パサートTDIのターボラグ、そして「ディーゼルは本来低トルクである」という特性と付き合う | パサートオールトラックオーナーレビュー

これがドッカンターボってやつか。

パサオ君ことパサートオールトラックの心臓部は最高出力190ps、最大トルク400Nmを発生する、筆者にとっては宝の持ち腐れといっても過言ではない頼れる相棒だ。何しろ前愛車プジョー308Wの156ps・240Nmだって全くもって充分だったんだから、パサオ君の能力に何の不満もあろうはずがない。以前からご紹介している通り、このディーゼル離れした高回転型TDIは回せば回すほど気持ちの良い素晴らしいユニットだ。

パサートオールトラック | 君の声が聴きたくて / パサートTDIの本気モードは想像以上だった | オーナーズレビュー
まあよくもこんな昭和な記事タイトルを思いつくものだなと我ながら悦に入ってます。 はい、コテコテの昭和生まれ昭和育ちなんで、...

一方、パサオ君が我が家にやって来て数か月、コロナ禍の中でも徐々に色々な走行場面を経ていく中で、発進時の極低回転域でのもっさり感が少しずつ気になってきた。そしてそれには、後述の通り「ディーゼル=高トルク」というのが大きな勘違いであったという事実も関係することが分かってきた。

今回はその辺りのインプレッションや筆者なりの分析、そしてアクセルワークについて少し考えてみたい。もっともアクセルワークについてはまだまだ自分の中でも確固たるものには至っていないので、今後皆さんのお知恵も拝借しながら改善していく端緒としたいと思っている。

パサート メーターApple iPhone XS, (4.25mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO320)

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群馬の町中の上り発進で気付いたギクシャク

「出だしが多少もっさりするかな」

平坦な都内の一般道をゆるりと流している間、もしくは首都高速で気持ちよく踏み込んでいた時にはその程度の感想を持つくらいで、あまり気になっていなかった。

ところが先日群馬の川場村の方へ一泊旅行に出かけた際、それまであまり経験してこなかったシチュエーションで、そのもっさりがよりハッキリと気になる場面がしばしば訪れた。

例えばアップダウンの激しい一般道の、上りでの発進時。前はガラガラなので気持ちよくスピードを乗せたいのだけど、平坦な道に比べてトルクが乗ってくるまでが若干長く感じるのだ。

あるいは、幹線道路沿いのコンビニの駐車場から出る際に、流れてくる車列の隙間を狙って車道に出て合流するような場合。スッと発進してスッと流れに乗りたいのだが、上手くいかず少しギクシャクしてしまった。

パサートオールトラック 温泉旅行 ロングツーリングOLYMPUS E-M1MarkII, (60mm, f/4, 1/3200 sec, ISO200)

本気を出すまでの「タメ」が大きい

そのギクシャクの理由として、これまで上の記事などで筆者が美点として語ってきた「高回転型」である事が主な要因であると考えていた。

パサートシリーズのEA288という型式のフォルクスワーゲングループの主力ディーゼルユニットは、搭載する車種やグレードによってセッティングを変えている。日本市場で提供されているのは以下の三種類だ。

車種最高出力最大トルク
パサート(含ヴァリアント、オールトラック)190PS/3500-4000rpm400N・m/1900-3300rpm
シャラン177PS/3500-4000rpm380N・m/1750-3250rpm
ゴルフ(含トゥーラン、ヴァリアント)、ティグアン150PS/3500-4000rpm340N・m/1750-3000rpm

上の表でお分かり頂ける通り、パサートに搭載される190ps版だけが最大トルクの発生開始回転数が1900rpmと高めに設定されている。その分上までトルクを維持するので回した時にはメリットを発揮するのだが、発進時にはパワーバンドに到達するまで少し「待たされる」事になる訳だ。

ちなみにガソリン車と比べるとどうかというと、同じパサートやゴルフなどに搭載されるガソリンユニットであるTSIエンジンのピークトルク250Nmは1,400rpmからとかなり低い回転数から発揮される。また前愛車のプジョー308SWのガソリンターボもやはり1,400rpmで最大トルク240Nmを発生する。

しかもパサオ君ことパサートオールトラックは車重が1,680kg(さらに筆者のパノラマ電動ルーフ装着車は1,700kg)と重量級なのでターボ過給が始まりピークトルクを迎えるまでのもっさり感はゴルフTDIなどと比較するとより顕著になる。

【試乗】VW ゴルフ TDI | 実用的なパワーと居住性が欲しい方に | パサート、ティグアン、マツダ、プジョーとのディーゼルフィーリング比較も
我が家のパサオ君ことパサートオールトラックのDiscover Proの地図データのアップデートのためにディーラーへ行って来ました。地図データのアップデートにはWindows PCが必要なのですが、筆者宅にはMacしか無いので^^; ...

そもそも「ディーゼル=高トルク」では無かった

そこで筆者の中で一つの疑問が浮かんだ。

「いくらトルクピークまでのタメが大きくたって、そもそもディーゼルは低速トルクが大きいんだから、加給が無くたってガソリンエンジンよりも出だしがモッサリするのはおかしいんじゃないか?」

当初パサートTDIの出だしのモッサリ感に気付き始めた頃は、「いやいや、トルクピーク時とのギャップが大きいからそう感じるだけじゃないか」などとうやむやにして来たが、上記の群馬旅行を始め色々な場面での経験を経るにつれて、上の疑問は思い込みなどではなく的を射ている事に気づき始めたのだ。

そこで色々考えているうちにある事実に気がついた。

そもそも現状「自然吸気ディーゼルエンジン」など存在しない(たぶん)

そう、少なくとも今日、ディーゼルと言えば漏れなく「ディーゼルターボ」だ。

何故そんなそもそも論に気付いたのかというと、そもそも低回転から高トルクなのであれば、ターボ過給しないディーゼルエンジンがあったっていいじゃないか、と思ったのだが、そう言えば「NAディーゼル」なんて聞いたことがない。少なくとも乗用車では。

で、実際に調べてみるとそれは間違っていないことが分かった。

一方で、ディーゼルエンジンはまるで様相が異なる。乗用車用から大型トラック用まで、ほぼすべてがターボ過給エンジンだ。一体この違いは、どこから来るのだろうか?答えは簡単で、ディーゼルエンジンは過給しないと、商品性も環境性能も成り立たないからだ。

(Source:Motor-Fan.jp

実はターボ過給無かりせばガソリンより非力なディーゼル

ではこの「商品性も環境性能も成り立たない」というのはどういう意味だろうか。同じ記事中に次の様に説明がある。

ディーゼルは圧縮上死点直前で燃料を噴射するため、理論空燃比相当の燃料を噴いても空気とは完全には混じり合わず、燃え残りが出て黒煙がモウモウになる。だから全負荷時でもリーンで燃やすしかなく、トルクが出ない。排気量が同じ無過給エンジン同士で比較すると、ディーゼルはガソリンエンジンの6〜7割しかトルクが出ないのはこのためだ。

(Source:Motor-Fan.jp

少し難しいのでかいつまむと、「本当はもっとバンバン燃料を噴いてパワーを発生させたいんだけど、それやっちゃうと燃えカスだらけで黒煙モウモウになっちゃうから燃料成分少なめの混合気で燃やしちゃってる(リーンバーン)んだよね。だからガソリンよりもトルクが小さいんだよね」

なんと。そもそもディーゼルはトルクが出ないとのが内燃機関界隈での常識ということか。別の記事でも次のような記述があった。

以前はノンターボのディーゼルエンジンを搭載した乗用車が日本にもありましたが、これはパワー、トルクともに恐ろしく小さいもので、危険なほど遅い代物でした。でも、現在はターボチャージャーを組み合わせることによって、実用的で使い勝手のいいディーゼルエンジンが多く見られるようになりました。

(Source:WebCG

なるほど。そうだったのね。合点。

しかしここで新たな疑問。そうは言っても今日、現実にディーゼルターボは同排気量のガソリンターボより高トルクを実現している。それは何故だろう。

ディーゼルが高トルクなのはターボによる伸びしろが大きいため

この点に関しては以下のような説明がある。

もともと、ディーゼルエンジンは、ターボと相性がいいのです。ガソリンエンジンの場合、過給圧を上げすぎると自然発火で異常燃焼が発生してノッキングを引き起こしてしまいます。しかし、ディーゼルはもともとプラグがなくて自然発火を利用しているのですから、そんな問題は起こりようがありません。

(Source:WebCG

つまり、ディーゼルの場合はガソリンと異なり、過給のし過ぎによるノッキングを気にする必要がないため、限界まで過給圧を高めることが出来るため、高トルクを引き出しやすいという訳だ。これも納得。

パサート ヴァリアント オールトラック 外装 エクステリア 外見 エンジンルーム ボンネットOLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (42mm, f/3.9, 1/80 sec, ISO400)

「性能曲線」は数字のマジック

しかし、それでもまだ最後にもう一つだけ納得の行かない点がある。では性能曲線上、1,000rpm台の極低回転ではディーゼルよりガソリンの方がトルク値が小さいのなら全て納得が行くのだが、記憶する限りそんなことは無かった気がするのだ。

性能曲線上では低回転でもガソリンよりトルクが大きいように見える

ではここでTDIとTSIの性能曲線を比較してみよう。1枚目がTDI、2枚目がTSIだ。

パサートTDIの性能曲線(Responseより拝借)

パサート TSI 性能曲線

TSIの性能曲線(Motor Dayより拝借)

やはり記憶は正しかったようだ。上図でそれぞれの赤い曲線の左端の急激にトルクが落ち込んでいる部分を見ると、TDIでは1,500rpmでもまだ320Nmほどのトルクを得ているが、一方TSIでは1,500rpmで250Nmほどだ。つまり、エンジンスペック上は1,500rpmまで回転を下げてもTDIのトルクはTSIの最大トルクを上回っている計算になる。

しかし個人的な感覚ではそんなことはなく、発進時の1,500rpm辺りではパサートTSIは同TDIに比べて同等か、ともすればより軽快な出だしだったというのが実感だ(下記試乗レビュー参照)。

【試乗】VW パサートヴァリアントTDIは回して楽しい上質・実用ディーゼルワゴン
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一体どういうことなんだろう。

実際のトルクの立ち上がりは「スペック+1,000rpm」

その辺りを調べてみると以下の様な記事が見つかった。

メーカーの公表値ではほとんどのダウンサイズターボエンジンの最大トルクは1500rpmあたりで発生していることになっている。だから1000rpm台前半でクルージングしているところから加速しても、すぐに最大トルクに達して「加速のラグ」がない、という。
これは一種の数字のマジックである。

(Source:Motor-Fan.jp

ふむふむ。マジックとな。それはどういうこと?以下は上記の続きである。

公表・届出される最大出力とトルク、そして性能曲線というのは、エンジン単体にプラス必要な補記類を付けて計測したもので、完成車体の車輪軸で発生する数値ではない。つまり無負荷、しかも全開なのだ。
実際の運転では出力軸から先の出力にはあらゆる負荷がかかる。駆動系の引き摺り抵抗にタイヤの転がり抵抗、多少の空気抵抗と、何より車体と乗員の重さだ。

(Source:Motor-Fan.jp

なるほど。まあ何となく想像に難くない。で、つまり?解説は続く。

高速合流でのダッシュでもない限り、加速時にスロットル全開にすることなどそうそうない。部分負荷、部分スロットルで、抵抗勢力との闘いにターボチャージャーが打ち勝って実際の加速に反映するのに、ざっと1000rpm分の回転数とそれに要する時間がかかるのである。

(Source:Motor-Fan.jp

これは非常に納得感が高い解説だ。つまり、1,000rpmの前半から確かにターボ過給が始まっていたとしても、そこから駆動系にトルクが伝わり様々な抵抗を押しのけて実効的に車体を押し出し体感に繋がるトルクが生み出されるまでに1,000rpmほどのラグがあるというのだ。

つまり、実効的には1,000rpm前半では過給前のトルク=ガソリンエンジンよりもトルクが小さい状態を引きずっている事になる。

加えて上の文章で興味深いのは、「高速合流でのダッシュでもない限り、加速時にスロットル全開にすることなどそうそうない。」という部分。そう、パサートオールトラックでは発進ベタ踏みこそしたことが無いが、70%くらいの比較的急な踏み込み発進をするとターボラグの「タ」の字も見せない豪快な発進を行うことが出来るのだ。さらに、パサートヴァリアントのTDI(FF)に試乗した際には発進時に90%くらいの「ほぼベタ踏み」をしてみたのだが、その際には軽くスキール音が鳴り響くほどの豪快な発進加速を見せた。つまり一気に最大の燃料噴射を行い最大過給まで持って行けば、徐々に抵抗を押しのける場合に比べてタイムラグが小さいという事である。

まとめ:ターボラグとアクセルペダルとの向き合い方

ずっと腹落ちしなかったパサートを始めとするTDIの発進時のもっさり感の原因については以下の様に理解する事が出来た。

  • そもそも過給しないディーゼルエンジンは同排気量のガソリンエンジンより非力
  • その状態から(ガソリンよりも高い過給圧で)過給をして高トルクを引き出す
  • その高トルクはエンジン単体のスペック上では1,000rpm台前半から発生し始めるが
  • 実効的にトルクが得られるまでにさらに約1,000rpmのタイムラグが必要
  • スロットル開度が小さいほどそのラグは大きい
  • よって通常発進では1,000rpm台前半ではガソリンよりもトルクが小さいと感じ得る

発進時のアクセルワークはジワッと

さて、ではこの様な特性を持つディーゼルターボユニットとどう付き合うか。

急発進をしたいのであればただアクセルを踏み込めばいい。上で触れた通り猛々しいほどの発進加速を見せてくれる。しかしそんな事をする機会は通常は無いであろうから、今回はスムーズにある程度気持ちの良いトルクを感じながら発進するには、という話だ。

今のところ自分の中で心掛けているのはこんなところだ。

  1. 最初は2~3割程度の開度で踏んでやり
  2. 2,000rpm手前くらいでグーっとトルクが乗って来るのを感じ始めたら
  3. さらにジワーッと踏んでいく

そうすると、ググーッと気持ちよく大トルクへと身をゆだねる事が出来る。

大事なのは、非力な状態から400Nmまでの上昇ギャップをなるべく緩やかな変化にしてやることだろう。

なお、このように気を使う必要があるのはあくまでも発進の時くらいで、既に走行中からの加速であれば基本的にターボラグやトルクギャップはあまり感じない。恐らく停車状態からの発進時に比べれば圧倒的に抵抗が小さいため、上で出てきた実効トルクまでの+1,000rpmのラグが極めて小さくなるためだろう。

「Sモード」は発進を鋭くしてくれる

もう一つのコツは、DSGの「Sモード」を活用する事だ。このモードでは多少クラッチの滑りが少なくなり、かつ低いギアをキープするので、発進や加速のタイムラグを吸収してくれる。ただしまだ動作の癖を把握しきれていないのでSモードについては追って詳しく検証してみたい。

 

引き続き、新たな特性やアクセルワークのコツなどが見つかった場合にはご紹介していきたい。また、皆さんの情報やお知恵も頂ければ幸甚です。

パサートオールトラック ペダルOLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (24mm, f/3.5, 1/60 sec, ISO5000)





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