こんばんは。2020年式B8型パサートオールトラック乗りの10max、久々のオーナーズレビューです。
今日たまたまYoutubeでモータージャーナリストの五味やすたかさんがマイナーチェンジ後のパサートオールトラックの試乗レビューをアップされてまして、その中で、この車を乗りこなす上で非常に大切なポイントに触れておられたので、数少ないパサートオールトラックオーナーズブログとしては居ても立ってもおれず、四十肩を振り回してその点を深堀りしたいと思います。
実はこの車、普通に運転する分には何も気にせずとも非常に快適なのですが、運転好きなドライバーが意のままに操るにはにはちょっとしたコツがあるのです。結論から申し上げるとそれは、「SモードやMモードを駆使してきっちり4000回転まで回すべし!」、これがこの車の正しい、もとい、「楽しい乗り方」です。
Apple iPhone XS, (4.25mm, f/1.8, 1/35 sec, ISO400)
五味さん、終盤でパサートオールトラックの「ギア比の谷間」に気付く
さて、その五味さんの試乗レビューですが、20分間の動画の前半ではモヤモヤを抱えていた五味さん、後半でそのモヤモヤに関するある特性に気付き、インプレッションを修正されました。
まず動画の9分38秒辺りで一度、高速道路での中間加速を試しています。その時のコメントはこちら。
「190馬力・400Nmって踏まえた時に、えっとね、そこまで速くない。やっぱ4MOTION、安定感ベースですね。結構パワー食われてる感じ」
しかし後半で再度中間加速を試みた際に、五味さんはある異変に気付きます。
「あれ?今速いんですけど。何が起きた?」
「ちょっと待って、不思議な現象が起きたんですけど」
と、先程とは打って変わって400Nmに相応しい力強い加速を見せるパサートオールトラックに戸惑っています。
その後時速70km、80km、90km、100kmそれぞれの速度域での中間加速を試し、すぐにその理由に気付きます。
「あ~、分かった。時速90kmくらいの、これあの、ギアレシオの谷間です」
つまり、時速70km、80km、100kmでキックダウンした際には自動的にシフトダウンするのですが、時速90kmで踏んだ際にはシフトダウンされないため、適切な回転数に届かず鋭い加速が得られないのです。動画をご覧頂くと時速90kmの時だけ明らかにエンジン音が違うのでよく分かります。
※なおパサートシリーズは2021年(国内)のマイナーチェンジで、6速DSGから7速DSGに変わったので速度とギア比の関係は筆者の車体とは異なると思われます。
ちなみに五味さん、動画の中で「回転計が表示されない」とおっしゃってますが、モードを適切に設定すればちゃんと表示されます^^;
パサートオールトラックは受動的にDモードで乗るともっさりする
実はこのインプレッション、筆者も購入直後は同じ様に感じていたのです。ディーゼルエンジンでよく言われる「低回転からトルクがモリモリ」と言うイメージとは少し違う感じだったんですよね。
その感覚を、ブログ仲間のまこまちさんがオフ会で筆者のパサートオールトラックを運転された際のインプレッションとして非常によくまとめて下さっています。
アクセルをジワリと踏み込む。少し反応が緩いかな?ストロークが多い気がする?
2.0L TDI エンジンは、400Nmの大トルクをはじき出す強心臓だ。期待するのは、グイグイと低回転でボディを押し出す強さだった・・・だが、どうも少し違う感じだ。首都高では実力が見えにくい。
Peugeot 308SW の 1.5L ディーゼルは、キビキビとトルクを出すタイプ。VOLVO V40 D4 の 2.0L ディーゼルもトルクの立ち上がりは良い方で、背中を押し出す大トルクが印象的だった。
ところがパサートオールトラックはどうも違う。こいつはトルクが立ち上がらない。
出典:monogress
まさにそうなんです。さすがまこまちさん、オーナーが購入当初日々感じていた感覚をこの一回のドライブで瞬時に見抜きました。
さて、筆者の考えでは、この感覚にはパサートオールトラックの2つの特性が関係しています。
190ps版TDIのパワーバンドは高いところにある
まず、フォルクスワーゲンの主力ディーゼルユニット2L TDI(EA288)も、実は車種ごとに出力特性をチューニングしています。パサートに搭載される190psのTDIユニットはピークトルクの発生レンジがかなり高回転寄りで、実感覚としては分厚いトルクが感じられるのは2000〜4000回転あたりです。(下表参照)。
車種 | 最大トルク | 最高出力 |
パサート | 400Nm/1900-3300rpm | 190PS/3500-4000rpm |
シャラン | 380Nm/1750-3250rpm | 177PS/3500-4000rpm |
ゴルフ、ティグアン等 | 340Nm/1750-3000rpm | 150PS/3500-4000rpm |
1.4L TSI(EA211) | 250Nm/1500-3500rpm | 140PS/4500-6000rpm |
この点については下記記事で詳しくまとめてあるので良ければご参照下さい。
つまり上でご紹介した五味さんやまこまちさんが感じた違和感は、本当に美味しいトルクバンドまで回転数が上がっていなかった事に関係していると思われます。
五味さんのケースで言えば、1000〜2000回転前後で巡航している際に、踏み込んで上手くシフトダウンが入れば鋭い加速に繋がりますが、千回転台のままシフトダウンされなければ少しモタついてしまいます。
五味さんはさらに、パサートヴァリアントと比べて100kg程度重いオールトラックの重量にも言及されてましたが、それも影響しているかも知れません(以前はヴァリアントとの重量差は50kgしかなかったのですが、MCで差が開いた模様?詳細未確認)。
OLYMPUS E-M1MarkII, LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S. (42mm, f/3.9, 1/80 sec, ISO400)
DSGのDモードはゆっくりクラッチを繋ぐ
モッサリ感のもう一つの要因と考えられるのが、DSGの特性。DSGと言えばかつてはダイレクト感故に生まれるギクシャク問題がよく指摘されていましたが、実は最近のDSGはトルコンATとさほど変わりません。少なくともパサートオールトラックのDモードでは非常に滑らかにクラッチを繋いでおり、少々滑りすぎると感じるほどです。
つまり、最近のDSGはかつてのギクシャクを緩和するためにDモードでは半クラッチ領域を広げ、ショックを減らす方向へ改良して来ているフシがあり、逆に言えば漫然とDモードのままで転がしていると、一昔前のトルコンの如くヌルっとした動力伝達フィールに感じられるという事になります。これは走行中にはさほど感じませんが、発進時に特に感じる特性です。(逆にS/Mモードでは、低速ではギクシャクしつつダイレクトに締結するかつてのDSGの特性を残している)
この点も下記記事で詳しくまとめているのでご感心あればご笑覧下さい。
パサートオールトラックは四千回転までキッチリ回せ!! – 能ある鷹を目覚めさせよう
このように原因が分かれば対処は難しくありません。190ps/400Nmのパワーを発揮できていない理由と対処方法は、簡単に言えば以下の通りです。
- 最大トルクバンドである1900回転に達していなかった→2000回転以上を使うようにする
- DSGのDモードは発進時に滑る→Sモード/Mモードを使う
つまり、このパサートオールトラックは400Nmという強心臓とDSGというダイレクトでスピーディな変速機構を持っているにも関わらず、普段Dモードで漫然と走っているうちにおいてはそれらの能力を隠しているに過ぎません。
逆に言えば、ガチッとダイレクトに締結するSモードやパドル操作によるMモードを駆使して、積極的にシフトダウンして2000回転以上を使ってあげることで、ジェントルなパサートは一転、牙を剥いてその本性を現してくれます。4000回転近くまで強大なトルクを維持する強心臓の出力を、DSGがダイレクトに伝達し、4MOTIONによって余すところなく使い切ることが出来るポテンシャルを秘めているのです。
上の五味さんの高速道路での追い越しシーンで言えば、DモードをSモードに変えるか、あるいは一時的にパドルを使用、あるいはMモードに入れてシフトダウンすることで思い通りのパワーを瞬時に得ることが出来ます。
ここで再びまこまちさんのレビューをお借りします。
「2000 rpm を超えたあたりからが良いんですよ!」
私の戸惑いを悟ったのか、10maxさんが声をかける。シフトを下げて強引に回転数をあげてみる。6速デュアルクラッチは電光石火でシフトチェンジ、回転数は一気にあがった。私はアクセルを踏みこむが・・・その時、ボディとエンジンが一体になった感じがした。
右足とエンジンと、トランスミッションとタイヤとが、すべてつながった感覚だ。あとは思いのままである。アクセルワークで速度を自由に加減速し、左右へのカーブも感覚で曲がっていけるようになる。遊べるクルマに変貌してしまった・・・!
出典:monogress
いや素晴らしい・・・オーナーも脱帽の実に的確なインプレッションです。そんなまこまちさんのブログにもぜひ遊びに行ってみて下さい。
さらに頭文字Dからもコメントを頂いているのでご紹介します。
※注:パサートオールトラックは1万1千回転までは回りません。
一粒で二度美味しい – パサートオールトラックの二面性を見逃すな
普段はどこまでも穏やかに、決してギクシャクせず、身体をシートに押し付けられることもなく快適に乗員を運ぶパッセンジャーズカー。
しかし一度意図的にそのポテンシャルを呼び覚ませば、1.6トン超のボディをものともせず強大なパワーで大地を蹴り、意のままに爽快なドライビングを楽しませてくれるドライバーズカー。
パサートオールトラックというのはそうした二面性を持った車なのです。
故にオーナーでさえも購入当初は、五味さんやまこまちさんがそうであったように、その特性を見出し、乗りこなせるようになるまで時間がかかりました。なんとも奥深い車じゃないか。
皆さんも、愛車の隠れた魅力、見逃していませんか?筆者もまだまだ探しきれていない気がするので、もっとこの相棒との時間を深めていきたいと思っています。
五味さんの試乗レポート動画
今回の記事のきっかけとなった動画はこちらです。
「フォルクスワーゲン パサート オールトラック 2021 【試乗レポート】実用域で力強いディーゼルエンジン搭載!! 乗り味は少し硬め!? E-CarLife with 五味やすたか」
コメント
こんにちは。パサートオールトラックを購入候補にしているので、ブログや動画をいつも楽しく、興味深く拝見しています。質実剛健を体現したようなフォルム、かっこいいですね!
出だしのもっさり感に関連して、たまたま、こんな記述をみかけました。
https://toyokeizai.net/articles/-/458231?page=3
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一方のパサート・ヴァリアント。こちらはディーゼルモデルらしく低速域から力強い。直近に試乗したパサート・ヴァリアントベースのSUVモデル「パサート・オールトラック」(4MOTION)と同一エンジンながら、試乗したパサート・ヴァリアントは走り出しから高速域に至るまで10~15%パワフルな印象だ。
取材したところ、「両モデルともエンジンスペックは同じです。ただ、オールトラックはその名のとおり、滑りやすい雪道やオフロード走行を見越した穏やかな出力特性にしています」とのことだった。
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この記事の通りだとすると、出だしのもっさり感は、雪道などのオフロードでは有利なのかもしれないと思いました。
しげおさん、コメントありがとうございます^^
また、記事のご紹介もありがとうございます。
なるほど、確かにパサートオールトラックのDモードは意地でもギクシャクさせない、というくらい穏やかですが、それはもしかしたらこの記事にある通り、ラフロード向けの味付けなのかも知れませんね。
だとすると、SモードやMモードではかなりシャッキリ走れるので、一粒で二度美味しい二面性を楽しめるとも言えそうです。
最低地上高が3cm高いだけでギャップを気にせず行ける場所がだいぶ増えますし、どこかの記事で、パサートシリーズのベストチョイスはオールトラック、と書いてあったのも頷けます。
頂いたコメントへの返信なのに親バカな内容になってしまって申し訳有りません(笑)
しげおさんにとって良い車選びの旅となりますように♪