人は多くの場合、様々なものに「所属」しながら生きていく生き物であり、歳を重ねるほどにその所属への依存が強くなりがちだ。そして気付けば「所属に縛られない友人」は減っていき、定年を迎えて「職場」という所属を離れた途端に途方に暮れる人も少なくないのだろう。
そんな事を考えながら、その朝僕は湘南へ向かっていた。第三京浜を降りた頃にはもうすぐ日が昇ろうかという時間帯で、南へ向かう道中は車通りも少ない。
白い308SWと赤いマツダ3
ふとルームミラーを覗くと、白のプジョー308SWが後ろについて走っている。頬が緩む。
白い308SWと連れ立つようにして七里ヶ浜海岸駐車場に入っていくと、停まっているのは赤いマツダ3が一台だけ。貸切状態だ。そしてこの赤いマツダ3のオーナーは美的センスの延長として、駐車場所を決めるセンスにも定評がある。江の島をバックに丁度良い角度で朝日が当たる場所を選んでいてくれた。さすがだ。
こうして役者は揃った。海外赴任前の、今日は一つの大きな節目の舞台だ。
七里ヶ浜海岸駐車場史上最高にエモい(OUTMOBIL調べ)3台の車の並びに、まずはシャッターを切る。
所属に縛られない仲間たち
この日、朝日を追いかけるようにして会いに来たのは、圧倒的映像美で人々の涙腺を崩壊させる動画クリエイターのパンプケンさん(マツダ3オーナー/@PUMP_MAZDA3)、そして、比類なき視点と文章力でファンの心を掴んで離さないブロガーのまこまちさん(T9型プジョー308SWオーナー/@makomach)のお二人だ。
まこまちさんとお会いするのは今回が3度目、パンプケンさんとは2度目になる。しかし、友好の深さに会った回数はさほど比例しない。車という同じ趣味を共有し、その趣味や車に対する思いを自らのクリエイティビティでもって表現し、その表現の仕方や、時には生き方についての過去、現在、そして未来を語り合う。そこには企業組織としての大人の事情や忖度などは存在しない、素の自分で居られる心地よさがある。
所属に縛られない友人関係、道中そんな小難しい事を考えていたのは、そんなお二人に会う前だったから。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/4, 1/400 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/4, 1/640 sec, ISO100)
朝の湘南とローアングラー
日の出を迎えたばかりの湘南の海岸は人もまばらだ。犬の散歩をする人、砂浜のごみ拾いをする人、ランニングをする人、そしてサーファー達。
SONY ILCE-7C, (53mm, f/8, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/3200 sec, ISO100)
しかし今朝の湘南は少し様相が異なる。約3名の「ローアングルで車を撮影する中年の男たち」が加わる。
挨拶もそこそこに、腰をいたわりつつ各々気ままに撮影を楽しむ。いや、「朝の光を貪る」と言った方が良いかもしれない。この早朝の時間に拘ったパンプケンさんの意図が痛いほどよく分かる。
朝の光は感情を揺さぶる。そして刻一刻と変わり行き、二度と同じ光は訪れない。だからこそ価値がある。
愛車達にその光をたっぷり浴びてもらいつつ、今はシャッターを押し、ジンバルを回す時だ。
言わずともそれが分かっているから、3人とも会話は最小限に、お互いのレンズの方向と立ち位置に気遣いながら、撮影に没頭する。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
海の向こうへ、そしてまたこの場所で
パンプケンさんとまこまちさんが今回のミーティングのロケーション候補を挙げて下さったのだが、その中から最終的に「海がいいですね。『春の海で再会を誓う』というテーマで」という希望を述べたのは僕だ。
僕はこの6月から3年ほど、本業の仕事の都合でベトナムに赴任する事になっていた。このミーティングの時点では正式な発令が下りておらず公にはしていなかったのだが、まこまちさんやパンプケンさんを含む一部のクリエイター仲間達には打ち明けていたのだ。そのような中、比較的近場に住む仲間達が心を砕いてくださった。後で触れるが、実はこの日のミーティングは朝だけでは終わらず、深夜までかけてさらに多くの仲間たちが集まって下さった(無論僕の壮行会というのはきっかけに過ぎず、お互いに会ってみたい人達だったから、という方が大きいのは言うまでもない)。
湘南の海の向こうには、僕がこれから渡る任地がある。そんな春の海を見ながら、愛車を持ち寄り、語り合い、再会を誓いたいという僕のわがままに、これ以上の好適地があったであろうか。ロケーションを検討してくださったお二人には本当に深謝だ。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/5.6, 1/1000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/8, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
朝の光の賞味期限が尽きようとしている。それを惜しむように、もう少しだけ、言葉少なに撮影に没頭する。
僕の愛車、パサートオールトラックと過ごす時間も残り少ない。一枚でも多くのカットを残しておきたい。ましてやこのような素晴らしいロケーションなのだから。
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (50mm, f/2.8, 1/640 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (49mm, f/2.8, 1/320 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (57mm, f/10, 1/500 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/5.6, 1/4000 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/400 sec, ISO100)
SONY ILCE-7C, (75mm, f/2.8, 1/4000 sec, ISO100)
朝マックであふれ出すエンスートーク
光はいつか朝と昼の境界線を超えつつあった。朝食を摂っていないことを思い出し、近くのマクドナルドに向かう。
マクドナルド史上最強にエモい(OUTMOBIL調べ)駐車場風景をカメラで収めた後、注文を行う。皆普通のハンバーガーよりも朝マックのマフィン系メニューが好きだという、ここでも妙な趣味の一致を見出す。
SONY ILCE-7C, (28mm, f/2.8, 1/1600 sec, ISO100)
それまで撮影に没頭していた分、トークがあふれ出す。ブログやYoutubeの話、そして初めて聞いた本業の仕事の話・・・危うく夜まで居続けてしまうところだった。
趣味の一致と言えば、パンプケンさんは筆者と同じタムロンの28-75mm F2.8を愛用している(ただしパンプケンさんは第二世代のA063、筆者は初代A036)。ボディは映像クリエイター専用のソニーFX3だが、それを見せて頂きつつ動画の技術が静止画とは全く異なることを知って驚いたものだ。改めて、Youtubeを本格的にモノにするにはサラリーマンの片手間では手に余る事を思い知らされた。
朝マックの後は、いよいよ互いの愛車への試乗だ。パンプケンさんのマツダ3の思想を再確認すると共に、ついにまこまちさんの308SWの1.5L Blue Hdiを自ら堪能する時がやって来た(前回のオフ会で堪能できなかった理由は末尾のビーナスラインオフ会の記事参照)。
つづく
SONY ILCE-7C, (70mm, f/2.8, 1/100 sec, ISO100)
七里ヶ浜海岸駐車場の場所
利用料金は最初の1時間:600円、以降30分300円。
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