変速フィールフェチの10max(@10max)です。こんにちは。
ベトナム赴任直前に駆け込みでスバル レヴォーグ STI Sport Rに試乗してきました!
ここ半年くらい、駐在から帰国後の次期愛車候補たちに試乗してきましたが(まだ赴任前なのに気が早すぎるだろ!って聞こえた気がしましたが風の音ですよね?)、ここへ来て2.4Lターボ搭載のレヴォーグやWRX S4に搭載されたSPT=SUBARU PERFORMANCE TRANSMISSIONの周囲での評判が中々良く、どうしても試したくなってしまいました。しかも長男が大のスバル好きというのもあり、試乗に連れて行ってあげたいなーというのもあり。
実は筆者的にはスバル車を買う事は当面無いだろうなと思っていたんです。というのも、筆者、学生時代の二輪車から始まり、その後MTのRX-8を初のマイカーにしてきた経緯から、ダイレクトで手足のように操れる操作感が大好きな変速フィールフェチなのです。となると、日本においてはBRZを除いて事実上CVT一本足打法になってしまったスバルは中々選びにくいのです(雪山やキャンプに行くのでBRZは厳しい)。
さて、そのような訳で、スバルが「CVTの逆襲」と謳うSPTが如何ほどのものかを中心に、独断と偏見の試乗インプレッションをお届けしたいと思います。
SONY ILCE-7C, (42mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO160)
レヴォーグSTI Sport Rは「非の打ちどころの無い車」
いきなり結論ですがこのB型レヴォーグのトップを張るSTI Sport R、一言で言えば、隙がなく、非の打ちどころが無い車だな、と感じました。
そもそも国産車では稀有なカテゴリーでありスバルの伝統でもある「スポーツワゴン」というだけでバランスの良さは想像できますが、細かく見てみても、パワートレインからパワステのフィール、電子制御ダンパーによる乗り心地、荷室等のユーティリティ、内外装の質感・・・どれを取っても実によく出来た車だな、と感じました。
スバル渾身の作品であるという気合が、短時間の試乗でもビシビシと伝わってきましたよ。
SONY ILCE-7C, (33mm, f/3.2, 1/40 sec, ISO1000)
格段に質感が上がった内装
内装のデザインと質感が本当に良くなりましたね。
まずパッと見からとても上質です。以前のSTIグレードというと、(Type Rなんかもそうなのですが)赤の色遣いが派手過ぎて、ちょっと乗り手を選ぶ感じだったんですよね。
しかしこのレヴォーグSTI Sport Rの赤は渋めのワインレッドの様な色で、年齢や趣味嗜好に関わらず受け入れられそうですし、単にとてもセンスが良いと感じます。
素材の選び方やステッチのデザインなども緻密で派手さがなく、タイトなのに非常に居心地の良い空間を作り上げています。
以前は内装の質感だけで日本車を敬遠していた筆者ですが、マツダを筆頭に最近の日本車はどんどん良くなってきていますね。
SONY ILCE-7C, (33mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO800)
ドアを閉めた時の上質さや密閉感もとても良いです。
「バタムゥ・・・シーン」
という、ドイツ車のような(そう、うちのパサートオールトラックのような(親バカですんません))、きめが細かく中身が詰まったような閉まり具合を見せてくれました。
SONY ILCE-7C, (58mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO2500)
質感と言えば、細かい話ですが、エンジンフードを開けて貰った時にボンネットダンパーが奢られていたのは驚きました。今やVWゴルフでもボンネットダンパーは省略される時代なのに、こんなところでもレヴォーグに対するスバルの気合いが伝わってきます。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/4, 1/30 sec, ISO1000)
操作系も(理想とは行きませんが)まずますよく出来ています。センターには11.6インチの大型液晶がドーンと鎮座するので、「スバルよ、お前もか」という具合に最近の「何でも液晶パネルで操作させる症候群」への懸念が生じますが、実はそうでもありません。エアコンの温度調整や音量ボリューム調整など、要所要所には物理ボタン/ダイヤルがちゃんと残されています。
ただ、オートブレーキホールドとアイドリングストップのON/OFFが液晶画面の中に埋もれているのはちょっと残念・・・。特にABHって状況に応じて結構ON/OFFするんですよね。
SONY ILCE-7C, (50mm, f/2.8, 1/50 sec, ISO1250)
ちなみに個人的に最も理想的な操作系は、マツダのコマンダーコントロールダイヤルです。BMWも同じ方式ですが、腕を画面に伸ばさず手元で自在にインフォテメニューを操れるこのギミックに適うものは無いような気がします。
荷室容量・ユーティリティはスバル最上級
意外かもしれませんが、レヴォーグの荷室容量と使い勝手はスバルで断トツのトップです。
「あれ?アウトバックじゃないの」
と思われるかもしれませんが、まず両モデルの荷室容量は(アウトバックの方がかなりボディサイズが大きいにも関わらず)実は全く同等の561L。
そして後部座席の可倒方式については、レヴォーグは40:20:40可倒ですが、アウトバックは40:60可倒なのです。フォレスターも40:60可倒なので、荷室の使い勝手についてはレヴォーグはスバル車の中で頭一つ抜き出ています。アウトドアユースを謳うフラッグシップとしては、アウトバックにはもう少し頑張ってほしいところ。
レヴォーグはサブトランクも広大。トノカバーもここに収まります。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO1250)
ただし、561Lという荷室容量自体は他メーカーのSUVやステーションワゴンなどと比較すると決して大きい訳ではありません。国内外61車種の荷室容量比較については下記記事をご覧下さい。

リニアで上質な加速感のFA24 DITユニット
さて、店舗を出てすぐにドライブモードを「Sport+」にします。一番やんちゃなやつですね。踏みたがり屋さんなので短時間の試乗なので「まずはノーマルから」なんて言ってられません。
さて、このエンジンのパワーフィール。これ中々味わい深いものがありますね。いきなり「Sport+」で踏み込んでも、意外とビックリしないんです。ちょっと何言ってるか分かりませんよね。いい意味で言ってます。
実は今回体験する2.4Lターボ「FA24」ユニットの最大出力275psというスペックは、実は自分が運転した車の中では過去最高の出力なのです(次点はGRヤリスの272ps)。
にも関わらず、意外と扱いやすいな~というのが第一印象。もちろん、市街地では踏めば怖いくらいにめちゃくちゃ速いんですよ!多分、レスポンスの良さとリニアな出力特性が理由なんでしょうね。
これまで慣れてきたダウンサイジングターボやクリーンディーゼルだと、トルクの出方に段があり、時に細かいアクセルワークが難しいシチュエーションがあります。しかしこの2.4Lターボ「FA24 DIT」ユニットは、何というか、加給で精一杯パワーを引き出しているというよりは、大排気量の余裕で押し出しているリニアな(直線的な)加速感。そして、微妙なアクセルワークにも精密に答えてくれる感覚。
先代レヴォーグ/WRX S4に搭載された「FA20 DIT」ユニットと比較してみると、この特性の理由が見えてきます。
FA20 DIT(先代) | FA24 DIT(現行) | |
排気量 | 2L | 2.4L |
最高出力 | 300PS/5600rpm | 275PS/5600rpm |
最大トルク | 400Nm/2000-4800rpm | 375Nm/2000-4800rpm |
上表の通り、先代FA20 DITユニットと比べると、FA24 DITは排気量は増えたのにパワーは下げられています。一般的に排気量に対してパワーが相対的に高い方がレスポンスよりもドッカン的なターボ色が強くなり、逆に排気量に対してパワーが控えめな場合は大排気量NAに近いリニアな特性になるといわれてので、上のインプレッションは頷けますね。
エンジンサウンドは少し物足りないかも
ただ少々残念だったのは、サウンド。発信から街中速度では極控えめで、その辺をちょっと走って楽しい、という感じではありません。回してみても、抜けは良いものの、そこまで盛り上がりがあるかというとそういう感じではありません・・・BRZは結構気持ちの良いサウンドだったのですけどね。ただBRZはアクティブサウンドコントロールという疑似サウンドシステムが入ってますからね。やはり騒音規制のかまびすしい(静かなんだかうるさいんだか)昨今、仕方ないのでしょうか・・・

SONY ILCE-7C, (34mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO500)
上質スポーティなステアフィールと乗り心地
もう最近は日本車でもステアリングフィールでハズレを引くことは少なくなってきたのでこの台詞には飽きましたが、レヴォーグのステアフィールもまた、どっしりとしたスポーティな素晴らしいものになっています。
筆者の一つのベンチマークが、以前乗っていたT7型プジョー308SWの油圧電動パワステです。

この油圧と電動の良いとこ取りのようなステアフィールが絶品で、重厚でヌルヌルっと回る感覚が病みつきになったものですが、今回試乗したレヴォーグは、最近乗った車の中でこの油圧的フィールに一番近いような気がしました。ものすごくクイックとかスポーティ寄りというより、ヌルっとどっしり、正確で安定した、上質なフィール。ホンダシビックと似た、デュアルピニオン方式の採用も奏功しているのでしょう。
そして乗り心地の方も上質です。これは電子制御ダンパーの恩恵が大きいでしょう。
ドライブモードをコンフォートからスポーツ+まで変えると結構味付けが変わります。が、スポーツ+でも固すぎるという事はありません。トントントンッと角の取れた感じで路面の段差をいなしていきます。
この感じは同じく電子制御ダンパーの恩恵を受けて素晴らしい乗り心地を演出するゴルフ8GTIのそれに近いものを感じました。

ということで全般的に、STI Sport Rという名前から想像させるほどにスポーツスポーツしているというよりは、「上質スポーティ」という振り方をしているように感じましたね。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/30 sec, ISO500)
「CVTの逆襲」は本当か? – SPT(スバルパフォーマンストランスミッション)
ここまでのところ、(サウンドがあまり印象に残らない感じだった以外は)非の打ちどころの無い車に仕上がっている感があります。
ではいよいよ、筆者がずっと気になっていたSPT=スバルパフォーマンストランスミッションについて、CVT嫌いな変速フィールフェチ的独断と偏見盛り盛りのインプレです。スバリストの皆様、大変恐縮です。炎上してもいい様にバケツに水を汲みつつ書いてます。
SONY ILCE-7C, (60mm, f/2.8, 1/60 sec, ISO200)
SPTは何点かと問われれば「100点!」
まず第一印象。
SPT、めちゃくちゃよく出来てます。
「いきなり炎上恐れてスバリストに迎合かよ!!」と突っ込まれそうですが、正直な感想です。
一言で言うと、これまでのCVTのネガは完全に払拭されていると感じました。以下全てSport+モードでの感想です。
まずエンジン回転フィールとのシンクロ感とダイレクト感。申し分ありません。かつてのCVTで感じた、エンジン回転フィールとのズレなどは微塵も感じさせません。疑似ステップで変速比が変わってから踏み込んだ時の、踏んだだけグイッと進むダイレクト感はDCTにも近いものがあります。
そして、変速スピードがバカっ速い!!パドルシフトで変速すると文字通り「スパっ」と変わります。「ブオォォン」と生ぬるい感じで変速する感じは皆無です。
このスピードたるや、DSGにも匹敵する・・・いや、むしろ体感的にはそれ以上かも知れないと感じました。構造的にギアを切り離して繋げる必要が無い訳ですからあり得ない話ではありません。
もちろんパドルでシフトダウンするとちゃんとブリッピング的な動作も行います。シュッと回転が上がり、スパッと固定される。
これなら正々堂々と「CVTの逆襲」と謳える出来だと感じました。この辺り、ホンダのFL1シビックも見習ってほしいですね。FL1シビックのCVTもかなり良くなったと評されますが、MT車の感覚が忘れられない変速フィールフェチとしては、シビック買うならMT一択です(逆にシビックにはMTがあるのが実に素晴らしい)。
しかし、レヴォーグのSPTなら、「もしかしたら、無くはないかも・・・」と一瞬思いそうになる程です。
え?100点だのDSGより速いだの言っておいて、その程度の感想・・・?炎上したいの・・・?(爆)
SONY ILCE-7C, (71mm, f/2.8, 1/80 sec, ISO200)
疑似ステップであるが故のSPTの過剰なスマートさ
これはもう完全に好みです。以下、MTの感触が忘れられない変人の完全なる趣味嗜好だと思って読み流してください。
パフォーマンスだけで言えば何の文句もありません。ダイレクトだし、変速も速いし、ワインディングなどへ持ち込めば間違いなくキレの良いドライブが待っているでしょう。
しかしやはり、やはりCVTであることは要所要所で明らかに感じます。
当たり前ですが、変速時にギアが離れ、掌に伝わるショックと共に繋がって再びトルクが伝わって・・・という感触は一切無いんです。知らないうちに変速比が変わっている。
ブリッピングにしてもそうです。シフトダウンすれば確かに素早く回転数が上がり、意図する変速比に固定される・・・という一連の動作は確かに有段変速機のブリッピングの動作を非常に近しいレベルで演じています。いやむしろ、トルコンATやDCTでは不可能な高回転域でもブリッピングと共にシフトダウン出来る感じがしました。CVTなら構造上、必要以上にバッファをもって回転数を上げる必要がありませんからね。
でもそれは、「緻密にATの動作を模している」に過ぎず、五感に伝わる気持ち良さまでは再現出来ていないのです。
何と表現すれば良いのでしょう。ラーメン屋に行ったつもりが、ラーメンを食べた記憶が無いのに気づいたらちゃんと満腹になっていた感じ・・・と言えば伝わるでしょうか(伝わらない)。
例えばDSGには変速時には手のひらに伝わるショックがあります。ショックを感じた瞬間にギアが繋がり、再びトルクが伝わっていく様が五感で想像できます。ブリッピングにしても、DSGであれば「フォンッ!」と回転を上げ、ギアが入れ替わる間の僅かな瞬間に回転落ちして再び繋がる感触を如実に感じられます。が、SPTでは(如何に従来のCVTよりキレとダイレクト感があるとは言え)その一連の動作がそもそも必要ないため、極めてスマートに狙った回転数に固定されます。
もっと言ってしまえば、そもそもCVTはわざわざトルコンATやDCTの動作を模する必要性が無いんですよね。それが頭で分かっている以上、どれだけトルコンATやDCTに近づけたとしても違和感は永遠に残るのです。
あと、これも完全に好みなんですが、せっかくシフトレバーを残したならシフトレバーでマニュアルシフト操作をしたかったです!これも、性能はバッチリなんだけど美味しい旨味みたいなところが削がれてるなと・・・
SPT、一部の変態以外は間違いなく買い
無駄に熱くなってしまいました。もう一度整理します。
SPT、ダイレクト感も変速の速さも文句の付けようがなく、間違いなくこれまでのCVTのネガを払拭した実によく出来た変速機になっています。これまでCVTの感触に違和感を覚えていた方も、大多数は間違いなく満足できるでしょう。あのCVTをここまで仕上げるなんて、スバルの拘りと技術力には本当に脱帽です。
ただほんの一部の、MTの感触が特別に好き、あるいはDSGを始めとするDCTが大好きな時代錯誤的アナログ変態層については、もしかするとそこまで気持ちよくなれないかも知れないので、ぜひ一度試乗して確かめてみて下さい。
結局これって、人に趣味嗜好がある以上、万人が満足できる魔法の車なんて存在しない、という一般的なお話なんですよね。
SONY ILCE-7C, (33mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO250)
まとめ:レヴォーグ STI Sport RはSPTさえ愛せれば死角なし
最後、SPTのところで少し煽り気味になってしまったので、気を取り直して前半のべた褒めパートを思い出してください。
「スポーツワゴン」という貴重なパッケージングだけで既に魅力的な車を、これでもかという程に煮詰めて完成度を高めたこのB型レヴォーグ。FA24ユニットは先代よりスペック上でのパワーダウンと言う点が物議を醸しましたが、その実は実にドライバビリティの高いものになっており、ステアフィールや電子制御ダンパーの完成度と相まって実に上質でスポーティな内容になっています。
また、内装の質感も高く、スバル随一のユーティリティも備えているため、文字通り死角のない完成度と言えます。
ただ念のため、筆者の様にこれまでCVTを敬遠していた方は、スバルパフォーマンストランスミッションが自分の好みと相性が合うかどうか、試してみたいところですね。
余談:WRXのMTモデルはやはり出ない?
最後に余談です。結局のところレヴォーグ、と言わずともWRXにMTモデルが出れば筆者の様な変速フェチは昇天出来る訳なので、ダメ元で営業さんにWRXのMTモデルについて訊いてみたところ、
「WRXのMTモデルの開発は中止されたと聞いていて、それ以降続報はないんです・・・」
とのことでした(涙)
ご存知の通り米国ではWRX S4のMTモデルが販売されていますが、日本では環境規制や安全規制(アイサイト)との兼ね合いで、採算が取れないと判断されたと言われています。やはりそうした状況に大きな変化は無いようです。
ということで、赴任前の最後の試乗レポでした。引き続き帰国後の次期愛車選びを、今後はベトナムの地からゆるゆると楽しみたいと思います^^
関連:次期愛車候補たちの試乗記





コメント