ブログの分離・再編とデザインに時間を取られて久々に記事を書いている10maxです。やっぱり記事を書くのは楽しいですね。
先日、将来の次期愛車候補の試乗シリーズの一環でGRヤリス RZ“High performance”に試乗してきました。
事前情報やネット上の写真・動画ではかなり好印象を持っており、実際に乗ってみても多くの魅力を感じたのですが、一方で筆者が車に求めるものとは微妙にかみ合わない印象も持ちました。美点と割り切りが激しい車であり、人によっては全く違う感想を持つと思われますが、感じ方の一つとしてご参考になればと思います。
出会う前はGRヤリスにときめいていた
子供たちが独立した後にソロ、もしくは夫婦でスキーやキャンプを楽しむという目的に照らし、「AWDまたはFF」「出来ればMTを選択可能」「サイズはB~Cセグメント」という枠で考えた時に、GRヤリスが候補の一角に入ってきました。
そしてGRヤリスのレビュー記事や動画を眺めたり、東京オートサロンなどで実車を見るうちに、中々気になる存在へと膨れ上がってきた訳です。
サイズを超越したエクステリアのオーラ
気になり始めた理由の一つはエクステリアです。Bセグメントのヤリスベースの2ドアという、普通に考えれば実に小さな車であるにも関わらず、実車を見るともの凄いオーラを纏っていることを感じさせられます。近所の車庫にもGRヤリスが収まっていて、そこを通るたびにブラックのGRヤリスを見ては密かに眺めまわしていたのでした。
小さいボディに対してマッシブに張り出したフェンダー、引き締まった筋肉質なフォルム、大きく口を開けたグリル、ブラックの大径ホイールなど、単なるデザインだけでなく機能性の追求から生まれたボディはラリーに詳しくない筆者でも凄みを感じ取ることが出来ます。
SONY ILCE-7C, (49mm, f/4, 1/100 sec, ISO100)
WRCホモロゲーションモデルと言う浪漫
GRヤリスにときめき始めたもう一つの理由は、WRCホモロゲーションモデルというストーリーと筆者の用途との相性です。
WRCで勝つための設計と熟練の匠によって組み上げられた作られたという生い立ちは単純に車好きを引き込む魅力があります。
そして、ラリーシーンを走るということは悪路での走行性能も重要なわけで、GRヤリスは単に足を固めたスポーツカーとは素性が異なると評されてます。最低地上高も130mmと、本格的なスポーツカーにしては一般的な乗用車レベルとなっています。(「GRコンサルタントという肩書きの方に「130mmくらいですかね?」と訊いたら「いや、もっと高いと思います!」と言われたのですが、調べたらやはり130mmでした^^:)
そんなGRヤリスは、ドライブも楽しみつつアウトドアで使い倒したい二刀流の筆者としては実に魅力的に映りました。
SONY ILCE-7C, (47mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO100)
そうしたことから少しずつ惹かれていった訳です。様々なレビューを見ても実に評価が高く、期待を膨らませていました。実はサイズ的には本命はCセグメントクラスが欲しいところなのですが、多少工夫をすれば乗り切れるだろうとも思い始めていました。
しかし人も車も、実際に会ってみると印象が変わるということが、良くも悪くも往々にしてある訳です。
GRヤリスのドライブフィールはやはり濃かった
さて、ともあれ試乗です。
が、週末の横浜ということで交通量も多く、試乗コースも全般的に車通りが多かったためほぼノロノロ運転に終始してしまいました・・・。「GRガレージ」を謳うディーラーさんの、しかもGRヤリスの試乗コースとしてはもう少し工夫の余地があるんじゃないのかな・・・というのが率直な感想でした。
とは言えそれだけの試乗でも、このGRヤリスと言う車を多くの人が称賛する理由の片鱗は感じることができました。
快適な乗り心地と気持ちよいシフトフィール
まず、想像通り乗り心地はスポーツカーとしては頗る良いです。ストロークが十分で、しっかり脚が動いている感は、同乗者からも文句が出ないレベルでしょう。ラリーコースの悪路での路面追従性を追求しているでしょうから当然と言えば当然かも知れません。
またMTのシフトフィールも非常に節度がよくカッチリ入るタイプで、先日試乗して激賞したFL1シビックと比べても遜色ない気持ちの良いものでした。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO125)
ACCとiMTで安楽運転も可能(営業さんファイト!)
またGRヤリスは快適性能もかなり充実しています。一つは先進運転支援機能(ADAS)。シビック同様、MTモデルでもアダプティブクルーズコントロールが使用可能で、設定速度を上限に前車に追従してくれます。
ただ、シビックと同様、発動には時速30km以上という制限があるのですが、今回の試乗では渋滞がひどく、前に車が詰まってて30km/hをなかなか超えられないか、前に車が全然居なくて追従する車がいないかの二極端だったのであまり試せませんでした(笑)
ついでに言うと、試乗の最初に、同乗してくれた営業さんに「ACCが使えるのって30km以上ですかね?」と訊いたところ「10km以上です」と言われたのでそのつもりで走っていたのですが、(上記の通り実際は30km/h以上だったので)何だか思ってるのと違う・・・となり、「おかしいですね・・・」と言うと「あ、すみません、30km以上でした」と言う有様で、ACCの使い勝手はあまり試せませんでした(苦笑)
また、GRヤリスにはiMTと呼ばれるレブマッチング機能が備わっており、発進やシフトチェンジの際に自動で回転数を合わせてくれます。シフトダウンの際にも、ブリッピングという程の迫力はありませんが、密かに回転数を上げてくれているのが分かります。これは安楽に走りたい時や同乗者が居る時は便利な機能ですね。
SONY ILCE-7C, (43mm, f/4, 1/50 sec, ISO500)
3気筒のイメージを覆す高回転の吹け上がり
そしてやはりGRヤリスの最大の見せ場はエンジンでしょう。本格スポーツモデルにも関わらず排気量はわずか1.6Lで、しかも直列3気筒ターボ。この構成で272ps/370Nmを発生するというのだから、逆に興味をそそられます。
出だしは非常に軽やかでトルクフルですが、特に特筆すべきところはありません。何しろ最近の3気筒エンジンはよく出来ていて、低回転から力強くボディを押し出すトルクとビート感のある特性は、プジョーやフォルクスワーゲンの3気筒ユニットでも体験済みです。
しかしGRヤリスの3気筒ユニットはそこから先が決定的に違います。所々で踏み込んだりも試すことが出来たのですが、回していくほどに高まるその咆哮とスムーズな吹け上がり、それに伴う異次元の加速は実に驚異的で、前評判を裏切らないものでした。
これまで経験した3気筒エンジンでは、実用域では非常に快活であるものの、高回転まで回していくとどうしても雑味と振動が気になり、伸びもイマイチでしたが、このGRヤリスのエンジンは3気筒ユニットに対する印象を完全にひっくり返してくれました。
SONY ILCE-7C, (56mm, f/4, 1/80 sec, ISO100)
ドライバーズシートで「ときめき」を感じなかった
「おっさんが何を血迷って『ときめき』とか言ってんだよ!」という突っ込みは忘れて頂き、ここからは上手く伝えるのが少し難しい内容なのですが、頑張って筆を進めます。
まず前提として、車に何を求めるのかは人それぞれ全く異なるという事があります。
その上で、もしもAさんという人が車に求めるものが、エンジンや駆動機構等のパワートレインやラリーカーらしいマッシブで引き締まったエクステリアなどであるならば、あるいはWRCホモロゲーションモデルであるというストーリーに非常に惚れ込んでいるのであれば、このGRヤリスと言う車は現在日本で手に入る車の中で最高レベルの魅力を持つでしょう。
しかし、筆者の場合はどうもそうでない様に感じられました。最初にGRヤリスに乗り込んだ時にも、そして試乗を終えて改めて振り返ってみた時にも、「もっとこの車に乗っていないな」という感情があまり湧き上がって来ませんでした。それを筆者は「ときめきを感じなかった」という四十路のおっさんが使うべからざる表現で記した訳ですが、その理由は大きく2つありました。
※そして、しつこいようですが、これはあくまでも「筆者が車に求める価値観」に基づいてそう感じただけであり、GRヤリスに対して低い評価を下すという意図は毛頭ありません。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/5, 1/30 sec, ISO640)
GRヤリスの内装はシンプルに「ヤリス」である
一つ目は、インテリアのデザインと質感です。GRヤリスの内装は決してチープという訳ではなく、ヤリスという車を考えれば十分以上です。しかし、ときめく程キラリと光るものを感じなかった、とうことです。
GRヤリスの内装の、通常のヤリスからの差別化点はさほど多くはありません。専用パーツは本革巻のステアリングホイールやシート、アルミペダルなど一部に留まり、インパネやセンターコンソールなどは通常のヤリスと共通のハードプラで覆われています。上質さであるとかお洒落さ、という要素はあまり追及されていません。
しかしヤリスという車は元々そう言った位置づけの車ではありませんし、むしろ人によっては潔く、美しくすら映るでしょう。ベースのヤリスとGRヤリスの数百万円のコスト差は、ラリーで勝つことを目的として投じらたものなのですから。その機能美に惚れ込める乗り手にとっては一切問題ないどころか、自慢すらしたくなるでしょう。
しかし、筆者の場合はそうではなかった、という事です。これまで乗ってきた車はいずれも、インテリアに惚れた、という部分が少なからずあります。車を所有していて一番長く目にするのがインテリア。筆者はよく「車の外装は恋愛、内装は結婚である」と事あるごとに言うほどに内装を重視するタイプなので、インテリアが好みに合わないことは致命的なのです。
しつこいようですが、チープだとか質感が低いなどと言っている訳ではなく、筆者の感性にはそこまで合わなかった、と言うだけの話です。
SONY ILCE-7C, (32mm, f/4, 1/40 sec, ISO200)
高いシートポジションも好みではなかった
GRヤリスのシートポジションは意外なほどに高いです。正確に言うと、当然高さ調整は可能なのですが、最も低い位置でもかなり高いのです。
これはWRCを意識しての意図的なものであることは言うまでもありません。素人ながら、ラリーでは周囲や路面の状況の把握が非常に大事なので、実に合理的かつ機能的と言えます。
一方筆者は、割と低いポジションが好みなんですよね・・・。スポーツカー的な囲まれ感と言うか。SUVだったらこの目線の高さでしっくり来るんでしょうけど。
これは単純に好みの話なのでこれ以上説明はしません。ただ、ドライバーズシートに収まった時のときめきがあるかどうかって、地味にこう言ったところも関係があるんだろうなと思います。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO125)
まとめ:美点と割り切りが極端なGRヤリス、ぜひ実車に乗ってみるべし
ということで、WRCホモロゲーションというストーリー性やエクステリアなど事前に既に好印象な点が多く、また乗ってみてもパワートレインや乗り心地、運転支援機能などの魅力も感じたGRヤリスでしたが、一方で、やはり実車を見てみると、コストが掛けられた部分が割と偏っている車だな、という点もまた感じたのでした。それがたまたま筆者の感性とは噛み合わなかったのかな、と。言い方を変えれば、筆者の方がGRヤリスのターゲットユーザーではなかったのでしょう。
特に中間グレードのRZやトップグレードのRZ“High performance”など、400万円前後のモデルの場合、人によってはその価値を感じない可能性もあるので、ぜひ実車のドライバーズシートに収まり、試乗して自らの心に問うてみることをお勧めします。
やっぱり車は実車を見て惚れられるかどうかだな~、と今回改めて思いましたよ。
※ただ、自分でもよく分からないのですが、今回の試乗に関して言うとディーラーさんの対応(いろんな情報間違い)や渋滞オンリーの試乗コースなども、心理的な「ときめき」に影響した可能性は否定出来ませんけどね^^:
※同じGRの兄弟車でもときめいた車はこちら↓
SONY ILCE-7C, (36mm, f/4, 1/125 sec, ISO100)
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