こんにちは。2020年式パサートオールトラック(B8)乗りの10max(@10max)です。
パサートシリーズは昨年春にマイナーチェンジを迎え、通称「B8.5パサート」などと呼ばれています。先代パサートシリーズのオーナーとしては、その違いや進化っぷりが気になるような気にならないような正直見て見ぬフリをしたい存在ですが、こんなブログをやっている以上やはり避けては通れません(笑)
という事で、愛車の一年点検時の代車としてお借りして、丸一日首都高や都内一般道を中心に駆け回って来ましたので、先代B8との違いや進化ポイントを中心に試乗インプレッションをお届けしたいと思います。
なお、スペックや機能の詳細な違いやグレード構成は下記記事でまとめています。本記事では実車での試乗によるドライブフィールの違いを中心にご紹介します。内外装やインフォテイメント、ADAS等の機能面に関しては別記事でまとめる予定です。

DSG7速化でドライブフィールはどう変わった?
新型B8.5パサートシリーズTDIのパワートレイン周りでは、エンジンは先代と同じ最大出力190ps/最大トルク400Nmの2L TDIを継承しています。一方それに組み合わされるDSGが6速から7速化されていまして、主にそれによるドライブフィールの改善はやはり顕著でした。
今回は都内の一般道での低速での挙動から首都高速での高速クルージングまで一通り試すことが出来たので様々なシチュエーションでの進化っぷりをお届けします。
DSG7速化でハイギアード&クロースレシオ化
ではまずDSGが6速から7速になって、各ギアの変速比やギア間のクロースレシオ度合いがどう変わったのかを比較してみます。なお、パサートヴァリアントとオールトラックも、先代・新型ともに同じ変速比です。
新型(B8.5)TDI |
先代(B8)TDI |
|||
出力減速比*1 | クロスレシオ度*2 | 出力減速比*1 | クロスレシオ度*2 | |
1速 | 15.994 | – | 16.613 | – |
2速 | 9.086 | 57% | 9.139 | 55% |
3速 | 5.541 | 61% | 5.400 | 59% |
4速 | 3.969 | 72% | 3.624 | 67% |
5速 | 3.026 | 76% | 2.747 | 76% |
6速 | 2.385 | 79% | 2.239 | 82% |
7速 | 1.850 | 78% | – | – |
*1:出力減速比は各ギアの変速比×最終減速比で算出(本ブログ独自計算)
*2:直前の変速比に対する比率でクロースレシオの度合いを算出。大きい方がよりクロスレシオ(本ブログ独自指標)
これを見てパッと分かるのが、クルージングギア(新型なら7速、先代なら6速)の変速比が大幅にハイギアード化されていることです。先代の2.239@6速に対して新型では1.850@7速になっています。
加えて、実は7速だけでなく1速〜6速までも含めて全体的にハイギアード(=エンジン回転数は低くなる方)になっているというのも特徴です。
もう1つ重要な点は、特に1〜4速で先代よりもクロースレシオ化されていること。上の表では「クロスレシオ度」として、2速÷1速、3速÷2速・・・という感じで1つ低いギアの減速比との比率を算出しています。つまり、パーセンテージが大きいほど前のギアとの減速比の間隔が近い(=Close)事を意味します。これを見ると、1〜4速の間では先代よりも新型の方がより近いクロースレシオになっている事が分かります。
ではこれらが実際のドライブフィールにどう影響しているのかを、試乗インプレッションで見ていきましょう。
Dモード発進時のもたつきが改善
走り出してすぐに「あれっ?(良い意味で)」と思ったのが発進時のレスポンスの良さです。B8型パサートTDIの走行フィールで気になる点の一つに、Dモードでの発進時のもたつきというものがありました。これはおそらく元々低速でギクシャクするというDSGの欠点を払拭するために極力ショックを抑え込んでいるが故だと考えています。何故ならSモードやMモードでは一転してキレが良くなり、その代わりにMTの様なギクシャクが顔を出すからです。

しかし、新型パサートではそのDモードでの発進時のもっさり感が改善され、アクセルペダルの踏み込みに対してよりリニアに加速する(かといってギクシャクすることも無い)ように感じました。これは恐らくDSG内部の制御の改善に加え、全体的にハイギアード化されたことで「素のDSGの状態(≒S/Mモード)」での挙動が安定したことで必要以上にショックを抑え込む(≒もっさり感を増やす)必要が無くなった事も奏功しているのかも知れません。
これは今回のインプレッションの中でもかなり良いと感じた改善点の一つです。
SONY ILCE-7C, (36mm, f/4.5, 1/60 sec, ISO100)
クロースレシオ化で超スムーズに
先代では特に1~3速の間でややギア間の段差が大きい感触があったのですが、新型パサートヴァリアントでは上記の通りクロースレシオ化したため、緩やかに加速したい場面ではより静かにスムーズに「スッ、スッ」とシフトアップしていく感じで心地よさが若干増していると感じました。
また、Mモードやパドルでのシフトダウン時にも、先代では2→3速の間のギアレシオの谷みたいなものが若干気になり、この間にもう一枚有れば・・・的な場面があったのですが、新型では改善された感があります。
これらはいずれも比べなければ分からない範囲だとは思いますが、嬉しい進化ですね。
高速での静粛性がさらに高まった
7速化の一番のメリットはこの点でしょう。上で触れた通り高速クルージング時の最終ギアの変速比が大幅にハイギアード化されました。それにより、100km/hでの回転数が、先代では1600回転台なのに対し、新型パサートヴァリアントでは1400回転台にまで下がりました。
これにより、高速巡航時の静粛性が先代に比べて若干良くなったように感じました。元々先代から非常に静粛性が高く車内での会話が快適というのが大きな美点でしたが、さらに磨きがかかった形です。
もう一つ、おそらく燃費も良くなっているはずですが、こちらについては定量的な比較は出来ていません。カタログ上でも、先代パサートヴァリアントTDIの公称燃費はJC08モードで20.6km/L、新型はWLTCモードで16.4km/Lと、基準が異なるので比較は出来ません。が、間違いなく遠出が多い場合にはこの最後の1枚のギアが効いてくるでしょう。
キックダウンは7→4速へ電光石火
さて、多段化すると巡航からシフトダウンしての加速がまどろっこしいケースがしばしばありますが、この7速DSGは結構インテリジェントで、7速巡航中に「クッ」とアクセルペダルを踏み込むと、「スッ」と一気に4速辺りまで下がってスムーズに意のままに加速する事ができました。
最近の車では少ないかも知れませんが、以前はキックダウンと言うと割と気合を入れて「おりゃ~~!」とペダルを踏み込んだ後に1秒位ラグがあってシフトダウンして加速する感がありましたが、この7速DSGはちょうどいい塩梅でドライバーの要求に答えてくれます。軽く踏んだだけではシフトダウンせず、ディーゼルらしい2000回転辺りから湧いて出る太いトルクでクーっと加速してくれ、さらに少しだけ踏み込むと、タイムラグを感じさせずにスッと、しかも4速あるいは5速辺りの適切なギア(非力な6速ではない)にシフトダウンしてくれます。この辺りの制御が、多段化のネガを感じさせること無く非常に気持ちの良いドライバビリティをもたらしてくれます。
Sモード/Mモードのキレは薄まった?
一方で少しだけ物足りなくなったな、と感じたのは、SモードやMモードでの過激さやキレですね。Dモードのもっさり感が軽減され、ドライバビリティが増した一方で、Sモードとの差が小さくなったかな、という気がしました。
具体的には、Sモードであっても、先代の6速DSGに比べてあまり高回転まで引っ張らなくなった気がしました。多段化でクロースレシオ化したので当然といえば当然です。
加えて、先代6速DSGでは、特にMモード時にはパドルやシフトノブに「ガツン」と来る手応えがありましたが、新型7速DSGではそれが薄まり、またクラッチの締結時のショックも希薄になった感じがしました。また、全体的にハイギアード化した事も、マイルド化に繋がっているのかも知れません。
これは好意的に捉えれば変速がスムーズになったという事かも知れませんが、先代では「ひたすらスムーズなDモード」と「やんちゃなS/Mモード」という二面性が魅力だっただけに、もしそのキャラクターが薄まったのだとすると少し残念なポイントです。
SONY ILCE-7C, (34mm, f/2.8, 1/40 sec, ISO125)
最近のVWは重めのステアリングフィールがお好き?
ステアリングフィールについては先代パサートよりもいい意味で重厚でスポーティなフィーリングになったと感じました。
これ、パサートに限らず、アルテオンやT-Rocなど、最近乗ったフォルクスワーゲン車の多くに共通するフィーリングなんですよね。もしかすると最近のフォルクスワーゲンは全般的に少し味付けを変えてきつつあるのかも知れません。個人的には好きな傾向ですし、重すぎるという事は全く無くむしろ非常に安定感と高級感が増すので良いと思います。

SONY ILCE-7C, (29mm, f/8, 1/30 sec, ISO2000)
新型B8.5パサートの運転席周り。パット見で変わったのはステアリング、メーター、エアコン操作部と、廃止されたアナログ時計
低速では固めだが路面に張り付く剛性感(DCC非搭載)
乗り心地や足回りの評価については、今回の試乗車(代車)が電子制御ダンパー「DCC」非搭載のパサートヴァリアントであった一方、筆者の愛車はヴァリアントより30mmリフトアップされたオールトラックであり、かつDCC搭載車であるため、比較という観点ではなく単純なインプレッションになります。
一言でいうと、かなりしっかりした、町中では割と固い脚であると感じます。不快な突き上げはありませんが、しっかり凹凸を伝えてきます。なので、パサートというDセグメント・ステーションワゴンにパッセンジャーズカーというイメージを持って乗り込むと、「意外と固いな」と感じるかも知れません。
しかし、この車の本領は高速巡航。直進の多い高速道路はもちろん、首都高のような中高速でのコーナリングでは路面に張り付くような安定感を感じるでしょう。
この辺り、DCC非搭載でも素性は非常に良さそうですが、一方で魔法の絨毯的な乗り心地を求める場合にはぜひ試乗で相性を確かめてみて下さい。
この辺りのインプレッションについては、パサートオールトラック購入検討時のパサートヴァリアント試乗記もご参照下さい(この時はオールトラックの試乗車が無かったのです)。

新型パサートヴァリアント試乗インプレッションまとめ
一言で言えば、新型パサートヴァリアントは、もともとレベルの高かったスムーズさやドライバビリティ、効率性をより高い次元に正常進化させてきた、と言えるのではないかと思います。
発進時のもたつきやギアレシオの谷などの気になるポイントを確実に軽減することでより意図に沿うような操縦フィールを手に入れ、かつ静粛性や燃費などの向上も着実に実現してきました。実に真面目な正常進化だと思います。
乗り換えるほどか・・・と言われればもちろんそんな事はあり得ないですが、フォルクスワーゲンが求める操縦性、ドライブフィールの進化の方向性は非常に好感が持てるし、自分に合っているな、というのを実感出来たのはよい収穫でした。
ただ一方で、内装や機能性の部分では残念な点が目立ちました。それについては次の記事でご紹介したいと思います。
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SONY ILCE-7C, (46mm, f/4, 1/250 sec, ISO100)

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