こんにちは。相変わらずベトナムで街行く車を眺めているだけの10max(@10max)です。
ということで帰国後の車選びに余念がありません。帰国の予定など微塵もないのですが、車選びは車好きにとって心の栄養分ですから、車を買う予定が有ろうと無かろうと関係ないのです(ですよね?)。
さてそのような中、先日の一時帰国中に、前から気になっていた一台に試乗してきました。
MAZDA CX-60 XD-HYBRID Trekker
マツダの新世代ラージアーキテクチャーに直列6気筒ディーゼルターボ+48Vマイルドハイブリッドを搭載した4輪駆動モデルで、試乗車は特に、2024年12月の商品改良と同時に登場したTrekkerというアウトドア志向の特別仕様車。
これが中々に面白い車でした。直6エンジンのフィーリングやサウンドもさることながら、重厚感と軽快さの同居っぷりが実に興味深いインプレッションを与えてくれました。
Canon EOS 7D, (44mm, f/5, 1/60 sec, ISO160)
CX-60に期待するもの、それは芳醇な内燃機関のエモーション
ところで今回なぜCX-60に白屋の矢を立てたのか、というお話を少しだけ。
先日の下記記事にて、帰国後の愛車候補の条件として
AWD × MT
という、このご時世において横暴極まりないものを掲げていました。

AWDはともかく、MTというのは中々に強欲です。しかし実はこれは極端な条件で、求めているのは以下のようなものです。
- 内燃機関最後の咆哮を味わいたい
- キレ良くダイレクトな変速フィールを楽しみたい
だとすると、CX-60のパワートレインは実に近いところにいると思いませんか?
- 内燃機関の夢が詰まった縦置き直6ディーゼルユニット
- もはや発想の出どころが分からないトルコンレス8速AT
そう、思い出しました。かつてマツダのCX-60および新世代ラージアーキテクチャ戦略が発表された際、このような見方をしていました。
「エンスー×エモエモ的な側面」と「冷静に効率を追い求めた戦略的な側面」とが同居している

先ほど筆者の求める条件が横暴で強欲だと申し上げましたが、なんのなんの、マツダ御大の方がよっぽど欲しがりさんだったわけです。
でもね、この車、それだけじゃありませんでした。斜め上を行ってました。真上じゃないのがポイントです。
ステーションワゴン感あるCX-60のエクステリア
という事で、CX-60の実車と初のご対面、そして試乗インプレッションと行きましょう。CX-60発売は2022年9月ですが、筆者はその直前の6月にベトナムに赴任したので、今回3年越しでの初顔合わせです。
実車の方がイケメン!意外とシャープで力強い顔面
正直なところ、写真や動画で見た限りでは、CX-60の顔面にはアンニュイな印象を持っていました。CX-5やCX-8系に比べると、よく言えば「ブスかわいい」(笑)
Canon EOS 7D, (21mm, f/4, 1/80 sec, ISO100)
ところが、よもやよもや!こやつ、いわゆる「写真よりも実車の方がイケメン」を地で行くタイプでした。実物を見ると、要所要所彫りが深く、なかなかシャープで力強い印象。
Canon EOS 7D, (35mm, f/4.5, 1/60 sec, ISO125)
実はこれまでの愛車遍歴において、エクステリアを最初からべた褒めするケースは少なく、殆どが「後から徐々に惚れてきた」「実車見たら意外と良かった」というパターンが多いのです。


また、所有していませんが、「美しい」と方々で評判のMAZDA3についても、筆者は最初は微妙な印象だったものが、実車を見てから徐々に惚れこんでいったパターンでした。

ということで、CX-60のエクステリア、一周回って中々いいんじゃないかという予感が込み上げてきます。
CX-5よりもロー&ロングなプロポーション
次にプロポーション。まず、CX-60とCX-5のボディサイズ比較を載せておきます。
CX-60 | CX-5 | |
全長 | 4,740 | 4,545 |
全幅 | 1,890 | 1,890 |
全高 | 1,685 | 1,690 |
次に、CX-60とCX-5のサイドビューを写真で比較してみます。
どうでしょう。CX-60の方が低重心で伸びやかに見えませんか?
ジオメトリ上の一つ目のポイントは全長。CX-5よりも全長が20cmほど伸びていますが、実はキャビンサイズはほぼCX-5のまま、縦置き6発を収めるためにノーズだけロングにしたイメージ。これにより、より伸びやかなサイドビューになっています。
もう一つのポイントは全高。実はCX-60、CX-5よりも5mm低い1,685mmに抑えられています。それによってCX-5比でよりロー&ロング(&ワイド)なプロポーションになっています。これは半分ステーションワゴンと言ってしまえそうな風合いを感じます。
また、このTrekkerのように一部モデルではフェンダーモールがボディ同色となっているのも、ステーションワゴンぽさに一役買っています。
そんなことを頭に入れながら再度上の2枚を比較して見ると、やはりCX-60のサイドビューの流麗さが際立って感じられるのではないでしょうか。これ、SUVよりも低重心で流麗なスタイルを持つステーションワゴンフェチの筆者個人的にはとても高得点。もちろん、どちらかと言えばSUVのルックスなのですけどね。
ただ、この後の試乗で、「これなら動的質感上はステーションワゴン的な低重心はもはや必要ないのかも・・・」と思わされるインプレッションを抱くことになります。
Canon EOS 7D, (24mm, f/4, 1/50 sec, ISO100)
上質さと没入感に包まれるインテリア
ドライブに出かける前に、まずはコクピットを味わいます。
車には、ドライバーズシートに身体を預けた瞬間に「このインテリアに包まれていたい」と思わせるものと、そうでないものの二種類があり、それは比較的瞬時に直感で感じるものだと常々思っています。
CX-60のコクピットは明らかに「もっと包まれていたい」と思わせてくれるものでした。
Canon EOS 7D, (35mm, f/4.5, 1/50 sec, ISO800)
ナパレザーのシートは適度な張りとホールド感があり、素材も滑りにくくも滑りやすくもなく、秀逸な座り心地です。中央部にはベンチレーション用の細かいドットが穿たれています。
Apple iPhone 15 Pro, (6.7649998663709mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO250)
センターコンソールはたっぷりとした幅が取られており、これが上質感と適度なタイト感へと導いてくれます。ドライビングに没入するためには、コックピットは広過ぎても狭過ぎてもいけません。
シフトレバー周りはシルバーの加飾がスポーティな高級感とシャープ感を演出しています。これはTrekkerの特別装備かな。
Canon EOS 7D, (27mm, f/4.5, 1/40 sec, ISO1600)
ただ惜しむらくは、シフトレバーでマニュアルシフト操作(+ー)が出来ないこと。機能上はパドルで必要十分なのですが、個人的にはシフトレバーをがちゃがちゃやりたい・・・男の子ですから。ただこれはもしかすると、PHEVとの共通化のためにやむを得なかったのかも知れませんね。
一方で最新モデルでもコマンダースイッチでのインフォテイメント操作系を継承してくれたのには拍手喝采です。ましてApple CarPlayなどが使いやすくなった今、手元から遠いモニター画面にペタペタ手垢を付けながら触らせられるのは御免です。タッチパネルに集約するなんてのは手抜きだと思ってます。
続いて後部座席へ。
Canon EOS 7D, (16mm, f/3.5, 1/25 sec, ISO1000)
身長178センチの筆者にドライバーズシートの位置を合わせ、そのまま後ろに乗り込んだ状態でこの足元の広さ。余裕です。後部座席は2段階のリクライニングも可能。
Apple iPhone 15 Pro, (6.7649998663709mm, f/1.8, 1/60 sec, ISO640)
ただ、車格的にCX-5よりもさらに余裕がありそうなイメージがありますが、前述の通り、伸びたのは主にキャビンではなくボンネット部分なので、居住性はCX-5とほぼ同等のはずです(ちゃんと比べてませんが)。
荷室は五人乗車時で570Lと、CX-5より65Lほど広がっています。全幅の差と、左右のえぐり込みの恩恵かもしれません。4:2:4可倒なのもGood!
Canon EOS 7D, (15mm, f/3.5, 1/20 sec, ISO800)
手前に転がっているのは後部座席と荷室を仕切るネットですかね。Trekker専用装備。
重厚かつ軽快なCX-60の試乗インプレッション
ではいよいよ試乗していきます。これがなかなか、良くも(悪くも)非常に興味深いインプレッションでした。
軽快なレスポンスとカーブでのフラットさ
イグニッションキーを回して・・・じゃない、スタートボタンを押してのっけから、その静粛性に感心します。
以前よりマツダのSKYACTIV-Dの静かさは印象に残っていますが、さらにレベルが上がった印象。MAZDA3から始まったカプセル化などによる遮音性能に加えて、6気筒化のバランスによる制震性も関係ありそう。
さらに畳み掛けるように驚かされたのは、停止状態からアクセルペダルを軽く踏み込んだ時の出だしの軽快さ。ディーゼル特有のもたつきをほとんど感じさせず、スッと軽快に転がり始めます。
さらに低速走行時においても、すっと踏み増すだけでスッと速度が乗ります。単にトルクが分厚いという事ではなく、微妙な加減速コントロールが実にしやすいのです。
素のXDと乗り比べたわけではありませんが、これは明らかに48Vマイルドハイブリッドの恩恵でしょうね。CX-60発売当初はギクシャクするとの話もたまに聞きましたが、昨年末の改良により改良されたのかも知れません(進次郎構文みたいですみません)。
実は前愛車のパサートオールトラック(2Lディーゼルターボ+DSG)では、特に出だしや低回転時のコントロールでは微妙なラグのためにややデリケートなアクセルコントロールが必要でした。逆説的ですが、本来ディーゼルエンジンはターボとの相性が良い故にターボによって大トルクを生むパワーユニットですから、極低回転でのラグは宿命です。

あるいは「そのデリケートさってDSGのせいじゃないの?」とも一瞬思いましたが、いや待てよ、と。CX-60だってトルコンレスAT。機構は違うものの、良い面も悪い面もDSGに近い特性を持っているはずで、Mハイブリッドとの組み合わせにせよ、ここまで仕上げてきたCX-60(改良後)には驚かされました。
さらに、ステアリングを切った時の鼻先や車体の挙動も極めて軽快かつフラットに感じました。車線変更やUターンポイントからの加速など、中速域で曲がっていく時の車体のロールが非常に少なく、スッと曲がっていくのです。もしかするとKPCの恩恵でしょうか。
こうしたレスポンスの良さやコーナリング時の軽快さは、まるでガソリン車、それもステーションワゴンのような感覚でした。少なくとも5m近い2トン級のSUVを運転している感覚とは結構違う感じ。

Apple iPhone 15 Pro, (2.2200000286119mm, f/2.2, 1/120 sec, ISO250)
後部座席からの絶景。308SW、パサーとオールトラックとパノラマルーフを乗り継いできましたが、家族を乗せるならこの装備は最高
踏めば響き渡る澄んだサウンドとジェントルな加速
そしていよいよ今回の試乗で最も楽しみにしていたゾーンへと踏み込んでいきます。SPORTSモードに入れて、バイパスで前方が開けたところで、アクセルを踏み込んでグッと加速します。
フォロロロロ・・・!
それまで静粛性が印象的だった直列6気筒ディーゼルが、待ってましたとばかりに咆哮を轟かせます。
しかしこのサウンド、第一印象は「上品だな」と感じました。良い悪いの話では無く、音質のジャンルとして、という意味です。
アクティブサウンドコントロールで増強されている事もあり、盛り上がりは間違いなくあるのですが、きめ細かく粒のそろった爆発が直線的に盛り上がっていく感じで、例えばゴルフGTIのような獰猛なサウンドとはまた異なります。美しくスムーズに盛り上がっていくサウンド。
これはこれで病みつきになりますが、もう少しドラマチックな豹変ぶりを求める層もあるかも知れない。時折「V8のような」というインプレも見かけますが、V8と言うのはこういう感じなのでしょうか。
好みの問題ですが、サウンドについてはMAZDA3のSKYACTIV Xの方がドラマチックでスポーティで個人的には「おおー!」って感じですね(語彙力)。サウンドは追って動画の方でもご紹介します。
また、加速感についても同種の上品さを感じました。背中を押されるトルクは間違いなくあるのですが、ドンッと押されると言うより、優しく手を添えられてからグーッと押される感じ。昂ぶらせるというよりもジェントルでスムーズな加速。3.3L直6の力を全て使い切ってないかのような余裕綽々なフィール。どうもこれはマツダの味付けらしいのですが、ある意味とても贅沢な直6の使い方と言えるかもしれません。
一方、トルコンレスATですが、これは間違いなくダイレクト感があって気持ちいいですね。DSGに近いフィールです。ブリッピングも、DSGほどキレッキレではないにしろ気持ちよく決まり、無駄にシフトダウンしたくなります。
ただ、ディーゼルなのでどうしてもかなり回転を下げないとシフトダウン出来ないのはもったいないところ(パサートオールトラックも同じだった)。その意味で、実は色々な意味でPHEVが本命なんじゃないかと思っているのですが、それはこの後まとめでまた触れます・・・
Canon EOS 7D, (27mm, f/4.5, 1/50 sec, ISO500)
CX-60 XDハイブリッド、まとめると・・・?
いやーーー、ものすごく面白い車だったなーー、という印象。
間違いなくものすごくよく出来た車です。
高級輸入車に負けないデザインと質感、同じく高級輸入車にしか存在しない直6ユニット、マイルドハイブリッド化やKPCなどの技術によって、巨体を感じさせない軽快なドライブフィール・・・とんでもない高みに昇った車だなと思います。それでいてお値段はライバル輸入車の半分程度。
ただ「この車に何を求めるのが正解なのか」が、自分の中ではっきりと像を結んでいないんですよね。冒頭で、「真上ではなく斜め上」と書いたのはこの辺りです。
まず、直6ディーゼルというパワーユニット。直6に求める高揚感って、こういうのだっけ?感覚的な盛り上がりで言えばもっと良いものがありそう・・・以前試乗したX5の直6やゴルフR、それこそMAZDA3のSkyactiv Xの「マツダ製VTEC」とも言うべき野太く弾けるようなフィーリングに比べると印象は少々薄いような(下に動画を貼りました)。でも、「シルキー」だからこれはこれでいいのかも、なんて思ったり。
次に、巨体を感じさせない軽快さ。素晴らしいのですが、よく出来すぎていて、大船に身を委ねているという感覚に薄く、キャラが掴みにくいんですよね。BMWのXシリーズへの強力な対抗馬とはよく言われますが、それならサウンドやパワー感にもう少し刺激が欲しかった。いやもちろん、価格を比べれば非常に素晴らしいコスパなのですよ。
で、そんなことを考えた時、CX-60のPHEVに非常に興味が湧くのです。システムトータル500Nmのトルクと、ガソリンエンジンの伸びやさ、そして動画で見る限りスポーティなサウンドもXDに勝るとも劣らない。そしてPHEVと言いつつモーターとエンジンが同軸でトランスミッションに繋がる独自の機構(EV走行時ですら変速する!)により、スポーツモードに入れてトルコンレスATをパドルで操れば、それこそ内燃機関を回す快感を味わえるスポーツSUV(「スポーツ」ダブってるけど)の、また別種の極致があるような気がするのです。
と言いつつ、PHEVの試乗車が都内でも数台しか配備されてなくて、いつ乗れることやら・・・
でもね、どちらにしてもXDハイブリッド含め、CX-60、非常に興味を惹かれました。帰国後の愛車候補リストの一角にベンチ入りしたことは間違いないです。
あ、安心してください!まだ帰りませんよ!(笑)
Canon EOS 7D, (40mm, f/5, 1/80 sec, ISO200)
参考:MAZDA3 e-SKYACTIV X試乗・サウンド動画
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