。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/500 sec, ISO100)
α7Cがバリアングル液晶である点について
これは必ずしも「短所」と言う訳ではなく賛否両論ある点ですが、背面モニターがバリアングルである点です。動画ユーザーはともかく、主にスチル派からはバリアングルはチルトに比べるとローアングルで撮る際にワンアクション多くてスピーディでない、という指摘があります。
バリアングルでもほぼワンアクションで横に開ける
しかし、実はE-620の時代からバリアングルに慣れてきた筆者に言わせるとそんな事はありません。強いて言えば、チルトで0.5秒かかるものがバリアングルでは0.8秒くらいになる程度です。
バリアングルでは、机上の論理では「まず横に開いて、次にクルッとひっくり返す」と考えられるためにツーアクション必要だ、と思われがちですが、実際に慣れてくると「横に開きながらひっくり返す」というワンアクションで横に開く事が自然に出来るようになります。なので問題有りません。
むしろ、縦構図のローアングルが簡単に撮れるようになるメリットの方が遥かに大きいと考えています。
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (25mm, f/2, 1/60 sec, ISO400)
もっとも「バリアングルではレンズと光軸がズレる」という点に関しては解決出来ないかも知れませんが、個人的にそれによる問題を感じたことが無いのでここでは触れません・・・。
カスタムボタンが少ない点について
最後ですが、これもα7Cの定番ツッコミポイントですね。カスタム可能なボタンはα7 IIIの11個からα7Cでは7個に減りました。また、純粋に「C」と名付けられたボタンに限って言えば4個から1個に減りました。
正直なところ、この点に関してはα7C推しの筆者もあまり弁護の余地がありません。カスタムボタンはシンプルに沢山有ったほうが良いと思います。
自分の使い方で妥協出来るか否かを見極める
あとは自分の利用方法で十分妥協出来るかどうかですね。まず、先程から爆推しの「リアルトラッキング」+「AF-ON」ボタンが搭載された事で、個人的にはまず一つカスタムボタンが不要になりました。それは「AFモード(AF-S、AF-C、AF-Aなど)」切り替えです。また、筆者の場合「RAWで撮っておいて細かいことはLightroomで現像」というスタイルであるため、ホワイトバランスなども常にオートなのでそれほど多くのカスタムボタンは必要としていません。
その点も含め、詳しい事は追々カスタム設定を追い込んでからレビューしたいと思いますが、筆者個人の使い方としては実効上問題ないと判断しました。逆によりシビアな現場などでスピーディかつ厳密に設定を変える必要があるユーザーにはメイン機としてはあまり向かないのは間違いないと思います。
さいごに:α7Cには小さなデメリットよりも大きなメリットが沢山
ということで、α7Cについてよく「短所」「デメリット」などと評されるポイントについて、実際どうなのか、そして、何故筆者が問題ないと考えたのかをご紹介しました。
下の記事で触れた通りα7Cは非常に新しいコンセプトのカメラであり、ざっくり言えばα7 IIIの中身を軽量コンパクトに詰め込んだ、と表現されるため、殊更に「α7 IIIに有ってα7Cに無いもの」が逆に目立つ格好になっているきらいがあります。
しかし、単純にα7C単体として使ってみてどうなのか、という観点で実際に使ってみると、それらは実は気にならず、リアルタイムトラッキングAFを始めとする新世代のAF性能や軽量コンパクトさと言ったメリットの方が遥かに大きいと感じました。
もちろんそれは筆者の使い方の場合であって、よりシビアな撮影シーンではカスタムキーの少なさやシャッタースピードの制限、ファインダー倍率などが問題になる場合もあるでしょうから、繰り返しになりますがご自身の撮影シーンや求めるものと照らし合わせて頂ければと思います。
ではよいカメラライフを^^
OLYMPUS E-M1MarkII, OLYMPUS DIGITAL CAMERA (25mm, f/2, 1/60 sec, ISO200)
コメント